募集を始めたときは真夏でも、当たり前だけど選考の時点では寒くなってるわけで、なんでこんなお題を出したんだ……と己を恨みながら74本ものみなさまの力作を拝読する11月。熱燗の美味しい季節ですね。
『氷とみらい館へようこそ!』
五色ひいらぎ
少年とAIの心の交流を描いた近未来SFです。……ていうかそれしか言えないのがもどかしいんですが! ともかくみなさま読んでみてください。こういう読後感大好きです。しいて言えばAIの口調が固いのと、氷河期の説明がやや過剰なので読みにくく、もう少し冬真くんとの会話に重点を置いたほうがよいかなと思いましたが、そんなことでこの作品の面白さが薄れるものでもないです。
『凍星アイスクリーム』
藤田風々
氷河期(氷期)に入ったら日常生活はどうなるかというIFを、作品の中で細部に至るまで丁寧に描いており、「極寒でアイスクリーム食べるならこうだよな」「氷期で季節感が失われたらこうするよな」といった目配りが絶妙でした。その中で展開する主人公と氷河くんの淡い恋にキュンキュンします。「氷河期」というお題に真っ向から取り組んだうえで自分のものにする力量が素晴らしいです。アイスクリーム食べたい。
『氷河期を制した者』宇山マコ/『ザントマン』エビハラ/『ひと夏分の氷河期』片桐冬野/『凍えるレッドオーシャン』鹿森弓月/『フィギュアスケート氷河期世代、ガチ氷河期に転移する』白瀬青/『最後のマンモスと、彼女について』たおず/『凍土に夢見る』高文緒/『凍りの国のさいごの話』遠井音/『星渡りの匣』ななせハチミツ/『就職氷河期シンドローム』花千世子/『こやじ旅館が寒い理由』三井一二三