第207回コバルト短編小説新人賞の選考をもって、選者を退任することにいたしました。
十四年間、本当にどうもありがとうございました。
二カ月に一度、みなさまが投稿してくださった作品を拝読するのはとても楽しく、毎回、作品に籠もった熱い思いに胸打たれてきました。編集部のみなさんと最終候補作について議論することを通し、私自身も仕事への姿勢を省みたり、どういうふうに小説を書けばいいのかなと改めて考えてみたりと、たくさん勉強させていただきました。
小説への愛にあふれたコバルト/オレンジ文庫の読者のみなさま、編集部のみなさまとともに、投稿していただいた作品と真剣に向きあうことができたのは、とても幸せな経験でした。改めまして、投稿してくださったみなさま、コバルト/オレンジ文庫の読者のみなさま、編集部のみなさまに、心から御礼申しあげます。
ずっとずっと短編小説新人賞にかかわらせていただきたい気持ちはやまやまだったのですが、数年まえから、「いくらなんでも、長くやりすぎかな……。なるべく客観的に選考をと努めてきたつもりだけど、どうしても小説に対する個人的な『好み』ってあるし、私では見逃してしまう作品もあるかもしれない。新鮮な風が吹きこむ妨げとなってはいけないな」という心配もきざしてきて、編集部のみなさまと諸々相談したうえで、このタイミングで退任させていただくことにした次第です。
「おめえの読みはいつも的はずれなんだよ!」とお怒りのかたもいらっしゃったかと思います。すみません。コバルト短編小説新人賞は、もちろんひきつづき作品を募集中ですので、今後も熱き投稿、熱き応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします!
ノベル大賞の選考は、これからも精一杯努めさせていただく所存です。長編のご応募、お待ちしております!
そうだ、「WEBマガジンコバルト」で連載していた、「小説を書くためのプチアドバイス」コーナーが、『マナーはいらない 小説の書きかた講座』というタイトルで、この秋に本になります。短編小説新人賞の選考を通して、さまざまな刺激をいただき、小説について考えてみたあれこれをぶちこんだ一冊です(書き下ろしもあるよ)。よろしかったら、お手に取ってみてください。みなさまが小説をお書きになる際に、ちょっとでもご参考になれば幸いです。現在(2020年9月4日時点)、ほんの一部ですが、「WEBマガジンコバルト」で連載バックナンバーをお読みいただけます。
いきなり宣伝を混入させてしまい、失礼いたしました。私にとっては、短編小説新人賞への十四年間の思いの結晶ともいえる一冊なので、つい……。
とにかく、「楽しく刺激的で胸熱な十四年間」だった。短編小説新人賞の選考にあたらせていただいた時間は、この一言に尽きます。みなさまのおかげです。本当にどうもありがとうございました。
老兵はただ去りゆくのみ……。去らんけどな。短編小説新人賞のますますのご発展を陰ながら全力祈願しているし、まだまだノベル大賞の選考に全力注入するつもりだし、自分でもぼちぼち小説やエッセイを書いていくけどな(そこはぼちぼちなのか)。
ではでは、またどこかでお目にかかれますように。みなさまのご健勝とご多幸を心からお祈り申しあげております。
どうもありがとうございました。
三浦しをん
三浦しをんが的確かつ楽しく伝える、小説の書きかた講座。
伝説のWeb連載「小説を書くためのプチアドバイス」が、書きおろしやコラムを加え、
『マナーはいらない 小説の書きかた講座』
として、ついに単行本化……!
長編・短編を問わず、小説を「書く人」「書きたい人」へ。人称、構成、推敲など基本のキから、タイトルのつけ方や取材方法まで、本書タイトルにあやかって「コース仕立て」でお届けする大充実の全二十四皿。あの作品の誕生秘話や、手書き構想メモを初公開。もちろん(某きらめく一族への)爆笑激愛こぼれ話も満載で、全・三浦しをんファン必読の書……!
作家・三浦しをんが「小説」を真正面から考えた―。
「小説を書くのは自由な行い」だがしかし、
「ここを踏まえると、もっと自由に文章で表現できるようになるかもだぜ!」