人に似て人と異なる異類「血鬼」と人が共存する世界。地方育ちの若き捕吏・李桃李は、かつて無実の罪で死罪に処せられた兄の雪辱を晴らす悲願を胸に、国都・長春を警護する守備部隊「薔薇衛」に転属する。上京早々、花街「天花街」で殺人事件に遭遇した桃李は、犯人を追ううち「月下茶荘」という奇妙な店に迷い込み、妖艶な美貌の持ち主ながら、どこか得体の知れない店主・イバラと出逢う。悪をくじき正義を守る気概に溢れる桃李だったが、転属先の薔薇衛は今や腐敗しきっていた。長春の夜には、民衆に支持される義賊「蝙蝠」が跋扈。桃李は薔薇衛士として「蝙蝠」を追ううち、覚えのある気配と美貌に気づく。「蝙蝠」の正体、そして桃李を絡め取る数奇な宿縁とは。中華伝奇ファンタジー!
故郷から長春へ付き従ってきた桃李の従卒。上京後も何かと桃李の世話を焼く。明るいお調子者だが、心から桃李を尊敬しており忠実に仕える。
国都一の歓楽街・天花街で物売りをしながら暮らす男。馴染みの妓女を殺した犯人を探すため、桃李たちと行動を共にすることに。
かつての宰相・蘭楊柳の嫡子で桃李の異母兄。前皇太子・殷親王に親しく仕え、「美桜梅」と称えられたが、謀反を疑われ死罪となる。
薔薇衛の実質的な長官で、桃李の上司。殷親王が皇太子として時めいていたころ、彼に親しく仕えた「東宮四紅」の一人でもある。
今上帝の第二皇子。病弱な体質ながら、真っ直ぐな気性の持ち主。殷親王の皇太子廃位後、次期東宮にもっとも近い人物と目されている。
外廷を牛耳る藍宰相の孫娘で、英荷の年上の妻。一見、冷ややかな空気をまとった美女だが、物事を俯瞰して冷静に見る聡明さを持つ。
「東宮四紅」の一人。桜梅の死後、僻地へ追われるが、復讐を企み都へ舞い戻った。現在は「午睡先生」を名乗り、靖王府の食客となっている。
桜梅らとともに殷親王に仕え「東宮四紅」といわれた一人。桜梅と時を同じくして命を落としたといわれているが……?
異民族出身ながら今上皇帝に最も近く仕える最高位の宦官。朝廷を司る藍宰相と結託し、権力をほしいままにする。
呉青嵐と結んで権勢をふるう当代の宰相。彼におもねる者たちを称して「藍党」と呼ぶ。前皇太子の失脚に何らかの関わりが…?
人に似ているが、人とは異なる不老長命の異類。人の血を生きる糧とするも、性質は穏やかで争いを好まず、人の支配を受けている。赤く光る眼と牙、美しい容姿とずば抜けた運動能力を持ち、怪我を負ってもすぐに治癒することから、悪意を持つ人間に利用されることもある。 | |
上京した桃李の所属先。国都・長春の防衛を預かる禁軍のうち、長春外城の特別警備を拝命する部署。かつては国都の平和を脅かす事件のみならず政治絡みの案件をも扱い、悪事を企む輩に恐れられてきた。現在は、政局を操る藍党の手で骨抜きにされ、有名無実の機関となっている。 | |
藍宰相と呉青嵐のふたりを中心とした党派。現在の朝廷はこの二人の意のままであり、彼らにおもねるため悪事に手を染める佞臣も多い。 | |
かつて今上帝じきじきの命で開かれた、都で一番の歓楽街。華やかな妓楼が建ち並ぶなか、血鬼向けの店が集まる通り“血鬼巷”がある。 | |
前皇太子・殷親王が居住する王府。往事は華やかに栄えていたが、殷親王が皇太子を廃位され蟄居を命じられてからは、廃王府としてさびれる一方となっている。 | |
殷王府の南、吏員街の一角にある「月下茶荘」で、主であるイバラが商う茶。貴重な生薬をもちい、様々な効果を持つといわれる。貴顕・貴婦人たちは、秘茶の効能を目当てに身分を隠し、密かに月下茶荘へ通う。 |