岩谷文庫 ~君と、読みたい本がある~
岩谷文庫

岩谷文庫 ~君と、読みたい本がある~

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人と犬の絆の物語『ソウルメイト』。
犬嫌いだった僕が、この本を読もうと思った訳

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 みなさん、こんにちは! THE RAMPAGEの岩谷翔吾です。
『岩谷文庫~君と、読みたい本がある~』第20回は、馳星周さんの『ソウルメイト』のレビューをお送りします。
この本は、人と犬の絆を綴る短編集。一冊の中に、それぞれ異なった状況で生きる7組の犬と飼い主のお話が収録されています。人と犬の絆の話なので、犬好きな人にはきっとたまらない一冊でしょう。

 『岩谷文庫』で取り上げようと思ったきっかけは、僕が最近、犬をめちゃくちゃ好きになったからです。
 実は僕はもともと犬が嫌い、というか大の苦手でした。というのも、犬に関してはちょっとトラウマがあって。幼稚園に入る前ぐらいの出来事だから、ハッキリと記憶に残ってはいないんですが、犬に噛まれたことがあるんです。近所の家に、大きなゴールデンレトリバーが飼われていたんですが、小さい頃の僕はすごく動物好きで好奇心旺盛で、その子にしつこくちょっかいをかけていたんだそうです。そうしたら、反撃されて頭をガブリと噛まれちゃった。その時の傷もまだ残っているくらいです。
 今思えば、僕がちょっかいをかけていたのが悪いわけですが……子供の頃のその事件がきっかけで、犬だけでなく動物全般が怖くなってしまって。虫とか動物って、自分の想定外の行動をしますよね。それがもう怖くて、犬に吠えかかられようものなら、条件反射でビクッとしてしまうぐらいでした。

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 そんな僕がトラウマを克服したきっかけは、友達が犬を飼い始めたことです。まだ本当に小さい赤ちゃん犬の頃にその子に会って「この子は噛まないんだ!」って感動して、そこで初めて怖がらずに犬をさわれたんです。触れてみると、温かくてふわふわで…「犬ってかわいいな」と初めて思いました。以来、自然と犬に接する機会が増えましたし、その子がすごく温厚なタイプだったこともあって、犬への苦手感がなくなりました。とはいえ、大きい犬はまだちょっと怖いですが……。
 昔、THE RAMPAGEの寮住まいだった頃の寮母さんがすごく大きな犬を飼っていたんです。一度その子が寮に連れて来られたことがあるんですが、偶然エレベーターに一緒に乗ることになってしまった時はヤバかったですね。足が震えて、すくみ上がってしまって、本当に怖かったです。それはトラウマ克服前のことなのですが、中目黒って高級住宅街があるのもあって、大きなわんちゃんがよくお散歩してるんですよね。すれ違う時は、今でもちょっと緊張します。

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 でも、人間より小さい犬なら大丈夫。最近は疲れて癒やしが欲しくなった時に、TikTokで流れてくる犬の動画、特に赤ちゃん犬の動画をよく眺めています。以前、やましょー(山本彰吾)さん、(吉野)北人、(後藤)拓磨と僕の4人で休日に散歩中、ドッグランで遊ぶ犬たちを眺めながらお喋りしたこともあります。犬が遊んでるところって、見ているだけで癒やされるんですよ。僕は小さい子供が好きで、CL(LDHの配信コンテンツ)の企画で保育士体験をさせてもらったこともあるのですが、ドッグランで遊ぶ犬たちを見ていると、なんだか犬の保育園みたいに思えてきて。その後も、メンバーと一緒に時々ドッグランを眺めに行ってます。それぐらい犬のことが好きになったんだなー自分、と思うようになりました。
 これまでは実のところ、周りの人から「動物の話見ると絶対泣いちゃうから見れない」と言われても、全然ピンとくることがなかったのですが、最近になって動物が題材の物語の良さが分かるようになってきた気がして。中でも犬がすごく気になっているので、『ソウルメイト』を手に取った……というわけなんです。

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7組の人と犬が紡ぐ、7つの絆のかたち。
まだ経験したことがない愛に心打たれて

 前フリが長くなりましたが、内容のご紹介に移りましょう。初めに書いたとおり、『ソウルメイト』は、7組の飼い主と犬の物語が収録された短編集です。それぞれの物語に登場する犬は、「チワワ」「ボルゾイ」「柴」「ウェルシュ・コーギー・ペンブローク」「ジャーマン・シェパード・ドッグ」「ジャック・ラッセル・テリア」「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」と、全部別々の犬種。そんな犬たちと、人間関係や家族関係で様々につまずいた人々が登場し、犬からの愛情に心を慰められ立ち上がる勇気を得たり、心から愛する犬を失って涙したり……どの物語も、短編ながらすごく読み手の心を揺さぶってきます。

 中でも、僕が心を衝き動かされたのは、「ボルゾイ」「ジャック・ラッセル・テリア」「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」の3篇です。

 「ボルゾイ」で描かれるのは、ステップファミリーで生まれる絆です。
 小学生の悠人は、母親の再婚相手である学を父親として受け容れられない。一方、学が飼っているボルゾイのレイラは悠人を家族として認めず、悠人の言うことを聞かない。物語は、レイラと悠人の関係を中心に進みます。最初は悠人を格下の存在と見なしていたレイラが、飼い主である学の指示はあったものの、だんだんと悠人を仲間と認めるようになって、ついにはいじめっ子から悠人を守ろうとするまでになる。
 最終的には、ぎくしゃくしていた学と悠人の関係もレイラが繋いでくれて、犬が繋いでくれる人間関係があるんだ、ということにすごく感動しました。「再婚」ってすごくセンシティブな題材だと思いますが、この家族にはレイラがいてくれたおかげで、学は悠人の父親になっていけるし、家族として向き合っていける。きっと現実の世界でも、犬が人間同士の緩衝材や潤滑油になってくれるのだろうな、だからこんなにも多くの人が犬を飼っているのだろうな…と思いました。

 二つ目の「ジャック・ラッセル・テリア」は、離婚して子と離ればなれになってしまった父が、犬を介してつかの間、子とふれあう物語です。
 長野県で暮らす康介は、別れた妻と息子の亮が迎えたジャック・ラッセル・テリアのインディが、飼い主である二人の言うことを聞かず手に負えないと知ります。康介は、10日間インディと亮を長野で預かって、亮がインディのボスになれるよう訓練をします。
 僕はこの話を、父親の康介目線で読んでしまって、すごく泣けました。離ればなれになってしまった我が子への思い、かつて自分勝手すぎた自分への悔恨。10日間濃密な父子の時間を過ごしたけれど、亮はインディを連れて別れた妻の元へ帰ってしまう。

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 康介が、亮との別れが迫る中で、「おれは守ってやれないから、おまえが代わりに亮を守ってくれ」とインディに亮を託すシーン、亮と別れる時「ぼくもパパが好きだよ」と言われて男泣きするシーンでは、涙が堪えられませんでした。康介がひとりぼっちになってしまうのは、彼の自業自得という面もあるのですが、そうだとしても、彼を襲った喪失感が大きすぎて……。
 初めはまるで亮の言うことを聞かなかったインディが、犬との接し方を知っている康介には喜んで従い、亮のこともボスとして認めていくシーンも印象的でした。僕は犬に慣れてきたと言っても、誰かのわんちゃんに少し会うくらいなので、犬ってこんなに献身的に人と接してくれるんだ……と。犬と家族になって一から絆を構築していくと、愛する人を託せるほどになるんですね。今まで知らなかった分の反動もあって、人と犬でこんなに絆が深まるのかとすごく感動してしまいました。

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 「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」は、『ソウルメイト』という一冊の最後に置かれた物語。端的にいうと、病に侵された愛犬を看取るお話です。東京で、バーニーズ・マウンテン・ドッグのカータと暮らす「わたし」と妻。でも、バーニーズは遺伝的に短命な犬種で、カータもある日血液のガンにかかっていることがわかります。「わたし」は必死にカータの治療に取り組み、カータを少しでもいい環境で療養させるべく、友人の別荘を借りて軽井沢に移り住みます。

 これまで全力で自分に尽くし、愛してくれたカータの命を何とかして長らえさせようと、既に関係が冷えていた妻とも協力し合いながら治療を続ける「わたし」。けれども、一日いちにちカータは衰弱し、「その日」が近づいてくる。「わたし」は、治療を続けることでカータを苦しめているのではないかと自問自答しながら、延命治療をやめられない。ラストシーンに向かっていくくだりは、本当に読んでいて胸が苦しくなりました。愛犬の命をギリギリまで引き延ばしたほうが後悔がないのか、それとも愛犬がこれ以上苦しまないよう、治療をやめて終わらせるのか。
一見、延命治療に執着するのは人間のエゴに思えるけれど、「治療をやめる」って選択できるのは本当に強い人だけなんじゃないかと思います。僕は結構弱いから、主人公と同じ立場だったら、きっと最後まで治療に手を尽くす方が後悔が少ないんじゃないかと思えてしまって……・。
 読み終えて、カータと「わたし」が過ごした軽井沢の景色をすごく見てみたくなりました。この物語は、7篇の中で最もページが多く割かれていて、きっと著者の馳星周さんは、この物語に一番熱量を籠めたんじゃないかと感じています。それから、『ソウルメイト』の表紙に使われているバーニーズの写真は、馳星周さんの愛犬なんだそうです。それを知って、余計に作品に重みを感じました。

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 この他の4篇もそれぞれ違ったシチュエーションで語られ、それぞれ違った形で読む人の胸を打ちます。そして全篇を通して読むと、この本が「愛犬とともに生きる幸せ」だけでなく、「愛犬を失う喪失感」にもフォーカスして綴られていることに気づくでしょう。
 愛犬を失って泣き崩れる飼い主もいれば、愛犬を失って嘆き悲しんだ後に「新しい犬を迎えよう」と決心する飼い主もいる。僕の周囲にもペットロスに苦しむ方はいらっしゃるので、唯一無二の愛した犬を失った人が悲しんで苦しんだ末に「新しい犬を飼おう」と考える気持ちはなんとなく想像できます。きっと人間って、犬が自分に与えてくれる絶対的な愛や信頼を一度経験してしまうと、もうその愛がない生活には戻れないと思うんです。今まで家に帰ったらちぎれるように尻尾を振って迎えてくれた犬がもういない、シーンとした家に帰れるのか? って。僕だったら、そんな孤独にはとても耐えられないと思う。
 よく、「動物好きな人に悪い人はいない」と言いますが、それは人間よりも弱い立場のものを心から愛せる人だからなのかもしれないな、とこの本を読んで感じました。そして、最近犬を好きになった自分も、犬をちゃんと愛せる温かみのある人間になっていきたいなと思っています。

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物言わぬ犬の心を伝えるリアルな描写。
避けられない喪失感と、人はどう向き合うべきか

 『ソウルメイト』の興味深いところは、登場する犬について、いっさい擬人化することなく描写していることだと思います。もし、作中で犬を擬人化していたら、もっとエンタメ色が強くなっていた。それはそれで素敵だと思いますが、著者が描きたかったのは、犬と暮らす人のリアルなんじゃないかと思うんです。擬人化していないからこそ、犬のちょっとした描写がすごく細かくて、人と犬の間で言葉が通じないからこそ、犬の行動、身体表現のひとつひとつから、飼い主への愛情が伝わってくる。飼い主側にも、犬の行動から犬の気持ちを読み解こうとするリアリティがありました。だからこそ、僕のような初心者にも痛いほど犬の気持ちが伝わってきたし、この本を読んで、以前よりも犬の気持ちを考えるようになりましたし、犬と一緒に家族として暮らすのであれば、最後まで責任を持って育てる義務があるのだと、自然に理解できました。
 さらに、犬は人間よりも寿命が短いので、犬を飼うということは、いつか絶対的に別れの日が来るということでもある。犬を飼う人は、その別れ、喪失感とも向き合わなくてはならない。人が生きていく上で喪失体験というのは避けられないものですが、『ソウルメイト』では、犬というフィルターを通してよりくっきりと喪失感が浮かび上がっていた気がします

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 僕は、今年の初めに『STARTING POINT』という朗読劇をやらせてもらって、その脚本を書いたのですが、そこでも青春と喪失体験のふたつをテーマにして書きました。
 人が生きていく上で絶対にぶつかる「喪失」という壁を、僕たちは乗り越えて生きなけけばならない。でも、喪失を乗り越えるための方法を摑んでいる人は少なくて、時間に解決してもらうとか、自分自身であがくとか、みんな手探りしている。「何かを喪失する」ということを経験していない人はいないから、「喪失」を描いた作品は人の心を強く打つのではないでしょうか。
 いつ、何を喪失するかは誰にもわからない。僕は今25歳で、これまでに25回夏を経験したけれど、元気な身体であと何回夏を迎えられるんだろう? あるいは、普通に生きているつもりでも、ふと「最近楽しかったことは何?」と問いかけられると、パッと思いつかない自分がいたり。そう思うと、ひとつひとつの日常を改めて大切にしたいなと思うし、日々の時間をダラダラ過ごすのではなく、自分にとって意味のある時間にしたいなと考えるようになりました。そして、犬を飼っている人は、「いつか来る別れ」がもっと切実なわけですから、より愛犬への思いが深まるのだろうな、とも思いました。

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 僕は今まで、動物を飼ったことがありません。
 だから、この本で書かれている人と犬の絆については、今はあくまで想像することしかできない。でも、犬を飼っている友達は多いので、彼らと犬たちの姿を垣間見て、この本に描かれている絆を想像することはできました。彼らの関係は、見ていて本当に羨ましい。愛犬からもらえる愛情、僕も感じてみたいです。今は仕事で家を空けることが多いから現実的に犬は飼えないけれど、もう少し年齢を重ねて落ち着いたら、ぜひ飼ってみたいなと思っています。いつどんなときも、全力で自分を求めてくれる犬の愛って、人間では代わりになれない無償の愛だと思うんです。冷たいことをいうと、人間は裏切ることがあるけれど、犬は飼い主が愛情を注ぎ続ける限り、決して裏切らないと思いますから。そして、いついかなる時も自分を愛し、一番の味方でいてくれる。そういう存在がいてくれたらきっとすごく心強いし、自分が頑張る原動力にもなりますよね。

 『ソウルメイト』に登場した犬の中で、僕が飼ってみたいのは柴犬とコーギー。柴犬は、ファンの人からよく「顔が似ている」って言われるので親近感があって。コーギーは、EXILEのNESMITHさんが飼っていて、おうちにお邪魔させてもらった時によく遊んでいるからです。『ソウルメイト』の中では、コーギーは「躾けるのが難しい犬」として描かれているんですが、NESMITHさんのコーギーはすごく人なつっこいんですよ。体重が12kgぐらいあって結構大きいので、遊びにいくと毎回突進されて軽い衝突事故みたいになっちゃう(笑)。
 そういえば、まだ僕が犬を怖がっていた時期に、NESMITHさんから「克服してみな」って言われて、コーギーの散歩でリードを持たせてもらったことがあります。短い手足でポテポテと歩く後ろ姿を見ていたら、なんだか可愛くなってきて。NESMITHさんのコーギーも、僕が犬嫌いを克服する鍵になってくれた大事な恩人です。

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淡々とした中にも心を打つ描写。
そこにはきっと著者の人生が込められている

 『ソウルメイト』に収録されている7つの物語は、それぞれ独立していて、エピソード同士の関連はありません。主人公たちは一人ひとり犬との向き合い方も、向き合う理由も違っていて、それぞれの人生にそれぞれの犬との軌跡がある。そんな一冊だから、独立して語られているのがかえって心地よかったです。
 唯一共通しているのは、すべての物語がゆるく長野、とりわけ軽井沢と繋がっている点。著者の馳星周さんは軽井沢にお住まいで、かつてバーニーズ・マウンテン・ドッグを飼っていたんだそうです。それを知って「あ、この本には、きっと馳さん自身の人生がのっかっているんだろうな」と解釈するようになりました。軽井沢の情景描写は、淡々と短い文を重ねて綴られていくんですけれど、温かさと優しさ、孤独と冷たさといった、相反するものが伝わってくるんです。それはきっと、馳さんが軽井沢で経験した人生が込められているから。作者の人生が込められた小説ってすごく心に響くし、こちらもちゃんと心して読まなくちゃ、と思わされます。そういった部分で、一本の軸が通った短編集だと感じました。

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 『ソウルメイト』を読み終えてから、馳星周さんの代表作である『不夜城』も読み始めたんですが、同じ人が書いたと思えないほどテイストが違い過ぎて、面食らっています。新宿歌舞伎町の裏社会を舞台に、ばんばん人が死ぬハードなノワール小説で、作家としての振り幅が広すぎる! 『ソウルメイト』みたいな温かい作品を書いた人なのに、こんなハードなストーリーを書くんだ! と、圧倒されました。そしてやっぱりこういう、自分の人生とかけ離れたダークな作品はすごく僕の好みなので、早く読み進めたいなと思っています。

 それはさておき、この『ソウルメイト』。仕事や勉強に追われて心に余裕がなくイライラしている人は、この本を読んで「涙活」をしてみてはどうでしょう。「泣く」ということが全てではないですが、泣くことって心が動かないとできないことなので、心を動かす体操というか……気持ちがすごくスッキリすると思います。それから、心に孤独や喪失感を抱えている人も、この本から得られるものは大きいと思う。そして、動物の気持ちが知りたい人にもおすすめです。先ほども書きましたが、犬を擬人化していないからこそ伝わってくるもの。犬のちょっとした行動にどんな気持ちが込められているかがわかります。僕みたいに、今まで動物に深く関わってこなかった人間には、この本を通して知った犬の気持ちは本当に興味深かったし、犬への憧れも募りました。

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#気になる一文

星空にちらほらと舞う雪は、厳かで穏やかで、譬えようもないほど美しかった。

 これは、「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」の終盤に出てくる一文で、弱っていくカータと私が見ている軽井沢の冬の夜空の描写です。この一文だけでも、はかなさと切なさ、そして今から散ってしまうのかもしれないカータの命の重みまで伝わってくる。この文章を読んだ瞬間に、「わたし」とカータが雪を見ている映像が鮮明に浮かび上がりました。それは、自分が映像化する監督だったら、こういうアングルで撮るだろうなっていうのがわかるぐらい。しかも章を区切る前のラストの一文だから、一回ため息をつきたくなるような余韻が残る。そして自分の吐いたため息までもが白くなっているような想像ができる、心情の籠もった綺麗な文章だと思いました。

 もしカータが死んでも、軽井沢には変わらず雪が降るのかもしれないけれど、ここで描かれているような雪には見えないんじゃないかなと。この一瞬にしか見ることができない景色だからこそ、これほどまでに美しい文章に繋がったのかもしれません。もしかしたら、自分も将来犬を飼うことができたなら、こんな風に景色の見え方まで変わってしまうのかもしれないですね。
 この一文を読んで、心から冬の軽井沢に行ってみたくなりました。

今月の一冊
『ソウルメイト』
『ソウルメイト』
馳星周
【集英社文庫】

人間は犬と言葉を交わせない。けれど、人は犬をよく理解し、犬も人をよく理解する。本当の家族以上に心を交わし合うことができるのだ。余命わずかだと知らされ、その最期の時間を大切に過ごす「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」、母の遺した犬を被災地福島まで捜しに行く「柴」など。じんわりと心に響く、犬と人間を巡る七つの物語。愛犬と生きる喜びも、失う哀しさも包み込む著者渾身の家族小説。

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次回は司馬遼太郎さんの「燃えよ剣」をレビューさせていただきます。
もう撮影終えているのですが、クオリティーが凄く高く…
過去一の写真がくるかもしれませんよ…
そういえば、先日のランペの配信ライブでもこんな格好をしました。
定期的に岩谷文庫でも和装させていただいているので、少しずつ馴染んできた気がします。
いつか岩谷文庫を見てくださっている皆さんとお会いする機会が作れるなら、和装姿で登場なんかも他に類を見ないのでいいぁなんて思っている今日この頃です。
そうなったら皆さん会いに来てくれますか?(^^)/
(ただアイデアを呟いてるだけですよ〜笑)

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