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小説を書くためのプチアドバイス by三浦しをん

「小説を書きたい」すべての人必見のスペシャルコンテンツ登場!
「短編小説新人賞」の選者として、毎回投稿作品に対し、厳しくも愛情あふれるコメントを寄せてくれる
三浦しをん先生が、小説を書くために押さえておきたい「お作法」を教えてくれます。

第3回「30枚の短編小説。その構成は、どうやって考えればいい?(前編)」

「小説の書きかたを考えてみよう」という当コーナーも、三回目。推敲の大切さが骨の髄まで染みこみ、枚数感覚を養うトレーニングも怠りないぜ、となったところで、今回のテーマは「構成」です。
もちろん、各人が自由に、やりやすい方法で構成を立てていいですし、あえて構成を立てないという選択をしてもいいと思います。ただ、まだあまり小説を書き慣れていない場合は、構成を立ててから取り組んだほうが、筆が進むのではないかなという気がします。
そこで、「30枚の短編」の構成の立てかたについて、考えてみます。小説に関して、「こうすればうまくいく」という絶対の公式はないので、以下をご参考に、ご自身でカスタマイズしてみてくださいね。

推測なのですが、「こういう話を書きたい」と思いつくとき、「こういう話」として思い浮かんでいるものの内実は、おおまかに言って二種類に分けられる気がします。


一、登場人物の会話、置かれたシチュエーションなどが思い浮かんでいる。

二、登場人物に関しては曖昧で、むしろ「ある感情」だったり、作品の雰囲気や主題のようなものだったりが思い浮かんでいる。

私は圧倒的に「二」のパターンばかりで、登場人物がどんなひとか、どういう会話を交わすのかは、当初はほぼ思い浮かんでいません。しかし、小説を書いているひとに話を聞くと、「一」のパターンのかたも相当数いるようです。「話が思い浮かんだ時点」ですら、ひとによって傾向がさまざまなのですから、一口に「構成を立てる」と言っても、なかなか難しいですよね……。

短編の場合、キレ味や読後の余韻が重要になってきますから、あまり微に入り細をうがった構成は立てなくていいでしょう。まず、話の「肝」となる部分を頭のなかで定めます。「肝」とは、ストーリーが大きく展開する部分、あるいは登場人物の感情が一番高まる部分です。
「登場人物の会話」がまっさきに思い浮かぶひとの場合(以下、「『一』のパターン」とします)、その会話が「肝」になるかもしれません。「ある感情や、雰囲気や主題のようなもの」がまっさきに思い浮かぶひとの場合(以下、「『二』のパターン」とします)、「ある感情」がいよいよ発生するシーンや、主題が立ちあらわれるシーンが「肝」になるケースが多いでしょう。

「一」のパターンの場合、問題となるのは、思い浮かんだ会話が、短編の冒頭のワンシーンだった、というケースです。冒頭に肝が来る小説も皆無ではないですが、常道はやはり、肝が中盤以降に来る構成でしょう。となると、冒頭の会話しか思い浮かんでいない場合、そこからまったく話を進められないことになってしまいます。
では、どうするか。登場人物の性格や、どんな立場でどういう暮らしをしているのかを、具体的に想像します。名前も、もちろんつけます。「どんなひとなのか」をつかむのです。そのうえで、冒頭の会話をしているひとたちの身に、なにか決定的な破滅(あるいは修復)が起こるとしたら、どんなエピソードがふさわしいか、を考えます。そのエピソードを、中盤以降の肝として設定するのです。
「破滅」と言いましたが、べつに、「理不尽に会社をリストラされて一文無しになったうえに、近所の住人から言語に絶するいやがらせをされる」とか「銃撃戦に巻きこまれる」とか、おおげさなことじゃなくていいのです。
破滅あるいは修復とは、つまるところ、作品内での「劇的な出来事」です。どんなにささやかな出来事だったとしても、それは構成上、「劇的な部分」「ストーリーが展開する部分」になりえます。「劇的な出来事」を起こすのに一番手っ取り早いのは、「主人公を窮地に追いやる人物や事件」を登場させることです。主人公が心身ともに居心地いい状態のままでは、「劇=ドラマ」は生じません。

みなさんはすでに、「こういうひとだ」と、登場人物の性格をつかんでいます。では、そういう登場人物がいやがったり悲しんだり怒ったりするような、つまり心を揺り動かされるような、相手の言動や出来事ってなにかな、と想像してみてください。そこが作品の「肝」になるのです。客観的には「些細だ」と思われる感情の揺れ、出来事だったとしても、当人(登場人物)にとって重要なことであれば、そこを肝に物語は紡ぎあげられます。
急いでつけ加えると、「登場人物が喜びを感じる」という方向性での、「心を揺り動かされる」事態も、もちろんアリです。しかしその場合、そこに至るまでのシーンでは、登場人物は窮地に追いやられていなければなりません。そうであってこそ、「喜びを感じる」場面が、肝(=劇的な部分)になるのです。

「二」のパターンの場合、問題となるのは、「作品を通して描きたい感情や主題らしきものはあるのだが、なんかモヤモヤした雰囲気しか浮かばない」というケースです。これはもう、「雰囲気小説」にならぬよう、とことん具体的に考えるしかありません。
まず、「描きたい感情」や「主題らしきもの」が表出するシーンを、構成の常道として、中盤以降に持ってくるとします。では、それを描くために最適の登場人物とは、どんなひとたちなのか。性格や暮らしかたや立場などを渾身で想像します。名前も、もちろんつけます。あと、場所をどこにするのかを決めるのも、非常に重要です。

「モヤモヤした雰囲気」は、あくまでも、「その短編を読み終えたときに、読者の胸に残したいもの」なのだと考えてください。結果として作品から醸しだされる雰囲気、イメージなのです。書く際に、作者がそのイメージに浸りすぎたり、引きずられすぎたりしてはいけません。
綿あめを想像してみましょう。ふわふわしています。しかし、綿あめを構成するものが、ふわふわしているでしょうか? 否! 綿あめは、割り箸、ざらめ、鉄鍋みたいな機械、屋台のおじさんからできています。材料(?)はちっともふわふわしていないのです。でも、できあがりはふわふわ。
小説も同様です。登場人物について想像力MAXで考えることや、構成を立てることなど、小説を小説として成り立たせるための技法や意図は、しっかりとしておく。その結果、「ふわふわしている」といったような、当初思い浮かんでいた「雰囲気」が実現するのです。脳内に浮かんだ「雰囲気」に流されるがまま書いていると、不思議なことに、意図した雰囲気は絶対に小説から醸しだされません。

さて、「一」のパターンでも「二」のパターンでも、これで肝の部分と、登場人物の性格などは決まりました。次に、冒頭とラストを考えます。

短編の場合、冒頭は「つかみ」が大事です。「なにがはじまったんだろう」と読者に思わせるような場面や会話、ということですね。ラストは、「こういう感じ」という程度に決めておくぐらいでもいいかもしれません。書いていくうちに、登場人物が思いがけない行動や選択をすることも皆無とは言えませんから、構成の段階でガチガチにラストを決めすぎると、かえって小説が縮こまってしまうおそれがあります。
30枚ぐらいの短編だと、「冒頭(キレ味よく作品世界に導く)→肝(ストーリーが大きく展開する部分。登場人物の感情が一番高まる部分)→ラスト(余韻を醸しだす。あるいはスパッとオチがくる)」という、三段構えで考えるのがセオリーかなと思います。その際のポイントは、冒頭からダラダラ構成を立てるのではなく(それは単なるあらすじです)、まず「肝」の部分を中核に据えることです。肝の前後は、肝を輝かせるために存在するのだ、という気持ちで発想し、肝を活かすためにはどうすればいいか、という観点で構成を立ててみてください。

具体例がないと、ちょっとわかりにくいかもしれないですね。次回は自作を例に、短編をどう発想し、どう構成しているのか、説明します。と言いつつ、おいら、「感性派」(←かっこよさげに言ってみた)だからな……。すなわち、「理論に疎い派」(←かっこよさげに言えなかった)だからな……。うまく説明できるかわかりませんが、がんばります。

三浦しをん(みうらしをん)

東京都出身。2000年に「格闘する者に◯」でデビュー。2006年「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞受賞。2012年「舟を編む」で本屋大賞を受賞。最新刊は「あの家に暮らす四人の女」(中央公論新社)。

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