岩谷なるほど!
ケンチでもそれは、実は微生物の働きがキーになっていて。そういうことがこの中に面白くまとめてあります。
岩谷すごいですね! 発酵=身体にいいイメージがあります。
ケンチそうだよね、ヨーグルトのビフィズス菌とか、いろいろあるけど。そういうものをより詳しく知っていくと、身の回りに「これも、これも」って発酵したものがたくさん見つかると思う。
岩谷自分に合う菌とか見付けるといいかもしれないですね。自分の腸と相性のいい微生物とか。
ケンチコロナが流行った当初に、どこかの大学の教授が、「コロナに発酵食品が効く」っていう論文、ニュース出したりしてたもんね。発酵が人間の身体にいい作用をもたらしてくれる可能性は大きいと思うから。普段から発酵食品を口にすると、なんか良さそうだなと思う。こういう本を読むと、それがより実感をもってわかるから。
岩谷面白い。いいですね! 自分の身体を作るのは自分が口にしたものですからね。
ケンチそうだよ。だって俺らパフォーマーだもの。自分の身体は大事にしてあげないと。
岩谷大事にしたいですね。ホラーっぽいものから発酵まで、いろんな本の種類の振り幅があって助かります(笑)。 せっかくなので、このままもう一冊も。
ケンチ何でも読むんで、俺は。もう一冊はこれ。佐藤究さんの『Ank : a mirroring ape』という本です。
岩谷これ、気になっていました。僕、佐藤究さんの『テスカトリポカ』を読んで。
ケンチ『テスカトリポカ』の前が『Ank:』だね。最初の『QJKJQ』で江戸川乱歩賞を獲られて、そしてこの『Ank:』。実は俺、面白いご縁があって、佐藤究さんにお会いしたことがあるんだよ。さっき言った舞台『魍魎の匣』を俺がやるきっかけになったのは、作家の丸山ゴンザレスさんなの。「舞台やろう」って話が出た時に、ゴンザレスさんに「いい作品ないですかね」って尋ねたら、「自分は推理作家協会に出入りしていて、京極夏彦先生と面識がある」って言ってくれて。
それがきっかけで、京極先生のご自宅にお伺いしたことがあったんだよ。その時に、究さんも一緒だったの。もともと究さんが京極先生とすごく仲良くされていて、究さんとゴンザレスさんも仲がよくて、僕はみなさんが集まるところへ金魚のフンみたいに一緒についていった感じでした(笑)。その時に『魍魎の匣』の話をさせてもらって、おかげで舞台化できたんだよ。
岩谷そうだったんですね!
ケンチそこで究さんとのご縁もできて、作品も読ませていただくようになったんだけど、中でも俺は『Ank:』がすごい好き。究さんは、頭の中を覗いてみたいぐらいすごい物を書かれるよね。『テスカトリポカ』もリアルな感じがすごいじゃん。
岩谷いや、本当にすごかったです。
ケンチでも、実はあれ、究さん現地に行ったことないんだって。
岩谷えっ、ないんですか!?
ケンチって、俺はゴンザレスさんから聞いたよ。ゴンザレスさんからいろんな情報を聞いて調べて書いたらしい。
岩谷それを作品にしたっていう感じなんでしょうか。
ケンチ『Ank:』の紹介に戻るけど、これは一匹の猿がすべての始まりなの。一匹の猿の出現によって、京都中の人の人格が変わっちゃって、全員で殺し合いを始める大暴動が起きるっていう世紀末みたいな話。チンパンジーと人間って、DNAがほぼ一緒らしいんだけど、なぜ人間がこんな風に進化して文字も書けて、チンパンジーとは一線を画する存在になったのかというところに切り込んでる。
タイトルの「ミラーリングエイプ」――鏡像認識っていうんだけど、鏡に映る自分のことを自分だと判断できるかどうか。そこが大きな違いなんだと。チンパンジーっていうのは、池の水面とかに映った自分を自分と認識できない。でも人間は鏡に映った自分を自分と認識できる。
岩谷あー、なるほど。
ケンチ主人公は、それを研究している霊長類研究学関係の人なのね。そんな中で、一匹の猿がアフリカから日本に運び込まれ、その猿が原因になって暴動が起こる。なぜそんなことが起こったのかは、実は彼が研究していた「鏡像認識」や人間の遺伝に関わっている。一匹の猿が、普通のチンパンジーよりもちょっと進んだ存在になっていて、その猿の存在が何かを引き起こしてるんじゃないのか…っていう風に、だんだん真相に迫っていくんだよね。いつかハリウッドで映画化して欲しいぐらい、めちゃくちゃ面白いんだよ。
岩谷確かに。すごいっすね!
ケンチ結構難しい内容だから、何回か読まないと俺もちゃんと理解できなかった。
岩谷中身は結構理系なんですか? そんなこともない?
ケンチ研究色は強いかな。だから文系理系で言うと理系かもしれない。でも数字とかが出てくるというよりは、考え方。哲学とか、人類の歴史とか、人類がどうやって進化してきたかに触れている。
岩谷面白いです。「鏡に映った自分を認識できるか」が基準になるんですね。