かける

瀬川貴次と編集Hが独断と偏見で決めるホラー小説短編賞

WebマガジンCobaltで3回目となるホラー小説短編賞は、作家・瀬川貴次と、コバルト編集部随一のホラー好き・編集Hがタッグを組んで開催。「コバルトでホラーといえばやっぱりこの人!」というイメージの大きい瀬川貴次氏に、ホラー愛溢れる自信作をぶつけたい!とばかりに集まった投稿作品はなんと158本。投稿者に負けじと、ホラーへの熱いこだわりをぶつけ合った瀬川貴次と編集Hが選んだ作品は…? 選評コメントともに、ぜひお楽しみください!

入選

もう一歩の作品

  • 『ママ友の豊子さん』夢乃ひいろ

  • 『おばあさんが転んだ』朝比奈萌子

  • 『はらわたどろどろ』元町月一

瀬川貴次選評

投稿者時代、思っていたのは「頼むから、どこがマズかったのか言ってくれ!」だった。というわけで、それなりに気を遣いつつ言わせていただくと──

 『はらわたどろどろ』は描写力に優れ、書きなれた感があった。が、「芸術に造詣の深い〈魔性の女〉との出逢い」をやりたがる書き手は存外に多く、残念ながら独自性を打ち出すまでには至っていなかった。ラストも予定調和的で、きれいにまとまりすぎている。プラスアルファな何かが欲しい。タイトルが雰囲気に合っていないので一考を。

 『おばあさんが転んだ』は不穏な雰囲気がよく出ていた。が、ちぐはぐな点がちらほら見受けられ、何かのミスリードを誘っているのかなと疑ったけれど、どうもそうでもなかったらしく、読後感が中途半端なものになった。狙っていなかったとしたら、普通の心霊体験談。狙っていたのなら、もっと大胆にやってもよかったのではないかと。

 『ママ友の豊子さん』は文章にもストーリーにも破綻がなく、オチもよかった。が、伏線の張りようや主人公の動きがやや不自然で、「作者が作っている感」があり、〈仕掛け〉から読者の関心をそらそうと努力したのが裏目に出た感じ。結果、意外性が薄まり、もったいなかった。工夫を凝らす努力の姿勢自体は良いことなので、さらなる切磋琢磨を。

 『幽霊感知アプリ』はここはもっとあっさり、逆にここはもっとしっかり描写しないとといった、アンバランスさがめだった。正直、技術面はまだまだだが、読み手を驚かせよう、楽しませようというサービス精神にあふれていて面白かった。読んで書いての研鑽を重ねれば技術は向上するハズなので、いまの勢いを持続させつつ、文筋力を鍛えてほしい。

 以上を踏まえ、純粋に楽しませてくれたという点で、今後の期待をこめて『幽霊感知アプリ』をわたしは推したい。

編集H選評

はらわたどろどろ』は文章もうまく、物語のまとう雰囲気もとても上品に感じました。ファム・ファタル物として卒なくまとまっています。ただ、主人公の安登川が西牟禮玲子に惹かれ、離れられない「何か」をもっと描いてほしいという印象もありました。安登川がもっと生身に感じられる背景もあると◎。

おばあさんが転んだ』は前半の雰囲気作りはとてもうまくいっているように思いました。どうなるどうなる? とぐいぐい読まされたのですが、後半に入ってからテンションが下がってしまったように思います。全体的に整合性のない部分もありますので、もうちょっと練り込めば化けそうという期待感は大でした。

ママ友の豊子さん』は、本当に気持ち悪く素晴らしいアイディアでした。育児におかしなほど無関心な夫という伏線もお見事。ただ、肝心の豊子さんのキャラクター設定が定まり切っていないのが残念。過去に殺人を犯していたことはいいのですが、どういうタイミングや理由で殺人にはしるのか。そういった部分の説得力不足が、ラストの危機感が読者と共有しにくくさせていたのかもしれません。

幽霊感知アプリ』は、何よりも勢いを感じました。いろいろと辻褄の合わない部分もあるし、無理な展開もありました。けれどこの「化け物」を書きたいという意欲が、それらを補って余りあったように思います。また、アイディアに既視感がなかったことも◎。

関連サイト

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