かける
雅な公達に十二単の姫君、女房たち……誰もが一度は憧れる「平安時代」。WebマガジンCobaltで、2018年初夏に作品を募集した「平安小説賞」では「平安」をテーマにした小説に加え、氷室冴子先生の名作『なんて素敵にジャパネスク』のトリビュート作品も募集しました。締め切りまでに集まった70本の力作から、見事受賞した作品&選評、および惜しくも受賞を逃した「あとひと息の作品」についてのコメントを発表いたします!
選者 コバルト編集部
「平安」をテーマにした小説&氷室冴子『なんて素敵にジャパネスク』の二次創作を!ということで募集させていただいた今回の賞ですが、やはりおそれおおいと思われたのか、「ジャパネスク」よりもオリジナル作品のご応募が多かったです。実在のキャラや事件を取り入れたものから、まったく架空の題材、またはタイムスリップのようなSFなど、様々な「平安」がありました。文体や用語をあえて現代風にアレンジしたものなども、作品内できちんと統一して、違和感がなければ「平安小説」という型にとらわれずに楽しめるのだと改めて思いました。ご応募、ありがとうございました。
選評
実在の人物である源有仁と藤原忠通が、実際にこんな関係だったかはわからないわけですが、とても雰囲気のある感じで描かれています。古着の束帯から立ちのぼる物語も、かわいらしくてせつない。縫殿寮などの説明も必要なぶんだけ入れてあり、短い枚数の小説ですが、いい意味での余白もあります。有仁と忠通の物語がまたあれば、ぜひ読みたいと思わせる作品でした。
『 ポイズンムーン 』
淀川 仁
選評
菅原道真の祟りというメジャーな題材ですが、オリジナルのキャラが生き生きしてて、ミステリー的な展開としても楽しめました。「月泣草」というアイテムの使い方もうまい。枚数のわりに、やや詰め込みすぎたためか、冒頭などがわかりにくい印象でしたが、猿の太郎もすごく可愛くて、読後感も良かったです。細かいことですが、セリフのなかの「。」はなくて大丈夫ですよ!
『 想夫恋 』
皇 里乃
選評
主人公の蛍が、幼なじみの雅高ではなくて年上の宮様に片思い…という設定は、定番な展開ですが初々しくて好感が持てます。初恋は叶わず、でも将来的には雅高といい感じになるのかなと思わせるラストもうれしい。あと少し、心情に踏み込む何かがほしい印象でした。
『 鞠と琴 』
木津川 結
選評
慕っていたおねえさまが、入内によって変わってしまった――やるせないお話で、平安ものならではの展開をわかりやすく読ませます。ただ、感情移入して読んだからこそ、後に入内した主人公の意趣返し的な行動について、その程度でいいのか!? と思ってしまいました。