岩谷文庫 ~君と、読みたい本がある~
岩谷文庫

岩谷文庫 ~君と、読みたい本がある~

『岩谷文庫』は、ダンスと読書が大好き! THE RAMPAGEの岩谷翔吾さんが、フレッシュな視点でおすすめの本を紹介してくれるブックレビュー連載です。今回の特別編では、作家の三浦しをんさんをお招きした対談のフリートークの模様をお届け。『エレジーは流れない』の創作秘話や、三浦さんから岩谷さんへのおすすめ本紹介など、見どころ満載の対談本編は 『小説すばる』7月号(好評発売中)に掲載されておりますので、そちらもぜひ合わせてチェック! そして編集部爆笑ワード連発のこちらのフリートークは、どうぞゆる〜くご覧ください……。

【※記事内には「THE RAMPAGE LIVE TOUR 2023 “16”」のネタバレが含まれますので、ご注意ください。】

三浦しをん

2000年、『格闘する者に○』でデビュー。2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、2012年『舟を編む』で本屋大賞、2015年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞、『ののはな通信』で2018年に島清恋愛文学賞、2019年に河合隼雄物語賞、2019年『愛なき世界』で日本植物学会賞特別賞を受賞。
その他の小説に『光』『政と源』など、エッセイに『マナーはいらない 小説の書きかた講座』『好きになってしまいました。』などがある。最新刊は小説『墨のゆらめき』。
*エッセイ集『のっけから失礼します』が集英社文庫より6月20日発売予定

岩谷翔吾

2017年、総勢16名からなるダンス&ボーカルグループ・THE RAMPAGEのパフォーマーとしてデビュー。映画「チア男子!!」への出演など演技に挑戦するほか、日本将棋連盟三段や、実用マナー検定準1級の資格取得など趣味多数。
2021年2月より、webマガジンCobaltにてブックレビュー『岩谷文庫』連載をスタート。ダンスのみならず活動の幅を広げている。
*ブックレビュー小説「君と、読みたい本がある」が「青春と読書」9月号(8月19日発売)より連載開始予定

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Netflixは「濃味」、小説は「薄味」?

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岩谷今日は、「岩谷文庫~君と、読みたい本がある~」特別編として、作家の三浦しをんさんと対談させていただいています。僕からは、しをんさんの著作『エレジーは流れない』を読んでの感想をお伝えし、そしてしをんさんからは、僕へのおすすめタイトルをご紹介いただく内容の対談前半を、雑誌『小説すばる』7月号に掲載中です! さて、ここからは対談後半、テーマを決めずにざっくばらんに話していいということで、引き続きよろしくお願いいたします!

三浦よろしくお願いします。岩谷さんは朗読劇『さくら舞う頃、君を想う』の脚本と演出も手がけられて、素晴らしい舞台でしたね。最近の執筆活動はいかがですか? 書いていらっしゃいますか?

岩谷最近は、集英社の『青春と読書』で始めさせてもらう連載の原稿を書いたり、以前に書いた小説のブラッシュアップをしてます。

三浦それは楽しみです!

岩谷最近、Netflixなんかで見る作品のエッジがききまくっているので、自分の作品ももう少し頑張りたいなと思って、修正を重ねてるんですよね。

三浦確かにエッジはきいてるんだけど、果たしてそれが本当にいいことなのかなって。要するに「味付けが濃い」ってことじゃないですか。映像とはまた違うと思うんだけど、小説って「ドーン、バーン、ドカーン!」みたいなインパクト押しでいいんだろうかと感じる時があって、難しいですよね。でも、現代の味付け濃いめに慣れた人にとっては、「エンタメ=味付けが濃いもの」になっていて、小説ならではの微細なところを落ちついて味わおう、っていう風にはなかなかなりにくい。そう思うと、小説の今後は難しいかもなっていう気もしちゃうんですよね……。

岩谷小説の面白さは、ただ事件がバーンって起こるだけじゃなくて、登場人物たちの事件に向かうまでの心の機微や動きを読み解くところにあると思います。

三浦逆に、事件は全部終わっていて、その後の話だけを書いたっていいわけですもんね。

岩谷日常生活の中で、自分の感情をうまく言語化できないことってよくありますが、小説の中では人の感情が言語化されている。だから小説を読むことで、言語化できずにいた自分の感情と照らし合わせることができるんです。

三浦小説を読んでいて「あの時、自分が感じていたのはこういうことだったのか」って思うこと、ありますよね。

岩谷それが小説の良さのひとつですよね。だから事件が目白押しの味付けが濃すぎる構成だと、心を読み解くところにまで辿り着けない。

三浦そうそう。もちろん両立できれば一番いいんですけど、なかなかそれは難しいと思うんです。両者は目指してる方向がちょっと違うので。最近のエンタメは展開も速すぎて。

岩谷Netflixなんか、「開始5分が命」って言われてるみたいです。だから展開が超速い。でも、日常や人生にそんなスピードってないじゃないですか。

三浦『テスカトリポカ』の著者の佐藤究さんは、「自宅マンションから出た瞬間に職質された」って仰ってましたよ。「そんなことあるんだ」って爆笑しちゃいましたけど、それは特殊な事例ですよね。

岩谷実際の日常なんて、朝起きて会社行って、ごはん食べての繰り返し。そう考えると、小説にどこまでエンタメ色が必要なのかって考えてしまいます。

三浦小説にNetflixなみの「展開の速さ」を取り入れるのは、正直ちょっと難しいと思う。

岩谷僕は、しをんさんの『エレジーは流れない』みたいな、まったりした速度感の作品も心地いいと感じました。

三浦ありがとうございます。その時の読み手側の心の状態もあるけど、「何も起こらないからつまらない」っていうわけでもないんですよね。

岩谷とはいえ、それで読者を飽きさせずに引っ張っていくのは、やっぱりしをんさんの筆力がないとできないとは思うんですけど。

三浦いえいえ、そこはもっと修業せねばならんと思ってます。繰り返しになるけれど、今のエンタメ界の動向を見るに、なかなか小説の今後は困難だなと思う。文字をひとつひとつ読まなきゃいけない時点で非常に労力がかかるし。だから今後、小説を読む人が激増することはもうなさそうだと思っちゃう。でも、なくなってほしくないです、小説。

岩谷そうですよね……。

三浦そのためにも、岩谷さんにぜひぜひ書き続けていただきたい!

岩谷頑張ります!

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生き残りの秘訣は、筋トレとタンクトップ破り。

岩谷エンタメ繫がりの話なんですけど、ここ最近で、男性グループがめちゃくちゃ増えてるんですよ。同じ事務所の三代目 J SOUL BROTHERSさんが出た時は、日本で男性グループっていうとジャニーズさんかLDHかっていう感じだったのに。

三浦K-POPのグループもすごく増えましたもんね。

岩谷増えましたね。

三浦そういう潮流の中で、岩谷さんたちがどういう風に活動していくか考えるの、きっと楽しくも大変ですよね。

岩谷例えばコンビニにはセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンなどいろいろありますけど、知らず知らずのうちに「自分はファミチキがおいしいからファミマ派だな」ってなってること、あるじゃないですか。そんな風に、THE RAMPAGEでも何か強みになる部分を押し出せるようにしたいね、とは話しています。そこからライブに来てもらえるようにできればと。

三浦一度ライブを体験すれば、THE RAMPAGEの良さはすぐに分かってもらえますよね。ただ、どうやってライブに足を運んでもらうかが難しいというのも分かる。

岩谷ある意味、小説でいう「一文字目を読み出すかどうか」と似てるのかも。

三浦手に取ってもらえるかどうかってこと。本当にそうですよね。

岩谷それで、僕らも今年は一旦原点に戻って、THE RAMPAGEは男らしい=全員で脱ごうみたいな(笑)。で、全員筋トレして、ライブでタンクトップ破る演出とかやってます(笑)。

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三浦男らしさの追求として、脱ぐ!(笑) さすがです。

岩谷あれ、実は破りやすいように切れ目入れてあるんですよね。

三浦そうなんですか! それにしたってあんなに綺麗に破けるものかなあ。

岩谷しをんさんもぜひ一度破ってみてください。すごく気持ちいいですよ。クセになっちゃいますから。

三浦人生でそんなおすすめをされる日が来るとは(笑)。家でやってみようかな、ちょっとへたったTシャツに切れ目を入れて。破ったらそれで雑巾がけをする。THE RAMPAGEの皆さんは、本当に紙のように軽々と破ってますよね。

岩谷破り方にもコツがあって、左右に均等に力をかけないとまっすぐ破れないんです。まっすぐ破れたら綺麗に脱げるんですけど、変に斜めになっちゃうと、脱ぐのが大変。

三浦(爆笑)

岩谷でも本番中に止まれないので! いかにカッコよく脱ぐか、本当に大変なんですよ。

三浦いろいろ神経を配らなくちゃいけない(笑)。今仰ってたコツ、なるべく左右均等に力を入れるとか、切れ目入れるのを忘れるなとか、先輩たちから伝授されるんですか?

岩谷さすがにそれはないですけど、「Tシャツを脱ぐ時、普通に脱ぐより親指をひっかけて脱いだ方がカッコいい」っていう話は教えてもらいましたね。

三浦そんな脱ぎ方する人、普通はいないよね!?(笑)

岩谷この脱ぎ方なら腹直筋見えーの腹斜筋見えーので、体をちゃんと魅せながら脱げるんです!

三浦ああなるほど! ガバァと一気に脱ぐんじゃなくてちょっとずつ……。

岩谷そう、ちょっとずつ脱ぎなさいとか(笑)。

三浦なんか布がひっかかって親指突き指しそうだけどな(笑)。観客への見え方というか見せ方、大事ですもんね。

岩谷あと筋肉ネタではメンバーの武知海青が言ってたんですけど、筋トレ後はプロテインを飲むより、鏡で自分の筋肉を見ながら自分で褒めてあげるのが一番効くって。

三浦海青さんが仰るなら間違いないですね。

岩谷メンバー何人かで鏡に向かって、「いいね!」って自分の筋肉を褒める。で、人のも褒めてあげるんですよ。「陣さん、背中、やっぱ大きいですね」とか「翔吾は胸筋、発達したね」とか。お互いジロジロ見合って褒め合う。

三浦……変なの(笑)。

岩谷それをボケとかじゃなく、ガチでやってますからね(笑)。

三浦すごいですね。でも、鍛えたら見せたくなるし、いい筋肉だなって思ったらそりゃ褒めますよね。

岩谷しをんさんにも、一度僕らのジムに来て、見学してもらいたいです(笑)。それだけで多分一本書けるぐらい濃ゆいので(笑)。あとは着るもの。例えばTシャツなんかだと、厚手のものじゃなく薄手のピタッとしたものを選ぶようになるんです。

三浦それは、筋肉のシルエットがちゃんと出るように? そんな生地の薄いTシャツってどこで売ってるの!? サイズやデザインなら気にするかもしれないけど、生地の厚みなんて、普通は透け感を気にするぐらいで、そこまでこだわりないですよ。

岩谷実は今僕が着ているこのTシャツ、HIROさんからお下がりでいただいたものなんですけど、HIROさんの服って生地が薄いんですよ……。

三浦なんで今ちょっと小声になった!? でも、すごく重要な機密情報ですね。「HIROさんのお下がりのTシャツは薄い」! なるほど、鍛えてる方は薄いTシャツなのか。今後私、街を行く人をそういう視点で見てみます。

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三浦しをんと「HiGH&LOW」はいかにして出会ったのか

岩谷ところでしをんさんは、そもそもLDHを好きになったきっかけは何だったんですか?

三浦なんだろう。理由とかきっかけなんて考えることもなく、知った瞬間好きだったです(笑)。でもやっぱり、自分では到底なしえない鍛えられた肉体へのリスペクトはありますね。全然LDHのみなさまのことを知らなかった頃に「HiGH&LOW」シリーズを見て、「この人たちはどうしてこんなに動けて、こんなにきらめいてるの? いったい何者!?」と思ったんです。それで『HiGH&LOW THE LIVE』のDVDを見たら「むっちゃ歌ってるし踊ってる!」って、さらにびっくりして。

岩谷そうだったんですか! じゃあ、「HiGH&LOW」シリーズを見ることになったきっかけは?

三浦複数の友達が「とにかくすごいから見ろ」って言ってきたことですかね。

岩谷どのチームが一番好きですか?

三浦アクションはRUDE BOYS、ファッションは達磨一家、メンタルは鬼邪高かな……。でも、とにかくみんなすごいきらめいてますからね。

岩谷推しキャラはいますか?

三浦推し……? 本当に全員好きなんですよ。だって「HiGH&LOW」は全員主役じゃないですか。

岩谷確かに(笑)。最初は映画から見られたんですか?

三浦『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』が公開された時期で、友人たちに言われて見に行くことにしたんですが、ちょうど締め切りが「このまま寝てしまったら終わりだ」っていうぐらいガチでヤバい時期で。「この原稿が終わったら『THE MOVIE 2』を見に行く。だからちゃんと予習しよう」と思って、原稿やりながら『THE MOVIE』を流し始めたら、もう目ぇギンギンになって! 48時間レンタルだったんですけど、48時間ずっと再生し続けてそれを見ながらずっと原稿書いて、おかげさまで締め切りに間に合ったし、ほとんど寝てないのに変なアドレナリンが出てたから、完成した原稿を送って、その足で映画館へ『THE MOVIE 2』を見に行きました。本当に、最高でした。「HiGH&LOW」と出会ってから、大変楽しい人生を送らせていただいてます。

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岩谷「HiGH&LOW」って何作もありますが、どの作品が一番好きですか?

三浦うーん、これまたどれも好きなんですよねぇ……。でも、最初に見たこともあって、『THE MOVIE』は特に思い入れがあります。アクションはもちろんすごいし、琥珀さんを巡ってなんでみんなでケンカしてるんだろうって、何回見ても腑に落ちないんだけど、あのカオス感が楽しくて。客観的に見れば、アクションが一番すごいのは『THE MOVIE 2』ですよね。登場人物の魅力が活き活きと描かれているという点では、『THE WORST』シリーズもすごくいいと思います。にしても、私ここまで詳しく「HiGH&LOW」の話をしたこと、なかった気がする。

岩谷でも、本や雑誌でちょこちょこ拝見してますよ(笑)。「HiGH&LOW」は、THE RAMPAGEの壱馬や北ちゃんも頑張ってます。

三浦お二人ともご活躍されてますよね。壱馬さん、ほんと演技がうまいといつも思います。

岩谷上手ですね。楓士雄、はまり役です。

三浦ちょっとした表情が素晴らしいです。表情筋が微細に動く。

岩谷器用ですよね、ホントに。今回のツアーは「HiGH&LOW」オマージュの演出もあるので期待しててください。

三浦そうなんですか!? それは楽しみ。楽しみすぎる!

岩谷絶対盛り上がりますよ! 完全に「HiGH&LOW」イメージです。「行くぞてめえら!」って壱馬が叫んだら、パフォーマーが花道を突っ走るっていう。

三浦それめっちゃ「HiGH&LOW」ですね! あの、両軍がワーッて走り寄ってボコボコに殴り合うの、冷静に考えるとよくわかんない謎展開なんだけど、すっごい燃える。「ブチ上がる」ってこういうことなんだなと(笑)。

岩谷確かに、両軍じりじり近づいていくとかじゃないんですよね。

三浦はい。すっごい勢いでみんなが激突するのが本当に面白い。

岩谷もし、しをんさんが「行くぞてめえら!」で走ることになったら、どのへんのポジションに行きたいですか?

三浦そんなの一番後ろから微塵も動きたくないよ! 怖いじゃないですか。あと、私あの距離を走った時点で、ひと休憩入れないと使いものにならないです。

岩谷とりあえず先頭は嫌ですよね、絶対やられるから。

三浦先頭だったら、脇によけたらいいんじゃない?

岩谷「あいつナナメに行ったぞ!? どこへ行く気だ?」

三浦一人も殴らずに脇にそれて、「あの卑怯者!」ってなりそう(笑)。

岩谷もしかしたら、戦国時代の合戦なんかもそうだったんじゃないかな。

三浦絶対そうだと思う。特に足軽は、そのへんの村で畑を耕してたのに、急に戦に駆り出されたような人じゃないですか。そりゃ、手柄挙げたくて自分から行った人もいるだろうけど。「行けーっ!」って言われても、そのへんの茂みで終わるの待ってた人だって相当多いと思いますね。

岩谷僕もやられたふりしちゃいそうです。地面に寝転がって、死んだふり。

三浦ヤンキーがめちゃくちゃ多い地域に住んでた知り合いから聞いた話なんですけど。本当に鬼邪高みたいに敵対する高校があって、ある日ライバル校とネギ畑を挟んで、両軍向かい合ったんですって。で、互いに舐められないように腕組みして睨み合ってるんだけど、やがて日が落ちてそのまま解散になったっていう(笑)。そんなもんだと思うんですよね。

岩谷Jr.EXILEには『BATTLE OF TOKYO』という、自分とは違うアバターで展開するコンテンツもあるんですが、もし、しをんさんが自分のアバターを作るとしたら、どういうキャラにしますか?

三浦叶姉妹みたいなゴージャスな美女ですね。生まれ変わったらあんな風になりたい! 岩谷さんのアバターはどんな感じでしたっけ。

岩谷軍師みたいなハッカー系のキャラです。今だったらもうちょっと違う設定にしたかもしれないんですけど。

三浦岩谷さんはそういう頭脳派な設定、向いてる気がします。

岩谷確かに、アバターの設定を決める時、将棋が好きだからっていうのはありましたね(笑)。三段持ってるので。

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岩谷翔吾、藤井聡太を熱く語る。

三浦三段って、めっちゃ強いですよね!?

岩谷正直めっちゃ強いです!

三浦以前、企画で渡辺明名人と対局されて勝ったでしょう。あの番組を拝見して、本当にすごいと思いました。飛車と角の二枚落ちであっても、普通は渡辺名人に勝てないですよ。

岩谷あの藤井聡太さんも、渡辺名人には負けちゃいましたからね。

三浦あの時、渡辺名人も仰ってましたが、将棋の解説とか、棋士の方にインタビューしてノンフィクションを書くとか、岩谷さん、そういうお仕事もなさったらいいのに。将棋の記者って、ちゃんと将棋が指せる人、棋譜が読める人じゃないとできないから、奨励会を目指してた方が、専門誌の記者になってたりしますよね。岩谷さんも、将棋の専門誌で連載を持ってはいかがでしょう。

岩谷実は、藤井聡太さんに一度お会いしてみたいんですよ。年齢的にも自分に近いし。どんな人なんだろうって。

三浦それはいいですね! 鉄道好きな方だとは聞きますが、それ以外の情報はあまり伝わってきていない気がするし。

岩谷将棋以外の側面もきっとあるはずで、そこがすごく知りたいです。

三浦まさか、本当に四六時中、将棋のことばかり考えてるのかな?

岩谷それっぽくもある。だからこそ、いつもいろんな想像しちゃうんですよね。すごく仲良くなって、一緒に飲みにいけるぐらいになったらどんな風だろう……とか。

三浦ちょっとそれもう、岩谷さんの妄想小説が始まってしまってますね(笑)。

岩谷一種の創作意欲をかき立てられるので(笑)。

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三浦そうですよね。「この人はどんな人なんだろう? 普段何してるのかな?」って想像させるのが、スターの証だと思います。私も昔、高倉健さんの日常をすっごい妄想して「これは原稿用紙200枚ぐらい軽く書けちゃうぞ……?」ってなったことありますもん(笑)。

岩谷藤井聡太さんの場合は、まだ本当に若いっていうのがポイントだと思っていて! あれだけの実績があって、地位もお金も名誉も手にした方だから、仮に明日「将棋をやめます」ってなっても、きっと困らないんだろうなと。

三浦それこそ、プロをやめたとしても、藤井さんに教えてもらいたいファンはいくらでもいますからね。うん、だんだん岩谷さんが藤井聡太さんの保護者目線になってきていて謎すぎる(笑)。やっぱり岩谷さんは発想が面白くて、小説を書くのに向いてらっしゃいますね。

岩谷もし本当にご縁があったら、藤井聡太さんには一度体育会系の雰囲気に触れてもらいたいなぁ。筋トレで男らしさを知るとか。

三浦将棋に筋トレはいらない気がするけど(笑)。まあ、対局だって長時間座り続けるから、体力勝負なところは絶対あるはずで、そういう意味では筋トレやった方がいいのかも?

岩谷脳フル回転させてるから、きっと疲れるでしょうしね。ちなみにしをんさんは、執筆中に脳をフル回転させてるとお腹がすきますか?

三浦私はそれ関係なくいつでも食欲がすごいですから。でも確かに、集中して書いていると、普段の空腹感とはちょっと違って、エネルギーが枯渇した! っていう感じはあります。

岩谷運動してるのと同じぐらい、カロリーを使ってるんじゃないですか?

三浦それは同じじゃないよ! 同じじゃないから、エネルギー枯渇したと思ってごはんを食べて、この体型になってるわけで。そういう意味では、岩谷さんや橘ケンチさんは無敵ですよね。ちゃんと体も鍛えつつ、小説も書けちゃう。岩谷さんは朗読劇の脚本をお書きになったり、ブックレビューを書いたりしてくださるし、ケンチさんも小説を書いていらっしゃる。おふたりの活動を見ることで、小説が身近になって、自分も読もう、書こうと思ってくださる方はきっと増えると思うんですよ。岩谷さんたちが小説について語ったり、実際に執筆してくださるのって、すごくありがたいことだなと感じています。

岩谷僕の活動を通して、少しでも「小説」への間口を広げたいと思います。

三浦その役割、すごく果たされてますよ! ブックレビュー連載の「岩谷文庫」は、本当に毎回面白かったし、連載が終わったのはさびしいですが、また新しい展開もあるということで楽しみにしています。

岩谷今度やらせてもらう『青春と読書』の連載は、たぶん本当に本好きな人に向けたものになると思うので、こういう対談などを通して、「小説への間口を広げる」という道筋も、ちゃんとひとつ持っておきたいなと思うんですよね。

三浦岩谷さんのファンの方にはお若い方も多くて、それこそ中学生も結構いらっしゃいますよね。それぐらいの年齢の方だと、確かにまだガッツリ小説を読むのは……ってことがあるかもしれないから、インタビューや「岩谷文庫」みたいなご活動を通して、岩谷さんが読書の道案内をして下さるのはとても心強いことですよね。あと、やっぱり将棋界の取材活動もぜひ実現していただければと! 将棋の世界って素人には仕組みもよく分からないから、気になります。タイトル戦に勝てば賞金がすごいっていう話は聞きますけど、連盟内でやってる順位戦とか、どうやって運営されてるんだろう? って思ったりします。

岩谷確かにいろいろありそうですよね。

三浦今は将棋もAIを使って研究するっていうじゃないですか。あれってどういうことなんですか? AIに対局の流れをシミュレーションしてもらうってこと?

岩谷AIって狂いがないので、膨大なデータをもとにして、常に「その時考えられる最善の手」を指してくるんです。だからこそ、逆にAIが指す手と技法を真似たりします。AIが最初に矢倉囲いを組むなら、自分も矢倉囲いを組んでみようとか。

三浦AIが指すいい手を参考に、あれこれ試してみるわけですね。AIがゆらいだぞ、と見えることもあるんですか?

岩谷藤井さんがすごいのは、AIに対して、僕らはさらにいい「100点の手」を指そうと頑張るんですけど、彼はあえて10点の悪い手を指すんですよ。すると、「え、想像と違うぞ。この手順だったら絶対こっちへ来るはずなのに!」って、AIがびっくりして、そのブレた瞬間に指しに行く。藤井さんの頭脳は、AIをも騙すんです。

三浦へえー! これはますます岩谷さんと藤井さんの対談が見たくなってきました。藤井さんとの対面、実現してほしいですね。将棋連盟のみなさま、岩谷さんは観戦記を書くみたいなお仕事もばっちりできる方なので、お待ちしております! 勝手にマネージャーさんみたいになった(笑)。

岩谷それは本当に挑戦してみたいですね。しをんさん、いつか僕が藤井聡太さんにインタビューしてても、笑わないでくださいね(笑)。

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