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小説を書くためのプチアドバイス by三浦しをん

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「短編小説新人賞」の選者として、毎回投稿作品に対し、厳しくも愛情あふれるコメントを寄せてくれる
三浦しをん先生が、小説を書くために押さえておきたい「お作法」を教えてくれます。

第22回 発想力がものを言う! 「お題」に基づく作品づくりとは?

 今回の更新が遅くなったことに、みなさまお気づきでないといいのだが……。え、そもそも更新を待ってなかったし、もう連載終わったのかなと思ってた、って? すみません、終わってないです。そして、ここを声を大にして申しあげたいのだが、原稿を落としたせいで更新が遅くなったわけではない! 今月どうしてもスケジュールが厳しくて、編集さんと相談して更新日をずらしていただいたのであります。大変失礼いたしました。

 いま発表になっている短編新人賞では、いつもとちがう試みとして、「お題」を設定してみました。「しまもよう」というお題に基づき、短編を書いていただいたのです。応募してくださったみなさま、ありがとうございました。同じ「しまもよう」というお題から、多様な作品が生まれるものなんだなとおわかりいただけるかと思いますので、ぜひ最終候補作四作をお読みになってみてください。
 私が少し気になったのは、わりとみなさん、お題とがっぷり四つに組んで書く傾向にある、ということです。しかも、「しまもよう」を「縞模様」と解釈し、本文中に「縞模様」という言葉をきちんと入れたり、縞の洋服を登場させたりするかたがものすごく多かった。真面目だ……。
 いや、真面目なのは決して悪いことじゃありません。たぶん根本的に真面目なひとじゃないと、小説なんて書けないです。なにしろ何週間もパソコンに向かって、黙りこくってコツコツと書かなきゃならない仕事なので、しょっちゅうふらふらとどっかに遊びにいきたくなるひとは、小説を完成まで漕ぎつけられないのではと思います。
 とはいえ、物事をあまり真正面から受け止めすぎるのも、真面目が行き過ぎて息苦しくなってしまう可能性大なので、避けたほうがいいかもしれません。小説は一人でコツコツ取り組むものだからこそ、自分を際限なく追いこみすぎて、「もうダメだ、書けない」と危険領域に突入してしまうことも起こりやすいです。「まあまあ、そのへんにしといたら」と、だれも言ってくれないからです。真面目さは自分の首を絞める凶器にもなり得る。適度なちゃらんぽらんさ(なるようになる精神)も必要で、そのあたりの塩梅がむずかしいですね。

「しまもよう」というお題を例に考えてみますと、なぜ「島模様」と発想するかたが一人もいなかったのかが不思議です。わざわざ平仮名でお題が出されているのですから、「縞」以外の「しま」でもよかったのではないかと思うのです。また、「縞」と発想した最終候補作四作のうち、一作は「横断歩道の縞」で、残る三作はすべて「縞の服」です。それでも、内容はバラエティに富んでいて「いいな」と思ったのですが、やはり全体の傾向として、「真正面から受け止めすぎ」かなという気もします。
 作中に一箇所、ちらりと「縞の服」が登場するだけでも、しましまの影が地面に落ちているという描写があるだけでも、お題をクリアしたことになります。お題をもとに、もっと自由に発想しても大丈夫です。

 お題を出されたときにどう発想するかは、プロの小説家として書いていくときにわりと大事なので、今回はそれについて考えてみます。
 プロになると、書きたい小説を好きなだけ書いて暮らせるかというと、実はそうでもありません。たいがいの小説家は、依頼に応えて書きます。仕事なので、当然ながら発注者(編集者=出版社)がおり、「こういう感じの小説を書いてほしいのですが」という発注者の意向を、ある程度は踏まえることになります。
 特に雑誌やアンソロジーの場合、「特集テーマ」が存在する場合もけっこうあります。「新年号なので、お正月の話にしてください」とか「恋愛アンソロジーを編みたいので」といった感じですね。また、企業とのタイアップ小説などもあって、その場合は、「商品名を出す必要はないですが、コーヒーを飲んでいるシーンを必ず登場させてください」といった縛りが課せられることもあります。これらはすべて、「お題」と言えるでしょう。

 いま私は、「縛り」と書きましたが、お題を「縛り」ととらえるか、「アイディアの取っかかりをもらった」ととらえるかで、小説に取り組む姿勢が変わってきます。アイディアをゼロから考えるのは、大変な作業です。けれどお題が存在する場合、そこはすでに先方が提示してくれているので、実はラッキーってなもんなのです。
 しかし、お題がある場合、複数名の小説家の「競作」形式になることが多い、というのがキモです。つまり、依頼を受けた小説家全員が、お題を真正面から受け取りすぎると、雑誌やアンソロジーやタイアップ広告に、似たような小説ばかりが並ぶことになってしまいます。
 そこで、「お題からちょっとずらして、発想を発展させていく」のが大事になってきます。ほかの小説家と設定や内容がかぶるのを防ぎ、雑誌やアンソロジーや広告にバラエティを持たせるよう努めるのは、書き手の良心であり義務であると同時に腕の見せどころでもあります。たとえば、「コーヒーを飲むシーン」を必ず入れなければならないのなら、私だったらまずは、「ものすごく変わったシチュエーションでコーヒーを飲むには、どんな話にすればいいか」と発想すると思います。宇宙空間とか、深海とか。

 以前、「クリスマス」がテーマの雑誌の特集号があり、何人かで競作して、のちにアンソロジーになったのですが、ほかのかたたちの作品を拝読してぶっ飛びました。だれ一人として(私も含め)、「いわゆる恋人同士の幸せなクリスマス」を書いていなかったからです。ちょっ、みんな斜め四十八度ぐらいの発想しすぎ……! でも私は、いままで参加させていただいたアンソロジーのなかで、その一冊が特に好きですし、そのとき書いておられたほかの小説家のかたたちのことも、「うーむ、信頼できる……!」と勝手に非常なシンパシーを抱いております。やっぱりこうじゃなきゃ、アンソロジーっておもしろくないし、真の意味で「お題を活かす」ってことにはならないよな、と。
 また、私はさきほど、「発注者(編集者)の意向をある程度踏まえて書く」と申しました。お題という形ではなく、「つぎの連載では、明るい群像劇がいいと思うんです」といったように、編集さんが希望をおっしゃってくださる場合ですね。
 このとき注意せねばならないのは、もちろん編集さんの意向を丸ごと無視するのは問題なんだけれど、やはり真正面から受け止めすぎてはいけない、ということです。
 みなさんが建設会社だとして、「鉄筋コンクリートのビルを建ててほしい」と依頼されたのに、奔放にも「木造平屋の一般住宅」を建ててしまったら、どうでしょう。「なんか毎回、依頼とぜんっぜんちがう建物ができあがってくるんだけど……」と芳しくない評判が立ち、その建設会社はいずれつぶれる可能性が高いです。
 しかし、「いまはビルって気分じゃないんだよな……」というときに、無理してビルを建てても、絶対にいいものはできません。そこで、編集さんからの依頼に「ふんふん」と耳を傾けつつ、脳内では必死こいて、「鉄筋コンクリートのビルかと思いきや、一角に四畳半の茶の間も併設されている建物はどうだろう」と、自分が建てたいものをうまくもぐりこませる方法を探るのです。あわよくば、編集さんが気づかぬうちに、鉄筋と見えたものは木製の柱だった(でも強度はちゃんとある)、というところまで持っていくのです。

 お題や発注者の意向は、大切にしなければなりません。けれど、最終的に書くのは自分です。編集さんが常に、「あなたがいま書きたいもの」にぴったりフィットな提案をしてくれるとはかぎりません。お題や意向を真正面から受け止めるのは、依頼に誠実に応えているように見えて、実は責任を相手におっかぶせているのと同じです。うまく書けなかったときに、「お題があったから(あるいは、編集さんの意向だったから)、いまいち気乗りしなくて、こういう結果になってしまった」と、逃げ道を自分に与えることにつながりかねません。
 そうではなく、お題や編集さんの意向を踏まえたうえで、「自分のもの」にするのです。自分が心から書きたいと思えるお題・意向に、全力でさりげなく変形させるのです。そのために一番有効な手段は、「お題や意向からちょっとずらして発想していく」ことです。なぜかといえば、「ずらす」という行為に、そのひとそれぞれの「癖」や「好み」が濃厚に表れるからです。
 真正面からただ受け止めている段階では、無難に他人の意見を反映させただけにとどまってしまいます。そこに「ずらし」を効かせる。すると途端に、あなたしか持ち得ぬ色が加わり、そうなると発想もどんどん湧いて(自分の「癖」や「好み」に則ると、思考回路が開きやすくなるためです)、きっと筆も乗るでしょう。
「まだプロデビューしていないから、お題は関係ない」と思わず、「このお題や特集テーマだったら、自分はどういう話を書くだろう」と考えながら、アンソロジーや雑誌を読んでみてください。ある言葉やシチュエーションから発想し、その発想をずらしていく訓練になると思います。発想力を鍛えておけば、お題がない小説を書くときにも応用できるはずです。

 真面目さは大事です。けれど、真面目にずらす、真面目にひととちがった発想で書く、ということは、もっともっと大事です。あと、「このお題なら、真正面からがっぷり四つに組んでも、うまく書けそうなアイディアがあるぞ」と思えたときには、あえてずらさず、正攻法で行きましょう。「たまには真面目な小説も書けるんですね!」と株が上がります(たぶん)。そのときはそっくりかえって、
「ええまあ、当方きわめて真面目な人間ですのでね」
 とドヤ顔をしておやんなさいませ。私は株が上がったことないので、このへんはあくまでも想像で言っていますが……。
 みなさまの健闘をお祈りしております!

三浦しをん(みうらしをん)

東京都出身。2000年に「格闘する者に◯」でデビュー。2006年「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞受賞。2012年「舟を編む」で本屋大賞を受賞。近著に「ののはな通信」(KADOKAWA)、「愛なき世界」(中央公論新社)、「のっけから失礼します」(集英社)。

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