岩谷文庫 ~君と、読みたい本がある~
岩谷文庫

岩谷文庫 ~君と、読みたい本がある~

item

「もしも一ヶ月後、人類が滅亡するとしたら?」
タイムリミットをつきつけられた時、人はどう生きるのか

 みなさん、こんにちは! THE RAMPAGEの岩谷翔吾です。
 『岩谷文庫~君と、読みたい本がある~』第23回でご紹介するのは、凪良ゆうさんの小説『滅びの前のシャングリラ』です。

dummy 岩谷文庫画像

 この作品は「あと一ヶ月で人類は滅亡する」という設定で物語が繰り広げられる、いわばSFもの。僕は普段、SFというジャンルにあまり触れることはないのですが、みなさんにより幅広いジャンルの読書をご提案したいな、と思い今回レビューする本に選びました。凪良さんは「岩谷文庫リクエスト本企画」でも多くの方が挙げてくださった作家さんでしたし、『流浪の月』と『汝、星のごとく』を読んだことがあり、登場人物に自然と心が引き込まれる繊細な心理描写に魅力を感じたことも、今回ご紹介したいと思った理由のひとつです。

 「あと一ヶ月で人類が滅亡する」という衝撃的な設定を聞いて、「えっ!? そんな話怖そうだな…?」と感じる方もいるかもしれませんね。たとえばハリウッド映画だったら「人類滅亡の危機をどうやって回避するか?」という話が展開していきそうですが、この物語はそうではありません。人類滅亡という大きなキーワードが軸になりつつも、それ自体はあまりフォーカスされず、物語の語り手となる四人の登場人物が、地球最後の一ヶ月をどう過ごしていくかという人間ドラマがメインで描かれます。
 それまで「こんな世界は嫌だ」とネガティブに思いながら生きてきた人が、人類滅亡を目前にして生きる希望を見出していくという物語。シチュエーションこそ現実離れしていますが、登場人物たちの心が変化していく様子にはすごくリアリティがあります。「ずっと続いていく終わりのない世界」に対して生きづらさを感じ、絶望や喪失感を抱えていたからこそ、「あと一ヶ月」という確実な終わりに向かって日々を過ごす中で、それまで気づかなかった些細な幸せを見出していく。そして「あと一ヶ月」だからこそ、周りにどう思われるかなんて考えず、「自分の人生を生きる」ことに全力を注げる。
 そして、そんな登場人物たちの生き様、心の底に抱える思いを、老若男女問わず繊細に描き出す凪良さんの文章。情景描写に長けた作家さんもすごいですが、目に見えない「心」というものをここまで描き出せるのはすごいことだと思います。
 状況設定は重いですし、SFというと難しいイメージがあるかもしれませんが、それを感じさせない読みやすい文章とストーリー展開なので、これから読書に挑戦してみたい人にこそおすすめの作品です

dummy 岩谷文庫画像

 それでは『滅びの前のシャングリラ』のあらすじをご紹介しましょう。
 舞台は現代の日本。なんでもない日常が続くはずだったある日、「一ヶ月後、小惑星が地球に衝突する」というニュースが世界を駆け巡ります。小惑星が衝突すれば、かつて恐竜が絶滅したように人類も滅びてしまう。それからというもの、人々の日常生活は少しずつ綻び、ライフラインも治安も崩壊して、暴力と死が支配する世界へと変貌していきます。そんな状況で始まる物語が、四人の登場人物の視点で章ごとに語られていきます。

 一人目の語り手は、江那友樹(えな・ゆうき)。広島に住む、十七歳の男子高校生です。内気な性格で同級生たちにパシリをさせられている友樹は、「自分みたいな陰キャはこうやって生きていくしかない」と、どこか諦めて達観しているようなところがあります。
 僕は登場人物の中では、彼に一番共感して読みました。好きな女の子にもパシられたりかわいそうなのですが、「デブのポケットには、いつでも何かしらのおやつが入っているのだ」というモノローグなど、なんだか憎めないキャラクターが好感を抱かせて、可愛らしいなと思ってしまう。そんな彼は学校一の美少女の藤森さんに密かに恋をしていて、小学生の頃彼女とふたりで会話した思い出を大事にしています。人類滅亡の危機を知らされた時、彼ははじめ事態が受け入れられず混乱するのですが、社会がゆっくりと壊れていく中で、歌姫・Locoのライブに行くため東京へ向かおうとする藤森さんに同行し、自分が彼女を守り抜くんだと決心します。

dummy 岩谷文庫画像

 二人目の語り手は、目力信士(めぢから・しんじ)。若い頃からヤクザの世界で生きてきた男です。ただ信士は、ケンカは恐ろしく強いけれど頭が切れるタイプではなく、四十になっても先輩に使われるその日暮らしのチンピラでしかない。そんな自分の人生に諦念しつつ、昔一緒に暮らしていた静香という女性への想いだけを、途切れることなく抱き続けていました。力任せに生きてきた彼は不器用で、好きな女性にさえ言葉で語るのではなく暴力を振るってしまう。結果、静香にも逃げられ、一人で生きるしかなくなってしまった。
 暴力にまみれて生きている信士は、表面的な部分だけを見れば到底関わりたいと思えない人物なんですが……その内面に触れると、どこか放っておけないと思わされるような部分があります。きっと根っこはものすごく一途で、愛する女性を失った喪失感を埋めようともがいている姿は愛おしくさえ見える。そんな心が空っぽな男の像が繊細に捉えられているなと思いました。

 三人目の語り手は、江那静香(えな・しずか)。この名前を見た瞬間に「あっ」と思いました。友樹、信士と、高校生からヤクザにエピソードが切り替わって、最初は完全に話が分かれた短編集なのかと思っていたのですが、静香の登場で繋がりが分かる。彼女は友樹の母であり、信士が愛し続けている女性であり、これまでに登場した三人は家族だったんです。「江那静香」という名前ひとつで読者にそれを理解させる、凪良さんの構成力に感動しました。
 静香もまた、信士に負けず劣らずバイオレンスな女性です。信士が友樹の父親であることは、僕は二章の半分あたりでなんとなく気づいていたのですが、もしや……と思いつつも「あのおかんだからなくはないな」と(笑)。
 信士の子を身ごもった彼女は、「この子を信士に殺されたくない。そして信士にこの子を殺させたくない」という思いを抱き、自分が妊娠したことすら知らせずに彼の元から姿を消します。それから彼女はたった一人で友樹を産み、育ててきました。友樹も「自分の父親は既に死んだ」と思っていました。ところが、人類滅亡の危機が迫る中、静香、友樹、信士の三人は、思わぬ形で家族として再会することになります

dummy 岩谷文庫画像

 四人目は、山田路子(やまだ・みちこ)。世間では、Locoという名で知られる芸能人です。ただ歌うのが好きで、地元で同級生たちと組んだバンドで声を張り上げていた少女は、売れないアイドルを経て敏腕プロデューサーに見出され、国民的歌姫へと上り詰めていきます。小惑星衝突のニュースが世界を駆け巡ったのは、Locoの人気にわずかな翳りが見え始めた頃でした。「作られた歌姫、誰もが憧れるセレブ」であるLocoであり続けることに苦しんでいた路子は、ひとつの別れを経て家族と再会し、人類最後の日にラストライブを行うことを決心します。彼女がスター街道を上り詰め、人間が一気に変わっていく姿は、他人事とは思えなかったです。

 『滅びの前のシャングリラ』の四つの章には、それぞれ象徴的なタイトルがつけられています。友樹の章は「シャングリラ」。信士の章は「パーフェクトワールド」。静香の章は「エルドラド」。そして、路子の章は「いまわのきわ」。シャングリラもエルドラドも、理想郷、黄金郷という意味で、パーフェクトワールドは言葉通りですよね。
 人類滅亡を間近に控えた設定の物語で、凪良さんはなぜこんなに輝かしい響きのタイトルをつけたのか? ひとつだけ雰囲気の異なる最終章のタイトルが意味するのは? 読み進めるうちに、その理由がだんだんと分かってきます。

dummy 岩谷文庫画像
item

滅びる世界でもたらされた家族の幸せ。
それはとても皮肉で示唆に富んでいる

 僕はこの小説の主題は「家族愛の物語」である、と解釈して読みました。息子と父と母、三人の物語にLocoが加わることで、家族が広島から東京へ、そして大阪へ旅をする理由が描かれる。そして、作られた歌姫であるLoco自身にも「山田路子」の家族がいる。
 四つの章の語り手ではありませんが、藤森さんの存在も重要です。この作品を読んで、僕は『サバイバルファミリー』という映画を思い出したのですが、それに限らずいろいろな物語でいろいろな家族の形が描かれている。彼女はこの作品における、「家族とは血のつながりが全てではない」というメッセージの象徴となる人物ではないかと思いました。そして、この四人の誰しも、地球滅亡というきっかけがなければ家族との関係性が変わることはなかった。

 凪良さんが描く家族の話の中で、静香視点で語られる「エルドラド」が印象的でした。彼女は、子供を産み育てた経験で多くのことを学んだ。だからこそ、その言葉にはすさまじい説得力がある。

 子供はこれから建てられる新築一軒家みたいなもので、家を支える柱の一本一本にあたしや信士は暴力という名の傷をたくさんつけられた。家が完成したときにはそれだけを抜き出すことはできなくなっていて、どれだけ築年数がいっても傷ついた柱はそこに立ち続ける。

 自分が殴られたぶん、誰かを殴っても、あたしたちが味わった痛みは相殺されない。

 この二つは、本編中に出てくる静香の言葉です。暴力を受けて育ち、また他人に暴力を振るう。そんな負の連鎖から、信士は違う生き方をしようともがいても、なかなか自分を変えることができず、父親としての覚悟からも逃げているようなところがある。一方で静香は、母親になって自分より大切な存在ができたことで、自分自身の人生さえをも俯瞰し、子供のために己を変えることができた。母親という存在のすごさを思い知らされました
 ただ、暴力のせいで家族を失い、平和な社会ではつまはじきにされていた信士も、人類滅亡という状況になってからは、彼の暴力のおかげで家族を守ることができる。なんだか皮肉ですよね。

 そして、二人の息子である友樹。自分の世界に逃げ込んでいた彼ですが、大好きな藤森さんを守ると決心してからは真っ直ぐで男気のある行動を貫いていて、愛や恋の持つ原動力の凄まじさ、若さゆえの怖いもの知らずさ、勇敢さを感じました。それにあの爆発力はやっぱり信士の血が流れているからなんだろうな……と思えて、感慨深かったです。
 あと一ヶ月でみんな死んでしまうということになったら、そこでようやく人は吹っ切れて、生まれ変われるのかもしれない。彼の行動はぶっ飛んでいるけれど、自分でもそうするかもしれないなと思わせる物語の筆力があって、友樹の真っ直ぐさを見習いたいし応援したくなりました。

dummy 岩谷文庫画像

 友樹が命がけで守ろうとした藤森さんも、恵まれた家庭で育ってきたけれど、ある事情を抱え家族という存在に飢えていた。彼女は友樹とともに行動することで、自然と信士・静香とも一緒に過ごすことなり、疑似家族のような時間を過ごし、残り一ヶ月というタイムリミットがある中で、血のつながりはなくても「本当の家族」の温かさに触れていきます。

 全編を読み終えて改めて振り返ると、『滅びの前のシャングリラ』という真逆の言葉を繋げたタイトルに象徴されるように、この物語は皮肉に溢れているなと感じます。平和な世界では自分を変えられず、生きづらさを抱えていた彼らが、残り一ヶ月というリミットの中で、初めていろいろなことに気づいて変わっていく。もっと早く気づいていたら、もっと早く変われていたら、彼らには違う人生があったはず。
 だけど、「残り一ヶ月」でなければきっと全員気づかなかった。世界は滅びるけれど、四人には間違いなく救いがもたらされていて、でも世界が滅びなければ彼らの救いはなかったんだろうなと思うと、すごく皮肉だし、切ない設定だなと思います。

dummy 岩谷文庫画像
item

「作られた孤高の歌姫」であることを捨て去った後も、
歌姫が捨てられなかった「歌う」ということ

 最後にLocoについて。彼女の章は、一番印象に残りました。こんな人生、本当にかわいそうだと思います。得るものがあれば失うものもあるという、芸能界の本質が究極の形で表されていて……。
 芸能界で生きるアーティストという意味では同じ立場だけど、ソロアーティストであるLocoと違って僕は16人グループですし、ましてやボーカルでもないので……Locoと比べたら、僕が感じるプレッシャーは16分の1だと思います
 それでもやっぱり、僕でさえも彼女の孤独感には共感するところもありました。たとえば……初めてのアリーナツアーを経験した頃は、本番後、ホテルの部屋で一人でカップ麺を食べていて、自分を見失いそうになることがありました。ついさっきまで、目が灼けるようなスポットライトと何万人の声援を浴びていたTHE RAMPAGEの岩谷翔吾と、今一人でカップ麺を静かにすすっている岩谷翔吾。どっちが本当の自分なんだろう? って。
 僕たちの事務所は、自分の生き様を乗せた等身大のアーティスト像をモットーにしているので、Locoのように誰かに決められた偶像を演じなければならない、ということはありません。でも普通に生きていたら、人間がそんなスポットライトや歓声を浴びることってないので、当時はステージに立った自分がまるで虚像のように感じていました。本来の自分自身はそんなに偉い人間でもないし、いろいろなコンプレックスもある中で、煌びやかなアーティストの自分が自分から乖離していく。さっきまでどぎついスポットライトと何万人の歓声を浴びていたからこそ、孤独がより暗く、一人で寝る静寂がより寂しく感じてしまう。そのギャップに押しつぶされそうで……。
 今は経験を積んだというのもあるし、バランスを崩しそうになった時に相談できる仲間や先輩がいたので、「どっちも自分だ」って俯瞰できるようになりましたが、Locoには残念ながらそんな存在がいなかった。

dummy 岩谷文庫画像

 ステージに立つってある意味麻薬的だと思います。あの強烈なスポットライトと歓声を浴びてしまうと、それ以上にアドレナリンを感じるような瞬間が日常生活にない。コロナ禍を経てライブが再開された時、「自分の生きる場所はやはりここにある」というアーティストの声がありましたが、それって二つの意味があると思っていて。一つは本当にファンの皆さんのためにステージに立ちたいという思い、もう一つはあの充足感が、ステージ上でしか得られないものだからなのではないかと。
 最近、登山好きな父と話していて面白かったのが、山を登るのも、頂上に立ったときの達成感が何物にも代えられないから登るんだそうです。一度達成すると、更に強いアドレナリンを求めるようになって、高い山や雪山など、どんどん難易度を上げて挑戦したくなる。世界は違えど、僕らが感じている気持ちにちょっと通じるものがあるなと思いました。

 そして、こういう孤独感や自分とアーティスト像とのギャップって、アーティストが抱える一番大きな悩みかもしれません。結構みんな抱えるものでもあるので、仲間同士で共有したり、先輩に相談して「本当にアーティストになったんだね」って言われたり。僕はそれほど繊細な人間じゃないし、グループでプレッシャーも16等分だからまだ平気なんですけれど、これがソロアーティストだと別次元のプレッシャーがあると思います
 たとえばEXILE ATSUSHIさんがソロドームツアーをされる時は、一人で一日5万人集めてその前で歌う。すさまじいプレッシャーでしょうし、それをやりとげるメンタルは尋常ではないと思います。きっと、Locoもそれに近いものがあったのではないかなと。だから、作中で彼女を襲った孤独と、彼女を衝き動かした衝動も想像するのは難しくなかったですね。

 Locoは地球に小惑星が衝突するその時に、ラストライブを行い歌おうとします。きっと彼女は、自分が最後の最後まで歌うことで、誰かに何かが届くはずと信じていた。それが彼女の心の支えになり、彼女が生きる証にもなる。だから僕には、彼女が歌おうとした気持ちは理解できました。
 彼女のラストライブには、藤森さんの願いを叶えようとした友樹、信士、静香も一緒に駆けつけていて、Locoの歌は彼らにも救いをもたらしている。友樹、信士、静香の章につけられた輝かしいタイトルは、「残りたったの一ヶ月」で輝かしい幸せを見出し、やり遂げた三人の象徴だったのではないでしょうか。
 そして「いまわのきわ」というタイトルからは、世界が閉じる時、Loco自身も閉じる。最後の最後まで、誰かに届けるために歌うという強い意志を感じました。

dummy 岩谷文庫画像

 僕らが生きる世界は終わることなく続いていきますが、この物語は友樹や藤森さんのように、世界に生きづらさを感じている人や、日々に退屈している人に読んでもらいたいなと思いました。明日があるのが当たり前じゃない世界がある。それを知ることで、今頑張らないでいつ頑張るんだ、自分も一歩挑戦しよう、と優しく背中を押してもらえるような作品。人生って「どれだけ長く生きるかではなく、どう生きるか」の方が大事なのかもしれない。そういう意味で、僕はこの物語はハッピーエンドだと思いました。登場した人たちは、間違いなく人生をやり遂げたでしょうから。

item

もしも自分が「最期の一ヶ月の過ごし方」を選べるとしたら、
やっぱり仲間たちと一緒にいる時間がいい

 「一ヶ月後に人類は滅亡する」という設定はあまりにインパクトがありすぎて、もしそうなったら自分は何をするだろうと考えてしまいました。僕だったら、「あと一ヶ月で人類滅亡」って言われても、「万が一生き延びたら……」「もし一ヶ月後も滅亡しなかったら……」と色々考えてしまって、その後も暮らしていくために貯金を全部使ったりはしない気がします。あとは、美味しい物を食べたいとかどこかへ生きたいとか、単に欲望を満たすことには興味が湧かなくなるんじゃないかな……。家族や会いたい人に会えたら嬉しいし、逆にそれ以外は思いつかなかった

 そもそも法律とか治安って、その後もより良い生活をするために保たれているものだと思うので、「あと一ヶ月で終わり」となったらこの作品の中で描かれるようにみんなが自分本位になって、秩序が崩壊した暴力的な世界になってしまうと思う。友樹たちは家族で一緒に行動して生き抜いていくので、僕もチームは作りたいです。「数は力」だと、THE RAMPAGEでの活動を通して学んできましたから

dummy 岩谷文庫画像

 本音を言うと16人全員で行動したいですけれど、どうしても少人数にならなくてはいけないとしたら、肉体派というか用心棒的な立ち位置で、(武知)海青とLIKIYAさんとは一緒にいたいし、苛酷な環境で生き延びられるクレバーさの持ち主という意味では、やましょーさんも一緒がいい。この三人はマストで、迷わず全財産を渡してでも仲間に入れてくれって言います(笑)。
 あと、RIKUさんも一緒がいいですね。腕っぷしが強い上に優しくてピュア。もし「リンゴが食べたいです」って言ったら、自分がボロボロになってでも探してきてくれそう。最後に一緒にいるとしたら、そういう優しい人がいいし、僕も何かしら貢献して、みんなで最後まで生きるために頑張りたい。
 そして、最後にみんなでよく行く中目黒の定食屋さんのオムライスを食べて終われたら幸せですね。

dummy 岩谷文庫画像
dummy 岩谷文庫画像

 といっても、これは所詮僕の想像でしかないとも思います。
 そもそも、人生において自分の最期を選べるとしたら、それはとてつもなく幸せなことですよね。人類滅亡だなんて究極の状況をつきつけられた人間がどう行動するかなんて、実際にそうなってみないとわからないと思いますから……。

#気になる一文

こうなる前の世界より、ぼくはずっと自分が好きなんだ。

 これは、人類滅亡まであと十日という時に、母の静香から「おまえは怖くないのか」と訊かれた友樹が答える言葉です。この物語では、友樹は「世界が滅亡する」ことをきっかけに生まれ変わるのですが、実際に僕たちが生きていく中でも、何か一つのことがきっかけで、一夜にして人生がガラッと変わり、自分らしく頑張れるようになることってあると思うんです。もしかしたら、この本を読むこともきっかけになり得るかもしれない。
 自分を変えるために大切なのは、自分の心が変わっていく様子を、自分でちゃんと見ていて、それに自分で気づく視点を持つことなのかもしれません。友樹は、ちゃんと自分の変化に気づいた。だから、この一文を選びました。

今月の一冊
『滅びの前のシャングリラ』
『滅びの前のシャングリラ』
凪良ゆう
【中央公論新社】

「明日死ねたら楽なのにとずっと夢見ていた。なのに最期の最期になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている」一ヶ月後、小惑星が地球に衝突する。滅亡を前に荒廃していく世界の中で「人生をうまく生きられなかった」四人。学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香、そして──。荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。圧巻のラストに息を呑む。滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。

column

僕がLocoのような孤独を感じない理由、それは仲間がいるからです。
ライブ終わり、楽屋でワチャワチャしている時間が凄く面白いです。
ライブでアドレナリンが出ており、何でも面白く感じてしまうので、会話の内容はかなり低レベルです…(笑)
ライブ中のアクシデントや、最近起きた事など共有し合います。
そんな何気ない時間が愛おしくてたまりません。

dummy 岩谷文庫画像

シェアする