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「書きたい」あなたを応援するスペシャルコンテンツ

小説を書くためのプチアドバイス by三浦しをん

「小説を書きたい」すべての人必見のスペシャルコンテンツ登場!
「短編小説新人賞」の選者として、毎回投稿作品に対し、厳しくも愛情あふれるコメントを寄せてくれる
三浦しをん先生が、小説を書くために押さえておきたい「お作法」を教えてくれます。

第1回「小説とは、推敲を重ねて初めて完成するもの」と肝に銘じるべし。

こんにちは。

雑誌「Cobalt」からひきつづき、「WebマガジンCobalt」でも短編小説新人賞の選考を担当させていただいています。三浦しをんです。どうぞよろしくお願いいたします。
これまでたくさんの最終候補作を、楽しく拝読してきました。「最終候補作がこういうレベル、熱量なのだから、最終選考に残らなかった応募作も、きっと力作ぞろいなんだろうな」と感じています。
ただ、選考を通して、「ここに気をつければ、もっと作品がよくなるんじゃないかな」と感じる点も、いろいろ見えてきました。このコーナーでは、執筆の際のちょっとしたコツみたいなものを考えていきたいなと思っております。小説をお書きになるときに、少しでもご参考になれば幸いです。短編新人賞へのみなさまのご応募、お待ちしております!

さて、今回はごくごく初歩的なことから。しかし、「初心忘るべからず」とも言いますからね。
すんごく大事なことですが、投稿する際には、賞の「応募要項」をよく読みましょう。特に、パソコンからプリントアウトした原稿を投稿する場合は、「20字×20行」で、パッと見て読みやすい書式にしてください。たまに、「字間」が異様にあいていたり、「行間」が異様に詰まっていたりする原稿があります。
もちろん、重要なのは作品の中身なので、あんまり細かいことを気にしすぎる必要はありません。脅迫状みたいな書式でプリントアウトされてる原稿も、ちゃんと拝読します。
でも、作品は、だれかに読んでもらうためのものなのですから、作者であるみなさんは、「これで読者は読みやすいだろうか」ときちんと想像して、原稿の体裁を整えるべきです。「パソコンの設定がよくわかんないし、プリンターも不調でかすれ気味だけど、時間ないから、もうこれでいいや」といった、「やっつけ感」あふれる応募原稿にしてしまっては、せっかくの作品が泣きます。
 なによりも、「この作者は、『読者に読んでもらう』という意識が低い。すなわち、自作に対する客観性がないということだ」と判断されてしまっては、損です。だからこそ、時間には余裕を持って、プリントアウトの書式も含め、作品を丁寧に仕上げていただきたいのです。

それに関連して、もうひとつ。
念入りに推敲するのも、非常に大事です。誤字脱字はないか、文章は万全に練りあげられているか。作品を書きあげたら、今度は読者の立場になって、自作を客観的に読み直し、手を入れていきましょう。
プロの作家で、推敲してないひとなんて(たぶん)いません。原稿を編集部に送るまでに、何度も何度も読み直して練ります。その原稿が雑誌に載る際には、事前に「ゲラ」で確認し、さらに推敲します。雑誌に載った原稿を単行本にするとなったら、またも「ゲラ」を複数回やりとりし、気が遠くなるほど推敲します。その単行本が文庫化されるとなったら(以下略)。
それぐらい、推敲は重要です。書いた原稿を読み直しもせず投稿するなんて、「深夜に書いたラブレターを教室でまわし読みされる」なみの恥辱だと思ってください。
なぜ、推敲が大切なのか。これも、「読者のため」の行いだからです。また、自身が読者の立場になって、自作を冷静かつ客観的にジャッジメントするチャンスだからです。「これをだれかが読んでくれるんだ」という意識を持たず、客観性を欠いた状態で、いい作品は書けません。ただのひとりよがりになってしまいます。
誤字脱字が多い応募原稿を拝読すると、歯がゆいです。まずは作者が自作を愛さなければ、作品にこめた思いが読者に伝わるはずありません。推敲が行き届いていない原稿は、草ボーボーの庭みたいなものです。その庭を見せられて、「私が愛をこめて作りあげた庭です」と言われても、「おまえの愛はなんかまちがっとるぞ! ヤブ蚊に刺されてかゆいわ!」ということになります。
かといって、自作を愛しすぎて視野狭窄に陥ってもいけないのです。「ものすごく思い入れがあるのは感じられるが、場にそぐわない妙な置物が設置されてる庭」をドヤ顔で披露されても、客(読者)は困惑するほかありません。
原稿を書き終えたら、愛ゆえの鞭をびしばし自作にふるい、推敲に推敲を重ねましょう。たとえるなら推敲は、「庭の草を刈り、しかし野趣あふれる花は残し、妙な置物は断腸の思いで撤去する」行為です。小説執筆にまつわるすべての作業は、作品にこめた思いを、読者に的確に届けるためにあるのです。
とにかく、小説を読むひとのため、作者自身の客観性を保つため、推敲をしてください。プリントアウトの書式などにも、ある程度は気を配ってください。編集部や私は、あくまでも内容本位で選考しています。しかし、「自作にちゃんと思い入れ(つまり情熱)があるか」「なおかつ、自作への客観性を保てるひとか」を、推敲度合いや書式から感じ取っているのも事実です。
「小説を書きあげた」ことだけで満足できるなら、小説によって対価を得て生計を立てたいとまでは願っていないなら、推敲せず書きっぱなしでもいいと思います。冷たいように聞こえるかもしれませんが、原稿は机の引き出しにしまい、だれにも見せずにおいてください。書くことを仕事としてつづけていきたいなら、複数回の推敲や、書式を整えることぐらい、屁のカッパだという気構えでいなければなりません。失敬、「屁」などと言ってしまって。カッパの尻から出るビーナスの吐息だという気構えでいなければなりません。
……この言いまわしもどうなんだ。こういうときこそ、粘って推敲し、文章を練ってくださいね!

三十枚の短編だと、一晩で一気に書きあげてしまう、というかたもいるでしょう。その場合は、書きあげたあと、少し落ち着いてから推敲です。しかし、数枚(あるいは数行)ずつ書く、という場合は、前日に書いた部分を読み返し、推敲してから、今日の執筆に取りかかるのが基本です。必要に応じて、作品の頭からできているところまで読み返し、推敲してから、今日の執筆に取りかかる、という日もあるでしょう。(もちろん、完成したら全体を通して推敲ですよ!)
これを繰り返すことによって、作品の精度が上がりますし、「読み返してみたら、今後の展開について、新たなアイディアが浮かんできたぞ」と、活力を持って今日の執筆に取りかかれるケースもあるはずです。
手間を惜しまず、自作と適切な距離を保ちつつ(=客観性)、愛をこめて作品を仕上げていってください。

三浦しをん(みうらしをん)

東京都出身。2000年に「格闘する者に◯」でデビュー。2006年「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞受賞。2012年「舟を編む」で本屋大賞を受賞。最新刊は「あの家に暮らす四人の女」(中央公論新社)。

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