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「書きたい」あなたを応援するスペシャルコンテンツ

小説を書くためのプチアドバイス by三浦しをん

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「短編小説新人賞」の選者として、毎回投稿作品に対し、厳しくも愛情あふれるコメントを寄せてくれる
三浦しをん先生が、小説を書くために押さえておきたい「お作法」を教えてくれます。

第2回 「作家を目指すなら必須スキル! 原稿用紙換算で書く習慣」

こんにちは。
「小説なんて書いてられっか!」ってぐらい暑い日がつづいていますが、みなさまお元気でしょうか。夏ノ暑サニモ負ケズ、一日ニ5枚ノ原稿ヲ書ク、サウイフモノニワタシハナリタイ。ぐすんぐすん。
ところで、問題は「5枚」です。この「5枚」とは、A5用紙にびっしり5枚でも、ティッシュペーパーに5枚でもなく、原稿用紙に5枚です。
「そんなことはわかっとるわい!」とおっしゃるでしょうけれど、待たれぃ。話を聞いてくだされ。

実際に原稿用紙に手書きしているかたは、現在では少数派だと思います。私もこの原稿をパソコンで書いています。しかし日本語の原稿では、いまでも分量の基準は「原稿用紙」なのです。もっと言うと、20字×20行=400字詰めの原稿用紙が基準です。
出版社から小説やエッセイの原稿を依頼される場合、「75枚でお願いします」「10枚でお願いします」などと言われます。これらは、ティッシュペーパーではなく、「400字詰めの原稿用紙で換算して、75枚(あるいは10枚)」という意味です。
例外として、雑誌のレイアウトがかっちり決まっている場合や、新聞からの依頼は、たとえば「13字×52行でお願いします」と、字数×行数を細かく指定されます。広告関係の依頼の場合は、「1600字でお願いします」とざっくりした文字数を提示されることもあります。
しかし原則は、あくまでも原稿用紙換算です。小説家としてデビューしたら、主に出版社と仕事をするはずなので、「原稿用紙1枚ぶん」がどれぐらいの分量なのか、身体感覚としてつかんでおかなければなりません。そうじゃないと、依頼された枚数でどれぐらいの内容が書けるものなのか、まったく見当もつかないまま執筆に取りかからねばならない、ということになってしまうからです。(ついでに言うと原稿料も、「原稿用紙1枚あたり○円」と計算されます)

この問題は、小説の構成をどう立てたらいいのか、ということとも深くかかわっています。たとえば「Cobalt短編小説新人賞」の規定は、「原稿用紙30枚」です。しかし応募原稿を拝読していると、「内容に枚数が合ってないな」と感じる作品にしばしば遭遇します。30枚に話が入りきらず、駆け足になったり尻切れトンボになったり。逆に、枚数がまだあるのに、エピソードをふくらましきれず終わっていたり。
こういうケースは、一言で言えば「構成の失敗」なわけですが、その背景には、「原稿用紙1枚の分量、そして原稿用紙30枚の分量を、身体感覚としてつかめていない(=イメージできていない)」という問題があるのでは、と推測されます。
みなさんは文章を書くとき、字数をどういうふうに設定しておられますか? また、行数がちゃんと表示される設定にしておられますか? 手の内を明かしますと、私は「一行20字」設定で書いています。行数も表示し、常に自分が、いまどのぐらい書いているかを、意識しています。ちなみにここまでで、原稿用紙3枚とちょっとです。

枚数の感覚がまだつかめていないな、というかたは、「一行20字」あるいは「一行40字」設定にし、「いま原稿用紙換算でどれぐらい書いたところなのか」を、パッと暗算しやすいようにしたほうがいいと思います。そうすれば、「これぐらい書いて、5枚なのか。そのわりに、話が全然進んでないぞ」「もう25枚目に差しかかってるのだから、そろそろ話を収束させる方向に持っていかないと」といった具合に、書く際の目安になります。
これを繰り返しているうちに、「30枚の短編だから、こういう展開にしよう」と、書くまえに構成を立てる力がついてきます。つまり、枚数に見合った話を、思いつきやすくなるのです。
いま何枚目を書いているのか把握できない状況で執筆するのは、地図も道しるべも通行人もない場所で迷子になってるのと同じです。自分がどれだけ歩いてきたのか、あと何キロ歩けば目的地にたどりつけるのか、まずはその点を身体的に把握するのが肝心です。自宅から最寄り駅まで、何分かければ到着するか、みなさんは経験則としてわかっておられるでしょう。それと同様に、「原稿用紙30枚」なら30枚の分量を把握すべく、字数×行数を意識しながら、経験を積まなければなりません。

慣れてくれば、どんな枚数で依頼されても、「じゃあ、こういう話にすればちょうど収まるな」とイメージできるようになります(文字数で依頼されても、原稿用紙に換算して、目安をつけられるようになります)。一行20字設定にしなくても、行数表示をしなくても、「いまだいたい、原稿用紙で○枚ぐらい書いたな」と感覚的につかめるようになります。
この感覚を養わないかぎり、「せっかく構成を立てたのに、思いどおりに枚数に収まらなかった」という悲劇が起こりつづけます。場数を踏めば感覚は身につくので、枚数を意識しながら書くよう、心がけてみてください。

三浦しをん(みうらしをん)

東京都出身。2000年に「格闘する者に◯」でデビュー。2006年「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞受賞。2012年「舟を編む」で本屋大賞を受賞。最新刊は「あの家に暮らす四人の女」(中央公論新社)。

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