瀬川貴次の万物ぶらぶら(仮),segawa takatsuga no bambutsu burabura illustration 星野和夏子

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其の二十一:手持ちのDVDいろいろ

先日、ウーピー・ゴールドバーグ主演の映画『天使にラブソングを』(1992)がテレビ放映された。ギャングに追われる身となったクラブ歌手が、修道女に扮して修道院に身を隠す。その傍ら、世話になっている修道院の聖歌隊を楽しく改革していくといった陽気なストーリーだ。あらまあ、懐かしいと思いながら視聴し、やっぱりいいなぁと感じ入った。なので、わたしも好きな映画について語ってみようかなと、手持ちのDVDをあさってみた。そんなに多くは持っていないのだが、ミュージカル系とSFアクション系に大別できそうだ。『プレデター』やら『バイオハザード』のシリーズと『パシフィック・リム』『レギオン』は後者になるだろう。ミュージカル系は、仕事中のBGM(もちろん執筆中に画像は観ない)にできるかもと期待して買ったのだが、クリスティーナ・アギレラ主演の『バーレスク』(2010)は逆にノリノリになってしまい、仕事に身が入らないことが判明してしまった。あとは歌はもちろん、セットなどの美術が気に入って、Boxで購入した『ムーラン・ルージュ』(2001)。主演はニコール・キッドマンとユアン・マクレガー。十九世紀末のパリを舞台に、キャバレーの踊り子と貧乏作家が恋をするわけだが、これがいわゆるロック・ミュージカル。ふたりが熱唱するのは、アレンジされたエルトン・ジョンだったり、デヴィッド・ボウイだったり、クイーンだったり。スティングの『ロクサーヌ』をタンゴにした、キレッキレのダンスシーンはかっこよくて、とにかくため息ものだった。随所にハリウッド映画のパロディが織りこまれているのも、お楽しみのひとつである。それから、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)。工場で働くシングルマザーが息子の手術費を捻出するためにがんばるのだが、事態はどんどん悪いほうへと進み──といった、なかなかの鬱展開。これをトラウマ映画と称するひとも多いようだが、わたしはミュージカルシーンの華やかさと現実の悲惨さの対比という、演出の秀逸さに魅せられてしまった。アイスランドの歌姫ビョーク演じる主人公が、押し寄せてくる苦難に心が折れそうになると、途端にミュージカルシーンが始まる。最初はびっくりしたけれど、実はこれ、ストレスMAXになった彼女が脳内ミュージカルに逃げこんだという表現だったのだ。そのときだけ、華やかな歌と踊りが展開されるものの、彼女を取り巻く状況は何も変わっていない。これが幾度となくくり返されていくうちに、事態はひたすら悪化していく。「うわー、もうやめようよ。重荷を降ろしちゃおうよ。ひとりで耐えてミュージカルに逃げこまないで、本当のことを打ち明けて、誰かに助けを求めようよ。って言っても、できないのはわかるんだけどさ。彼女は〈諸人(もろびと)の罪を背負いし生贄の子羊〉だってことなんだろうけどさ。うわー、うわー」で、大号泣するのである。泣きすぎてしまうので、これもBGMには向かないが。仕事のためのビジュアル資料になるかなと思って入手したDVDもある。『セッション9』(2001)はマイナーだからこそ、買っておいてよかったと思った。舞台はアメリカに実在した廃墟、ダンバース州立精神病院。十九世紀後半に建てられた、城のごとき壮麗な赤煉瓦の大病院は、創建当初こそ患者にとっての理想的な環境を誇っていたものの、やがて、1500名収容のところに7000名が押しこまれるといった劣悪な状況におちいっていく。さらには電流によるショック療法やロボトミー手術(凶暴性のある患者の前頭葉を一部切除して無気力化させる)といった、非人道的な治療法が横行し、1984年に閉鎖。その本物のダンバース州立精神病院跡地で、映画は撮影された。アスベスト除去工事のため、この廃墟に入った五人の作業員たち。そこでみつけたのが、多重人格者の患者と医師との、診療(セッション)中の会話を録音したテープ。作業員のリーダーは、厳しい納期に追われつつも、ついついそのテープに聴き入ってしまう。やがて、彼らにひたひたと恐怖と絶望が忍び寄ってくる──といったストーリー。暗いし重いし、わかりにくいので案の定、賛否両論。が、わたしは好みだったし、期待した通り、廃墟の映像たっぷりだったので文句はない。現在、この廃病院は外壁の一部を残すのみで取り壊され、住宅地にされたそうだから、なおさら貴重だなと思う。さらに、DVDに収録された特典の未公開映像を観ると、また違う解釈もできそうになるのが面白い。「もったいないなぁ。この未公開分を一部、取り入れたほうが緊張感は増したんじゃないかなぁ。削除した監督の言い分もわかるけど。じゃあ、どうすればよかったのかなぁ」と、あーでもない、こーでもないと考えるのも大好きだ。なんにせよ、恐怖をもたらすのは朽ちかけた廃病院そのものであり、ラストの台詞にゾクッとさせられる点は変わらない。そういえば、いまの担当さんと最初に交わした会話は映画がらみだった。パーティー会場で新人の編集さんとして紹介され、なぜかその場でドキュメンタリー風残酷映画『食人族』(1980)について熱く語られたのだ。えっとぉ……とは思ったものの、同時に、無惨にも串刺しになった人物写真のDVDパッケージがパッと頭に浮かび、「ああ、あの串刺しの」と応(こた)えて、満面の笑みを返された記憶が。いや、わたしは『食人族』の本編を観たわけではなく、雑誌の映画評でちらっと目にしただけであり、その旨もきちんと伝えたのだが……。ま、いいか。それから数年後に担当替えがあり、いまに至るのであった。どっとはらい。※追記この文章を書くにあたり、映画の公開年などを確認するため、ネットでいろいろと検索した。そうしたらば、AmazonからDVD『カニバル 人喰い族は実在した!』をおすすめするメールが届いた。……ちーがーうーのーよーー。
香炉 旗指物 角盥
トノサマ