カツセさんは「『明け方の若者たち』が好きなら、きっとこの本も刺さると思いますよ」と仰っていたんですが、読んでみるとこの2冊、テイストはかなり違います。どちらも20代の男女の恋愛がテーマである、というところは共通していますが、『明け方の若者たち』が恋愛のしんどさ・苦しみを描いているのに対して、『きみだからさびしい』にはあまり悲壮感がないんです。ラストも主人公と恋人の別れが描かれているのに、あまり暗い印象を受けませんでした。
読み終えての印象は全然ちがうけれど、どちらも特に恋愛について悩んでいる人に読んでほしい本。そういう意味では、『明け方の若者たち』が好きな人におすすめ、というカツセさんのチョイスはさすがだなと感じました。
『岩谷文庫』では、2年目に入ってから、ファンの方に刺さりそうなテーマの本を意識して取り上げています。僕自身は、これまであまり恋愛小説は読んでいなかったので、どの本も新鮮で面白いですね。
では、『きみだからさびしい』のあらすじを紹介していきましょう。
主人公は、京都市内の観光ホテルで働く、24歳の町枝圭吾。
圭吾には、あやめさんという好きな女性がいます。2人は時々予定を合わせて、二条城の周りを一緒にランニングしている。圭吾は、あやめさんが大好きだけれども、なかなか彼女に告白できずにいます。それは、彼がある出来事をきっかけに、「自分が誰かを好きになることで、その相手を傷つけてしまうのではないか」という、罪悪感めいた感情を抱くようになったから。