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小説を書くためのプチアドバイス by三浦しをん

「小説を書きたい」すべての人必見のスペシャルコンテンツ登場!
「短編小説新人賞」の選者として、毎回投稿作品に対し、厳しくも愛情あふれるコメントを寄せてくれる
三浦しをん先生が、小説を書くために押さえておきたい「お作法」を教えてくれます。

第7回「簡単なようで実は奥が深い、『一行アキ』の使い方」

は〜、もうアドバイスすることなんてないよ! そもそも私、あんまり論理的に考えず、自分の書きたいように小説を書いちゃってるしなあ。そんな私が「小説を書く際に気をつけるべき点」をアドバイスなんて、おこがましいにもほどがあるぜ。

コバルトに投稿してくださっているかたで、もし、「こういうところ、おぬしはどうしてる?」と、だれかに相談してみたいことがあったら、ぜひご一報ください。相談随時受け付けちゅうです。うまくお答えできるとはかぎりませんが。あ、でも、コバルトのサイトには問い合わせさき的なものが記載されてないっぽいですね。(脳内)電波でお問い合わせください。受信できるかな、私……

早くもネタ切れの危機に瀕している当コーナーですが、担当編集さんから、「『一行アキの入れかた』で、気をつけてるところはありますか?」と質問をいただきました。
それ、重要! 私も投稿作を拝読していて、ちょっと気になっていたので、今回は「一行アキ」について書いてみることにします。

ここ数年、「コバルト短編小説新人賞」の最終候補作のなかで、特に散見されるのが、「なんか一行アキの位置とかお作法とかが変かも?」という作品です。みなさん、自作の小説のどんな局面で、一行アキを入れていらっしゃいますか?

小説(ひいては創作物全般)には、いろんな「お作法=お約束」があります。ストーリー展開のパターン(型)や、登場人物の性格づけのセオリー(「完全無欠かと思えた主人公に、実は一カ所だけ弱点がある」とか。たとえば、「ドラえもんは、さまざまなひみつ道具をポケットから出してくれるけど、ネズミが極端に苦手」など)は、作劇上の「お作法=お約束」だと言えるでしょう。「お作法」が有効に働くと、物語がより効果的に転がっていきます。
しかし「お作法=お約束」は、「ストーリー展開」や「登場人物の性格づけ」だけではなく、「小説の表記」に関しても、ある程度存在しているものなのです。たとえば、「この一文に、余韻や含みを持たせたい」というときは、


 そうだったのか……

と表記しますよね。


 そうだったのか・・・。

と表記しても、表現したいことはなんとなく伝わってきます。でも、「中黒(・)を三つ重ねる」のではなく、「三点リーダー()を二つ重ねる」のが、小説における表記の一般的な「お作法」です。

しかし、これはまあ些細なことだ。もちろん、一般的な表記の「お作法」に則って書いたほうがいいとは思いますが、いざとなったら校正刷り(ゲラ)で直せますから、大丈夫です。
お使いのパソコンで、どう打ったら「……」を出せるのかわからない、というかたは、「・・・」としとけばよろしいかと思います。「あまり小説を書き慣れていないんだな」という印象を選考するひとに与えてしまうかもしれませんが、それが原因で新人賞に落ちるということはありえません。

ただ、「……」よりもっと重要な、表記の「お作法」があります。それが「一行アキ」です。この「一行アキ」を、自在かつ効果的に使いこなせるかどうかで、小説の出来にも影響が出てくるからです。

近ごろ投稿作で散見されるのは、「一行アキ」の乱用です。これはたぶん、インターネット上で文章を読み書きする機会が増えたことが関係しているのだろうと思います。

たしかにインターネット上では、あんまりダラダラと文章がつづいていると、非常に読みにくいですよね。そのため、「一行アキ」を多く入れる傾向があります。私がいま書いているこの原稿も、二段落に一回ぐらい「一行アキ」が入っているかと思います。ネット上での読みやすさを優先しての措置です。
でも、基本的に紙で読むことを想定した小説の場合は、「一行アキ」を入れるのは必要最小限に抑えたほうがいいでしょう。そうすることによって、「一行アキ」の効果が増すからです。

では、「一行アキ」はどういうときに入れるものなのか。私が思うに、

一、語り手(視点)が変わるとき。
二、場面転換するとき(=「『一行アキ』の前後で、ある程度、時間の飛躍があるとき」など)。

です。
けれど、これも絶対ではなく、語り手が変わっても、時間の飛躍があっても、あえて「一行アキ」を入れないことも私はあります。そのほうが、めまいとともに読者を作中に惹きこむような効果が生まれることがあるからです。また、「一行アキ」に頼らずとも、「いまだれが語り手なのか」「時間が飛躍したのか否か」が伝わるような文章を書くぞ、という気構えがなければ、筆力は身につかないのではないか、とも思うからです。「ここだ!」という局面のみで、効果的に「一行アキ」を使ったほうが、絶対に小説が生き生きしますし、内容も読者に伝わりやすく整理されます。

「一行アキ」は、水泳における「息つぎ」のようなものなのです。水泳選手は、そんなにしょっちゅう息つぎしませんよね? かれらは泳力があるし、泳ぐことに慣れているし、息つぎを減らしたほうが効率よく泳げるからでしょう。
文章においても同じことです。「一行アキ」に頼りすぎないほうが、筆力が身につくし、どうしたら伝わりやすい文章になるかを考えて書く習慣がつく。そのうえで、満を持して「一行アキ」を使うと、効果が倍増するのです。
「一行アキ」を控えめにすることで、ぜひ「文章の肺活量」を鍛えてくださいね。

次回はもうちょっと具体的に、「一行アキ」について考えてみようかなと思っています。

三浦しをん(みうらしをん)

東京都出身。2000年に「格闘する者に◯」でデビュー。2006年「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞受賞。2012年「舟を編む」で本屋大賞を受賞。最新刊は「あの家に暮らす四人の女」(中央公論新社)。

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