かける
既視感ありまくりの「超ベタベタ」なSF設定をお題に作品を募集した『編集Hが独断と偏見で選ぶ ベタだって好きなんだもん!
小説賞』には、50作品の応募が集まりました。SFマニアの編集Hをうならせた受賞作は? お待ちかねの選考結果を発表します!
総評 / 編集H
数多くの作品が集まり、同じ素材をどう料理したのかを読み比べる選考は、とても楽しい時間でした。「抽選」の前だったり直後だったり、場合によってはもう移住星に着いてからの話だったり。テイストにも真正面から挑んだSF、ぶっ飛んだアイディアで驚かせてくれたコメディ、なかにはホラーテイストに仕上げた作品もありました。参加してくださった皆様に感謝を。
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【舞台設定】
2117年。100年後の未来の地球・日本。
巨大隕石が激突することが分かっており、生態サイクル循環システムを搭載した巨大宇宙船団での外宇宙への亡命計画が進む。
目的地は、地球から14光年先にある人類の居住が可能だと有力視される惑星「ケプラー452b」。
新航法を駆使しても到着まで120年。コールド・スリープ技術は未完成なため、その間、人類は宇宙船の中で世代を紡いでいく。
日本に割り当てられた、一般人搭乗可能数は200万人。
搭乗者は抽選で選ばれる。
片方だけが搭乗者に選ばれてしまった高校生の恋人同士は――?
選評
舞台は宇宙船の中。地球脱出第二世代を主人公とした力作でした。詳細部分では多少事実と逸脱した部分もありましたが、それは末節。アイディア自体は手堅いものの、淡々とした語り口と描写から、最後にどこか不気味にも思える後味が秀逸でした。
『宇宙で一番好きなんだ』 鎌田沙織
いろいろすっとばして痛快なコメディ作品。彼女がスーパー超人で隕石をぶっ飛ばすという荒唐無稽さを、力技で納得させる筆力は秀逸。
『ボイス・レガシー』 紫藤市
地球に残した彼女が、実は宇宙人だったとは…。前半と後半でまったく違った印象を与える作品。素直でない展開に、著者の作家性を感じました。
『ラストクリスマス』 城石善浩
主役の二人の物語も楽しいが、何より400字詰めで30枚弱の中に、地球脱出計画について地球規模でのシミュレーションをしているのが骨太感があり良かった。
『到着時刻を過ぎている』 月原たぬき
いったい何が起きているのか。主人公たちはどうなるのか。SFのはずが、まさかの不条理ホラーへと様変わりする展開に驚かされました。
『ほしとつき』 花千世子
隕石が実は、荒廃した母星を捨てたケプラー人の偽装した難民宇宙船だったいうアイディアは素晴らしい! このアイディアは、今回唯一でした。