みなさん、こんにちは! THE RAMPAGEの岩谷翔吾です。
『岩谷文庫~君と、読みたい本がある~』第22回は、兼近大樹さんの小説『むき出し』のレビューをお送りします。
兼近さんは言わずと知れた、お笑いコンビ「EXIT」で活躍中のお笑い芸人さんですが、2021年の10月、自身初の小説となる『むき出し』を発表されました。
僕がこの本を知ったのは、ニュースで見てのこと。その頃は僕自身、朗読劇『さくら舞う頃、君を想う』の原型となる小説を書き始めていたので、特に芸能人の方の執筆活動や作品、作風、プロモーション、色々なことにアンテナを張っていて。発売されてすぐ読んでそのあまりの面白さに衝撃を受け、ぜひ兼近さんと対談させて頂けませんかとお願いをしてしまい、ありがたいことに実現させて頂きました。(岩谷文庫第21.5回)
兼近さんがこの作品で描かれているのは、「自分の人生」についてです。
読んでみて感じたのは、まるで現代版『人間失格』というか、西村賢太さんの『苦役列車』の令和版というか……。兼近さんは、芸人さんの中でもいわゆるイケメン枠で、アイドル的な人気を誇る方なのに、自分の汚い部分、自堕落な部分がタイトル通り「むき出し」で描かれていて、これはすごいなと思いました。
もちろん小説なので、自伝に近い内容でありつつフィクションも交えられていて、どこまでが現実にあったことかは分からないのですが……汚い部分をさらけ出さなくても「兼近大樹」の名前があれば注目されたと思うのに、兼近さんはそうしなかった。自分の名前におごることなく、自分の人生を裸にしてさらけ出した。きっと、すごく覚悟が要ったと思います。たとえるなら、渋谷のスクランブル交差点を全裸で歩くのと同じくらい。それぐらいの思いが詰まっていると感じたし、その覚悟を汲み取りながら読ませて頂きました。
これは、兼近大樹さんの経験してきた人生なのか、はたまた創作なのか──。
読めば、誰もがきっとそう感じてしまう『むき出し』は、こんな作品です。
お笑いコンビ「entrance」で活動し、人気を博している芸人・石山大樹には、隠してきた暗い過去がありました。
困窮した家庭に生まれ、家族から暴力を振るわれるのが日常という環境で育ってきたため、小学校で「当たり前」として教えられる「暴力をふるわない」「嘘をつかない」という常識が理解できない。なぜ暴力を振るってはいけないのか、なぜ嘘をついてはいけないのか。なぜ大人は「人の嫌がることをしてはいけない」と言いながら、自分の嫌がることをしてくるのか。石山の「なぜ?」に、誰も答えてはくれません。先生やクラスメイトたちとトラブルの絶えない毎日を送りつつも、彼は「悪いことをするやつは、怒って殴って言うことを聞かせる」という信条のもと、時にはいじめっ子を殴ってやっつけ、それなりにあっけらかんと学校生活を楽しんでいました。
そんな石山は中学に入学した頃、同級生たちと同じように生きられない自分に気づき始めます。金がないから高校には行かずに働く。そう決心した石山ですが、現場仕事やテレアポなどを転々として、辿り着いたのはデートクラブの運転手兼用心棒。「女の子達を守るため」という彼なりの正義感で暴力を振るいながら続けてきた石山ですが、ついに警察に逮捕されます。