『岩谷文庫』は、ダンスと読書が大好き! THE RAMPAGE from EXILE TRIBEの岩谷翔吾さんが、フレッシュな視点でおすすめの本を紹介してくれる、ほぼ月イチブックレビュー連載です。今回の特別編では、小説紹介クリエイターのけんごさんをお招きし、2月19日にInstagramとTikTokで行われた対談配信を記事化してお届け。本について、時にまったりと、時に熱く語り合うお二人のトークをご覧ください!
2017年、総勢16名からなるダンス&ボーカルグループ・THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのパフォーマーとしてデビュー。映画「チア男子‼」への出演など演技に挑戦するほか、日本将棋連盟三段や、実用マナー検定準1級の資格取得など趣味多数。
2021年2月より、webマガジンCobaltにてブックレビュー『岩谷文庫』連載をスタート。ダンスのみならず活動の幅を広げている。
2020年11月ごろより活動を開始し、SNSを中心に、さまざまなメディアで本を紹介する小説紹介クリエイター。TikTokで紹介する作品は重版が相次ぎ、若者層へ読書の魅力を伝える活躍が注目されている。2021年末には一番面白かった本を選出する『けんご大賞』を発表。2022年4月28日、デビュー小説『ワカレ花』(双葉社刊)を刊行予定。
まずは自己紹介。
読書を始めたきっかけは「時間つぶし」?
岩谷こんばんは! THE RAMPAGE from EXILE TRIBEの岩谷翔吾です。今日はゲストにけんごさんをお招きして、『岩谷文庫』の特別配信をお送りします。
けんご小説紹介クリエイターとして活動しているけんごと申します。本日はよろしくお願いします。
岩谷僕、以前からプライベートでけんごさんのTikTokやSNSでの小説紹介を拝見していて、いつかお会いしてみたいなと思ってたんです。今日はありがとうございます。
けんご嬉しいな! こちらこそ、ありがとうございます。
岩谷けんごさんは、何がきっかけで本を好きになったんですか?
けんご僕は、大学時代になにか趣味を持とうって思ったことでしたね。いろいろ考えてみたんですけど、当時の自分にはいかんせんお金がなくて。
岩谷学生さんですからね(笑)
けんごそれで、「コスパがいい趣味って何かないかな?」と考えた時に、小説を読んだらどうだろう、と。難しそうだけど、長い時間をつぶせそうじゃないですか。それで最初に手に取ったのが、東野圭吾さんの『白夜行』。そこから小説の魅力にハマりました。
岩谷ええ!? 時間つぶしから始まったんですか? それで、時間がつぶせればつぶせるほどいいから、分厚い本を選んだってこと?
けんごそうです。書店さんで『白夜行』を手に取って思ったんですよ。「小説でこんな分厚いのあるんだ」って。
岩谷変わってるなぁ(笑)。結構コメントでもみなさん同感してますよ。「コスパいいのわかる」「それ読んだ」…。すごいな、結構みなさん詳しい。ちなみに『白夜行』は何ページあるんですか?
けんご860ページですね。
岩谷860ページ! そっちの本はオビに何か書いてありますね…「けんご大賞」?
けんご去年僕がやった賞ですね。僕が面白いと思った本を紹介した企画です。今岩谷さんが手に取ってくださった本、東野圭吾さんの『白鳥とコウモリ』もおすすめしたんですよ。
岩谷すごい! 僕がけんごさんを知ったのは、TikTokで筒井康隆さんの『残像に口紅を』という本の紹介動画を見てです。めちゃくちゃバズったし、反響がすごかったそうじゃないですか。
けんごはい。僕が紹介したあとで10万部以上重版したって連絡をいただいて、もうびっくりでした。
岩谷そんな影響力あるんだ。夢のまた夢ですけれど、僕が本を出版することになったら、絶対紹介してくださいね。
けんご任せてください!
岩谷書店さんにも、けんごさんのブースがありますよね。
けんご「けんご棚」っていう感じで作ってくださっているお店もあります。僕自身は、すごく恥ずかしいんですけどね(笑)。
いざ、おすすめ本を紹介!
岩谷今日はこれから、僕たちのおすすめの本を紹介していこうと思います。まずは僕から……。『岩谷文庫』でも紹介したんですが、朝井リョウさんの『スター』です。簡単なあらすじを紹介すると、主人公として二人の映像クリエイターが登場します。一人は大御所の映画監督に弟子入りする。一人はYouTuberになる。同じクリエイターですが、一本の映画に一年かけるように、時間をかけてクオリティの高いものを作るか。それとも、YouTubeのように、映画ほど質にこだわっていないけれど、一日一本といった感じで大量に発表するか。二人の作る映像の質と価値、どちらが正解なのか? という問いかけをくれる物語なんです。僕たちTHE RAMPAGEも、ライブ制作やダンスの振り付けなど全部自分たちで作り上げるクリエイターなので、この作品は刺さるものが多くて……!
けんご『スター』は僕も読みました。本当に岩谷さんが言われたとおり、クリエイターに刺さる作品ですよね。
岩谷自己啓発本なんかまさにそうですけれど、世の中、答えをくれる作品って多いじゃないですか。「朝のモーニングルーティンは何をするといい」なんて教える本もあるのに対して、この作品は読む人に問いかけて、答えは自分次第。まさに、今の時代に合ったテーマだなと思いました。冒頭がネット記事のインタビュー形式になってて、小説って感じがしないんですよね。Webの記事を読んでる感覚で入れるので、普段あんまり読書をしない方も、ネット記事の延長線に小説があるという感覚ですっと入れるかもしれない。
けんご視聴者の方から「読みたい」というコメントもたくさんきていますね。僕もおすすめの本です。では、次は僕から紹介します! 僕が一番初めに読んだ作品であり、一番好きな作品。東野圭吾さんの『白夜行』です。僕は小説というものを大学一年まではまったく読んだことがなかったのに、そんな僕がこの分厚い一冊を読み切れてしまうほどの東野さんの筆力。「ミステリーってこんなにすごいんだ」って驚かされたし、ものすごく印象に残っているのでぜひご紹介したいです。
岩谷簡単なあらすじ、聞いてもいいですか?
けんご物語の冒頭は、1973年。大阪の廃墟ビルで殺人事件が起こって、未解決のまま迷宮入りしちゃう。その四年後から物語が始まります。登場人物は、事件の容疑者でも被害者でもなくて、「容疑者の娘」と「被害者の息子」。その二人の人生と苦悩を描いた作品なんです。一番面白いのが、二人の人生を描きながら、物語は二人の目線で描かれることがないっていうところ。二人の人生を描いてるんですが、二人の考えや心情が描かれてないので、読者が考えるしかないんです。
岩谷じゃあ、どこ視点で書かれてるんですか?
けんご基本的に、警察視点などの三人称で描かれています。描かれているテーマは本当に超重たいんですけれど、1999年発行なのに今もなお売れ続けている。僕自身も、読み継がれるべき作品だなと思っています。この配信の視聴者さんにはお若い方が多いかもしれないんですけど、そういう方にもぜひ読んでいただきたいなと思う一冊です。僕が一番好きな作品、東野圭吾さんの『白夜行』です。
岩谷容疑者の娘と被害者の息子…? めっちゃいろいろ聞きたいけど、ネタバレになっちゃうかな?
けんご本当に、分厚さを感じさせない作品です。テーマは重いけれど、岩谷さんも好きだと思いますよ。
岩谷確かに、僕、重たいの好きですね。ちょっと病んでるのが好き(笑)。
けんごそんな岩谷さんが次に紹介する作品はきっと重たい作品なんでしょう?
岩谷はい(笑)。……僕が次におすすめするのは、リスペクトを込めて言いますが、いい意味でまったくおすすめできない本です。佐藤究さんの『テスカトリポカ』。表紙を見たことがある方、多いんじゃないでしょうか。不気味ですよね。これ、テスカトリポカっていう神様なんです。テーマがメキシコの麻薬戦争とか臓器売買とか、結構インパクトの強い題材で、暴力シーンも続出。ですけれど、僕はこれを読み終えた時、苦しい・怖いっていう気持ちじゃなくて、なんだか心が温かくなったんですよ。
けんご『テスカトリポカ』は僕も読みましたが……なんかわかるかもしれない、それ。
岩谷この作品に描かれたものを反面教師として、「人の優しさ」をすごく感じたんです。物語の舞台はメキシコから始まって日本、東南アジアまで。もう裏社会世界旅行をしてるような物語で、一冊で二~三冊読んだぐらいの満足感と情報量です。主人公も、恵まれない境遇に生まれたがゆえにひどく暴力的な行動を取るし、一見怖いイメージを持たれがちだと思うんですが、それゆえに逆に人の温かさを気づかせてくれる小説だなと。しかも、グロくて凄惨なシーンでも描写がすごくきれいで、美しいと感じてしまう。なんだか不思議な体験ができる小説です。そして、おそらく映像化はめちゃくちゃ難しい。小説だからこそ楽しめる物語。本当に、いい意味でおすすめできない作品です。
けんごかなりのページ数でかつ超重たい。でも、去年の直木賞を受賞していて、すごく評価されています。
岩谷初めて読んだ時は体調悪くなりそうで、一週間ぐらい放置してました(笑)。でも、今僕らは平和に生きているけれど、地球のどこかしらにはこういう世界がある。こういう世界が現実にあるのなら、それを知らないと、って思わせる力があって、読んでおきたいなと思ったんです。
けんごここまですごく重い小説を紹介して、ちょっと空気まで重くなっちゃったので、次はポップな小説を紹介しましょう。
岩谷そういうのを求めてました今!
けんご僕が次に紹介する作品は、三浦しをんさんの『政と源』という作品です。どんなお話かというと、すげえおじいちゃん×ぶっ飛んでるおじいちゃんの話です。
岩谷二人ともおじいちゃんなんですか?
けんごはい、二人合わせて146歳です。
岩谷……それは結構ご高齢ですね(笑)。
けんご一人が源二郎、もう一人が国政なので『政と源』なんです。源二郎はかんざしの職人で、徹平という弟子がいます。そんなある日のこと、徹平の様子がおかしい。どうも昔の不良仲間に強請られたらしい。そこで源治郎と国政のコンビでなんとかしよう!となる。人が人のためにここまで動ける、それができる人ってすごくかっこいいなと思わせる作品です。僕はまだ23歳だけど、こんな風にかっこいいおじいちゃんになりたいなと思いました。
岩谷三浦しをんさんの作品って、人の優しさとか温かみが文章からにじみ出てる感じがありますよね。
けんごそうなんですよね。笑えるシーンも多いし、文章も本当に読みやすくて。どなたにでもおすすめできる作品です。気になった方はぜひ読んでみてください。
岩谷気になる! 三浦しをんさんは、『岩谷文庫』でも『まほろ駅前多田便利軒』をご紹介しました。これもすごく良いんですよ……傷ついた心を癒やしてくれる。過去、事故で小指を切断した主人公が「傷はふさがっているし、こすったらあたたかくなる。すべてが元通りにならなくても、修復はできる」と言うんです。過去のつらいことを無理に忘れようとしなくても、心の中で温め続けることが大事なんじゃないかと。すごく温かくて前向きな気持ちになれる本だったんですよね。
けんごいいですね。僕はまだ読んだことがないんですが、「傷ついた心を癒やしてくれる」というそのフレーズだけで読みたくなりました。じゃあ、僕からももう一冊。今「推し」って言葉があるじゃないですか。このライブを見てる方にも、岩谷さん推しの方がたくさんいると思うんですけど、推しがいる人に読んでほしい一冊がありまして。「この本は人を救う」って本気で思ってます。綾崎隼さんの『死にたがりの君に贈る物語』です。顔も年齢も何もかも非公開の超人気作家・ミマサカリオリがいて、ある日突然SNSで訃報が流れます。しかもそれが超人気シリーズの完結目前だったので、もうファンは大混乱です。「あの完結編が読めないなら生きている意味ない」とまで思い詰めたファンの少女・純恋ちゃんが、自殺未遂までしてしまう。そんな中、ミマサカリオリのファンクラブのメンバーが、作品の舞台である廃校に集まって、未完成の物語をを完成させようとする……という物語です。この作品で一番読んでほしいのは、後書きです。ネタバレになっちゃうので、これ以上は言えないんですけど。
岩谷え、どういうこと?
けんご小説を読まれる方には、あとがきから読むという方もいらっしゃいますが、この作品だけはお願いなのであとがきは最後に読んでください!…という物語です。これ以上はほんとネタバレになっちゃうので。とりあえず岩谷さん推しの方は必ず読んでください。
岩谷あれですか、顔出ししてないから、その作家が本当は生きてるとか?
けんご…どうでしょう。
岩谷なんだろう。どんでん返しがあるってことですか?
けんご本当にいくつもの仕掛けがあるお話です。僕、この本の帯に「この作品は人を救います」って書かせてもらったんですが、本気でそう思ってます。今、つらいことや苦しいことがある人、そして推しがいる人。必ずこの本が救ってくれます。
岩谷今聞いた設定と結びつかないんだけど、何があるんだろう?
けんごぜひ読んでいただきたいです!
岩谷じゃあ、推しつながりでもう一冊。宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』です。これも『岩谷文庫』でご紹介したんですが、タイトルがまず面白いですよね。『推し、燃ゆ』。現代語の「推し」に、「燃ゆ」っていう古風な言葉。いい意味のtoo much感にまず惹かれました。著者の宇佐見りんさんはめちゃめちゃお若いんですよね。
けんご確か、今22歳の方です。
岩谷半端ないですよね。いきなり冒頭の文章が「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。まだ詳細は何一つわかっていない。」入りの一文で心をつかまれました。そして、主人公のあかりにとっての推しを「背骨」と表現している。新しいというか、よくその表現が出てきたなと! 宇佐見りんさんって要所要所ですごい文章を書くんですよね。「溜め息は埃のように居間に降りつもり、すすり泣きは床板の隙間や箪笥の木目に染み入った」っていう文章があるんですが、この文章はどんな感性から出てきたのか……。宇佐見さんの目には、世界はどういう風に見えているんだろうって圧倒されました。
けんごいろんな怖さも詰まってますよね。僕はこの作品、怖いと思いました。ひとつは、SNSの怖さ。主人公の「推し」であるアイドルがファンの女性を殴る。それ自体はもう絶対にいけないことなんですが、それを超える罵倒がSNSで拡散されて止まらない。もうひとつは、「推し」に対して自分の生活以上に注ぎこむと、人間って壊れてしまうんだ、という怖さです。推しを応援するって素敵なことだと思うんですけど、自分を大切にしないと人を大切にできないんだって。
岩谷そうなんですよね。自分で言うのも変ですけど、自分は「推される側」だからあんまり「推す」って感覚がないんですよ。だから「推す」視点の物語はすごく面白かったし、背筋が伸びましたし、推しの服のしわひとつまでも見ているし愛おしく思う、という描写があって、もっとちゃんとしなきゃって思いましたね。
けんご岩谷さんの場合は、ご自身の行動ひとつで応援してくださるファンの方々の生活にかかわるかもしれない。そこまで考えたらすごく怖いですよね。
岩谷うん、責任もあるなと思いました。そうそう、宇佐見りんさんって、夏目漱石がすごくお好きなんですよね。その話を聞いてから冒頭を読んだら、夏目漱石にインスパイアされたリズムを感じました。ダンス業界だと、既存の楽曲の一部を流用して新しい作品を作る「サンプリング」っていうやり方があるんですけど、それに近いのかな。
人生において、小説とは。
けんごここで質問ひとつ、いいですか? 岩谷さんの人生の中で、小説ってどんなものなのか。よかったら教えていただけませんか?
岩谷自分を見つめ直すためのものだと思います。僕は答えがあるものにあんまりそそられないタイプなんです。近道といわれるものにあんまり興味が湧かない。だから自己啓発本も読みません。先ほどご紹介した『スター』もそうですけど、小説に問いかけや、考える議題を求めてるのかもしれないですね。
けんご確かにそうですね。お話を伺って、今日紹介された『スター』も『テスカトリポカ』も『推し、燃ゆ』も、岩谷さんご自身の活動にいかされてる気がしました。
岩谷自分と正反対な物や世界はより気になりますね。『テスカトリポカ』は完全にそう。読書を通して知らない世界を知ると、人生が広がる気がします。でも僕、学生のころめっちゃ本嫌いだったんですよ。親は「本を読め読め」って言ってくるタイプで、家のそばに図書館があって。本が日常にある生活だからこそ、あまり興味がなかったんです。読むのって苦痛だし、映画化されたならそれを見れば内容はわかる。それでいいやと思ってたんですけどね。でもいざ読み始めてみると、書き手の「文字を通して人に伝える」という熱量に圧倒されたし、作家の人生や学びを1000円ちょっとで買えるのは、すごい得だなと思うようになって。けんごさんはどうですか?
けんご僕は、最初本当に暇つぶし、趣味から始まったんですけど、最近はもう趣味の領域を超えてきた感じがします。僕、大学野球やっていたんですが、すごく心がくじけそうな時、三浦しをんさんの『風が強く吹いている』を読んで「よし、また頑張ろう」って思ったり、小説に救われた経験が少なからずあったんです。小説って誰かが考えたフィクションではあるかもしれないけど、でも必ずメッセージ性や、誰かを救う力がある。小説って、誰かの支えになるものなんじゃないかと思います。
「読みたい一冊」の選び方
岩谷僕からも質問いいですか? 書店に行って、何の前知識もなく一冊を選ぶとしたら、どういう選び方をしますか?
けんご僕はまずタイトルを基準にします。面白そうなタイトルだなと思ったら手に取って、あらすじを読んで決めます。必ず意識していることは、表紙を読む読まないの基準にしないこと。アニメタッチの表紙が苦手という方や、硬派な小説のカバーが苦手っていう方もいると思うんですけど、表紙の印象で決めちゃうとすごくもったいない。タイトルとあらすじを軸にして、表紙を基準にしないのが僕の選び方です。
岩谷なるほどね。ではタイトルで惹かれやすいものはありますか?
けんご『推し、燃ゆ』の「推し」などの強い言葉を使ったタイトル、そして「どういうこと?」って思わせるタイトルに惹かれます。ここに並んでる作品でいうと『みんな蛍を殺したかった』という本。タイトルを読むと「どういうこと?」ってなるじゃないですか。「蛍って表紙に描かれてる女の子なのかな?」とか、「みんなが蛍を殺したがってるってどういうこと?」とか、気になりますよね。
岩谷僕、聞いたことがない単語が入ってるタイトルに燃えるんです。
けんごそれこそ『テスカトリポカ』みたいな?
岩谷そうですね。聞いたことないし、「何この怖い表紙」って気になっちゃう。…じゃ、ジャンル選びはどうですか?
けんご小説紹介の活動をするうちに、フォロワーさんからおすすめの本を紹介してもらうことが増えて、ジャンル、レーベルを問わずたくさん読むようになりました。でも一番好きなのはミステリーです。岩谷さんは好きなジャンルはありますか?
岩谷僕もミステリーが好きです! でも、今回配信をするにあたってけんごさんがカツセマサヒコさんの『明け方の若者たち』を紹介してくださったじゃないですか。恋愛物ってそんなに興味ないつもりだったんですが、もう心にぶっ刺さって! 原作が面白すぎたから映画も見に行ったんですが、親友の北村匠海が主人公を演じてたんですが、すっごいいいお芝居してましたし、監督の演出への考えも理解できて。原作読んでから観て正解でした。
けんご『明け方の若者たち』は、主人公とヒロイン役の子に名前が出てこなくて、「彼」「彼女」で話が進んでいくんですよね。あの仕掛け、面白いなと思いました。
岩谷気づいてなかった! 確かにそうですね。そういえば、住野よるさんの『君の膵臓をたべたい』も出てこないですよね、主人公の名前が。でも名前がないと、作中の出来事を自分の体験のように感じちゃう。その上、『明け方の若者たち』は、匂いや味まで想像できちゃう描写なんですよね。たとえば主人公たちがサイゼリヤに行って、「小エビのサラダ」や「ミラノ風ドリア」と安いワインを頼むんですが、料理や安いワインの味から、ちょっと頭痛くなりそうな酔い加減まで想像できちゃう。
けんご最高ですよね。
岩谷読み終えたら、ああいう感じの作品が気になって、燃え殻さんの『ボクたちはみんな大人になれなかった』も読みました。案の定面白くて! やっぱり話題になる本って、それだけのものがあるんですね。『明け方』にハマる前は、ぶっちゃけ「大学生の恋愛バナシでしょ?」って思うところもあったんですが、そういう変なプライドを持たずに一度読んでみたほうがいい。
けんご本をおすすめする時、「この年齢の方におすすめです」っていう言い方はあまりしたくないですけど、『明け方の若者たち』に限っては、ド直球で20代の方に刺さると思うので、20代の方に読んで欲しいなっていうのはありますね。あれはほんと「誰かの人生のぞき見小説」という感じがするんで。
岩谷いいですほんと、『花束みたいな恋をした』もそうですけど、あの文学カップル感、サブカル感はいいですよね。好きやわあ。
けんご今風の言葉で言うと「エモい」ですよね。
岩谷エモい! エモいし共感の連続すぎて。「明け方」っていうのがまたいいんですよ。
けんご文字通り明け方のシーンもあったりしますよね。
岩谷夕方のオレンジの光じゃなくて、紺色の明け方。ちょっと青白い世界観。
けんご飲み明かしてへろへろになって酔いが冷めてきてもう朝かよ……っていうあの感じですね。気になる方、読んでみてください。
岩谷朝井リョウさんの『正欲』は読まれました?
けんご読みました!
岩谷どうでしたか? 面白かった?
けんご僕はすごく面白かったんですけど、多分あれ、お子さんをお持ちのお母様が読んだらめっちゃ苦しい小説だろうな……と思いました。人によって性癖ってあるじゃないですか。世界の中のマイノリティの、さらに超ごく一部の人にしかわからない物に目を向けた小説なんですよ。
岩谷タイトルが『正欲』っていうのがまたすごい…チャレンジした作品だなと思ったんですよね、このタイトルを見て、カバーイラストもね。鴨が逆さまになってて……。
けんごこのカバー、読まれた方ならわかる。読んでない方は「どういうこと?」ってなると思います。「蛇口」がすごく大切なキーワードです。「あいつ『蛇口』って言ってたな」って思いながら読んでいただけたらうれしいです。
岩谷「蛇口」!? やばいめっちゃ気になる!
けんご一番気になりそうな紹介の仕方がそれだったんで(笑)。
岩谷楽しい! このライブめちゃくちゃ楽しい!
けんごうれしいですね、視聴者の方からコメントもたくさんいただいて。
岩谷いいですよね、平和でまったりと。定期的にやりたいですね。
けんごもしかしたら、見てる中には小説に興味ない方がいらっしゃるかもしれないけど、この配信をきっかけに、「推しの翔吾くんが好きなら私も読もう!」って思ってくださる方が増えたらいいなって思ってます。
読書談義は明け方まで続く…?
岩谷僕、けんごさんの配信を見て、すごく論理的な方なのかなと思ってたんですが、めっちゃいい方で安心しました。
けんごそう言ってくださってうれしいです。実は僕も、今日はすごく緊張してたんですけど。岩谷さんのお人柄のおかげでリラックスして話すことができました。
岩谷よかったです。なかなかね、LDHでこんな本を語ることってないと思うので。
けんごこれでLDH内に読書ブームが起こるといいですよね。ぜひメンバーの方にもおすすめしていただけたら。
岩谷でも、メンバーにも本好きな人は多いんですよ。それこそ僕が本にハマったのも、THE RAMPAGEのボーカルの川村壱馬が、宿野かほるさんの『ルビンの壺が割れた』を貸してくれたことがきっかけだったので。壱馬は何気なく貸してくれたんですけれど、今じゃ『岩谷文庫』の連載までするようになったので、すごく喜んでくれてます。
けんごなんかいいですね。LDHが文学的に。
岩谷けんごさんのフォロワーの方には、もしかしたら初めてTHE RAMPAGEの存在を知る方が多いかもしれませんね。
けんご岩谷さんは『岩谷文庫』っていう連載でおすすめの小説を紹介しているので、僕のフォロワーさんは、この配信が終わったらぜひ検索してみてください。
岩谷もう一時間以上話してるんですね! 最後に僕らが今日紹介した本をおさらいしましょう。初めからいきましょう。僕は朝井リョウさんの『スター』と、佐藤究さんの『テスカトリポカ』。
けんご僕は三浦しをんさんの『政と源』。そして東野圭吾さんの『白夜行』です。どっちも集英社から出てます。
岩谷集英社に優しい! スタッフさんが拍手をしておられます。
けんごそれから、綾崎隼さんの『死にたがりの君に贈る物語』。
岩谷宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』、そしてカツセマサヒコさんの『明け方の若者たち』。ここでひとつ発表があります。WebマガジンCobaltで連載してた『岩谷文庫』は、先日最終回を迎えたんですが、みなさんのあたたかい応援のおかげで二期が決まりました!
けんごおめでとうございます!
岩谷ありがとうございます。『岩谷文庫』二期では、いろんな作家さんにお会いして、おすすめの本を読んでみたいと思っています。そして、『岩谷文庫』一期で写真もファンの方々から好評だったので、二期は取り上げる作品がより伝わるような写真をお届けしていきたいなと思ってます。
けんご僕も楽しみにしています。
岩谷ありがとうございます! 今日は本当に楽しい時間でした。また定期的にのんびりやりたいですね。
けんご始まる前はどんな感じになるのかなと不安だったんですが、すごくよかったです。
岩谷時間が一瞬でしたよ。次は明け方までインスタライブで(笑)
けんごやりましょう明け方まで!
岩谷ということで、今日はこのへんでぼちぼち締めたいなと思っております。『岩谷文庫』二期、今年の連載もよろしくお願いします。そして、本日はけんごさん、おつきあいいただきましてありがとうございました。
けんごありがとうございました。
岩谷引き続きよろしくお願いします。皆さん、今日は本当にありがとうございました!
《今回紹介した本はこちら》
スター
朝井リョウ【朝日新聞出版】
新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応――作品の質や価値は何をもって測られるのか。私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。
テスカトリポカ
佐藤 究【KADOKAWA】
メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。人間は暴力から逃れられるのか。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第165回直木賞受賞作。
政と源
三浦 しをん【集英社】
東京都墨田区Y町。
つまみ簪職人・源二郎の弟子である徹平(元ヤン)の様子がおかしい。原因は昔の不良仲間が足抜けすることを理由に強請られたためらしい。それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが――。弟子の徹平と賑やかに暮らす源。妻子と別居しひとり寂しく暮らす国政。ソリが合わないはずなのに、なぜか良いコンビ。そんなふたりが巻き起こす、ハチャメチャで痛快だけど、どこか心温まる人情譚!
百夜行
東野 圭吾【集英社】
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々と浮かぶが、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い目をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別の道を歩んでいく。二人の周囲に見え隠れする、いくつもの恐るべき犯罪。だが、証拠は何もない。そして19年……。伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。壮大なスケールで描かれた、ミステリー史に燦然と輝く大人気作家の記念碑的傑作。
死にたがりの君に贈る物語
綾崎 隼【ポプラ社】
全国に熱狂的なファンを持つ、謎に包まれた小説家・ミマサカリオリ。だが、人気シリーズ完結を目前に訃報が告げられた。奇しくもミマサカの作品は厳しい批判にさらされ、さらにはミマサカに心酔していた16歳の少女・純恋が後追い自殺をしてしまう。純恋の自殺は未遂に終わるものの、彼女は「完結編が読めないなら生きていても意味がない」と語った。やがて、とある山中の廃校に純恋を含む七人の男女が集まった。いずれもミマサカのファンで小説をなぞり廃校で生活することで、未完となった作品の結末を探ろうとしたのだ。だが、そこで絶対に起こるはずのない事件が起きて――。
推し、燃ゆ
宇佐見りん【河出書房新社】
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。第164回芥川賞受賞作。
明け方の若者たち
カツセ マサヒコ【幻冬舎】
明大前で開かれた退屈な飲み会。そこで出会った彼女に、一瞬で恋をした。本多劇場で観た舞台。「写ルンです」で撮った江の島。IKEAで買ったセミダブルベッド。フジロックに対抗するために旅をした7月の終わり。世界が彼女で満たされる一方で、社会人になった僕は、"こんなハズじゃなかった人生"に打ちのめされていく。息の詰まる満員電車。夢見た未来とは異なる現在。深夜の高円寺の公園と親友だけが、救いだったあの頃。それでも、振り返れば全てが、美しい。人生のマジックアワーを描いた、20代の青春譚。
リクエスト企画のお知らせ
4月よりスタートの「岩谷文庫」第2期で、紹介してほしい本を募集します!
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2022年3月31日23時59分まで