かける

短編小説新人賞

選評付き 2018年度

年間最優秀賞発表!

選評

《六華の証》

  • 編集H

    主人公のお母さんが「実は雪女だった」というお話ですね。その突拍子のなさが良かった。短編では、舞台が現代だと、どうしても日常系の話にしてしまいがちですが、この作品の設定にはインパクトがありました。

  • 三浦

    一年後にお母さんが亡くなることはもう決定しているという、すごく切ない設定でもありましたね。

  • 編集A

    雪女のままなら長生きできたのに、お父さんとの愛を貫くため、短命になるのを承知で人間になったんですよね。

  • 三浦

    お父さんとお母さんの、悲しくも美しい恋物語の部分に、作者がすごく思い入れていることが作品から伝わってきました。書き手の情熱が感じられるところが、とてもよかったと思います。

  • 編集I

    ただ、命のリミットが決まっているわりに、この家族の最後の日々の過ごし方は、なんだかぼんやりしているように感じられる。その辺りをもう少し印象的に描けていたら、さらに心に沁みる物語になっただろうと思います。

《告白は勇気がいるから》

  • 編集D

    大きな仕掛けのある作品でしたね。よく作り込まれていたと思います。

  • 編集I

    ただ、伏線の張り方にはもうひと工夫欲しかった。真相を見抜いてしまう読者もそれなりにいたのではと思えます。でも、とても読後感のいい作品でしたね。

  • 編集D

    主人公も、主人公の好きな男の子も死んでしまうというのに、読後感のいい話に仕上げているのはすごいと思います。

  • 編集I

    キャラクターがとても素敵でした。自分の死を隠してまで有田君を一途に思いやる主人公もいいし、恋心を打ち明けられないまま、「俺のことをもっとほめろよ」みたいに言ったりする有田君も、すごくいじらしい。

  • 三浦

    主人公と有田君の可愛らしさや健気さが、とてもよく出ていましたよね。びっくりするような仕掛けが用意されていますが、この作品はただ読者を驚かせようとしているのではない。登場人物たちの気持ちがしっかりと物語の中に織り込まれていて、それぞれが相手を深く想っていることがすごく伝わってきます。すべての真相が明かされたときには、切なくて胸がキュンとしますよね。とてもうまいし、素敵な作品だったと思います。

《二位の君》

  • 編集A

    これはもう、すべてが絶妙(笑)。

  • 三浦

    語りの可笑しさとか、エピソードの面白さとか、ほんとに素晴らしいですよね。自分が宿題をしたノートがクラス中を回ったあげく、最後に「あ、君も写す?」って言われるとか。もう、爆笑しまくりました。

  • 編集I

    主人公のキャラクターは、本当に面白かったです。意識や行動がユニークな上に、描写の塩梅が絶妙で、とても好感を持てますよね。勉強以外は冴えない女の子なんだけど、変に卑屈になっていないところも好印象でした。内村君のキャラクターもすごくいい。イケメンで天然で、でも水面下ではがんばってたりもする。とても気持ちのいい男の子で、非常に魅力的でした。

  • 編集A

    二位同士の二人が、なかなか手が届きそうにない一位に向かって、それでもめげずにがんばっている様子を、明るく楽しく描けていましたよね。二人の距離感がこれまた絶妙だし、青春感のある作品になっているのもよかった。爽やかで、面白くて、でもちょっぴり切なさも滲んでいて。本当に大好きな作品です。

  • 編集D

    短編として、非常によくできた作品でしたね。ただ、このテイストのままで300枚とかの話を書くのは、ちょっと難しいのではと思います。そこを踏まえた上で、ぜひ長編にも挑戦してみてほしいですね。

《あの日もう一度》

  • 編集A

    いじめの話ですね。女の子たちがすごく楽しそうにいじめをしている無邪気な残酷さとか、そういうことに全く気づけない真っ当な男の子の鈍感ぶりとか、人物のディテールの描き方がとても上手いなと思いました。

  • 編集I

    13年にもわたって後悔を抱え続けているなんて、主人公の辛さを想像すると、読んでいて胸が苦しくなりました。ラストで救われる話かと思っていたら、そうではなかった。ということは、主人公は重い十字架を背負ったまま、これからも苦しみ続けるということですね。

  • 三浦

    はい。永遠に取り返しのつかないことって、現実にもありますから、これはとても切実な物語だなと思いました。救いがないと言えば救いがない話なのですが、主人公にとって、そしてもしかしたら作者にとっても、「この話でしか表現できないんだ」という強い思いがあるのだと感じられました。

  • 編集D

    救いがない状態でどう生きるかということが、この作者にとって、とても重要なテーマなのだろうと思います。ただ、今回は短編だからよかったのですが、こういう重いテーマを重いまま長編で書いたとしたら、読者は苦しくて読めなくなってしまう気がする。

  • 三浦

    そうですね。それにそういう書き方では、書き手だって辛くて消耗してしまいます。枚数を長くする場合は、ストーリーや人物造形を工夫するなどして、読者への話の見せ方を多少考える必要があるとは思います。書き手の「これを書きたいんだ!」という芯となる部分は大切にしつつも、枚数に応じて、話をどう料理して読者に提示するかというところを、今後は試行錯誤してみてほしいですね。でも、書きたい「核」となるものがあるというのは、とても大きな強みです。今作はとても密度の高い作品で、読者の胸に迫るものがありました。

《春の娘》

  • 三浦

    人間の醜さが描き出されている、どちらかといえば嫌な話なんだけど、そこがすごく面白くて、読みごたえがありましたね。作品に華やぎがあるのも良かったです。

  • 編集B

    公太子のお妃選びという華やかな設定は、魅力的でしたね。貧しい農民でも、美しくさえあれば、一発逆転で未来の王妃になれる可能性があるなんて。

  • 編集I

    ただ、お妃候補を庶民が選ぶとか、お妃に決まると、寒村にある実家が急に一軒だけきらびやかになるとか、引っかかる点もいろいろありました。レベルの高い作品だけに、すごくもったいないと感じます。

  • 編集D

    でも、具体的な細かい描写を重ねることで、状況や心情を表現しているのは本当にうまかったと思います。作品世界の空気感がありありと伝わってくるように描けていましたよね。

  • 編集B

    視野狭窄傾向のある登場人物たちを描いているのですが、作者は視野狭窄ではないということが、読んでいてよくわかります。書き手が冷静に物語の手綱を取れているのは良かった。

  • 三浦

    登場人物の心理がとてもよく書けていましたよね。それぞれの人物の心の揺らぎを、すごくうまく描き出せていた。内面の醜い思いも含めて、どの人の気持ちも非常に「わかるな」と思えました。

  • 編集C

    物語を創ろうという意識が、書き手にしっかりとあるのが良かったですね。

《秘密》

  • 編集E

    「リップクリームを塗る」。ただそれだけのことを、こうして一つの物語に仕立て上げるなんて、ある意味ものすごく画期的ですよね。こんな投稿作、読んだことがないです。しかも、微妙にエロい感じが漂っていて、そこもすごくよかった。

  • 編集D

    主人公たちは、恋愛関係じゃないんですよね。たぶん今後も、そういう関係にはならないように思う。なのに、雰囲気は妙にエロティック。

  • 三浦

    この「二人の特別な関係」というのが、とてもいいですよね。

  • 編集B

    共犯めいた特殊な関係だからこそ、独特のエロさが生じているんでしょうね。

  • 編集A

    ごめんなさいね、やたら「エロい」とばかり言っちゃって(笑)。でもこれ、誉め言葉なんです。こういう何とも言い難いエロスが立ち上ってくる作品というのは、書けと言われて書けるものではない。期せずしてこういう作品ができあがったということは、書き手の内側に、何か迸るものがあったということだと思う。そしてそれは、小説を書くときに、とても大きな強みとなるものだと思います。

  • 編集E

    書き手の内側からあふれ出ているものを強く感じますよね。そして、その迸りこそがすごく魅力的でした。

  • 三浦

    書き進むほどに、作者自身の気持ちもどんどん高まって、のめり込んでいってますよね。文章がより静かに熱く燃え上がっていく感じが、すごくよかった。濃密な「二人の世界」が、とても美しく歌い上げられていました。同時に、小説としてちゃんと整ってもいるんですよね。

  • 編集D

    最後のオチがちゃんと効いています。

  • 三浦

    強い陶酔感のある話なのに、作者は理性の手綱もきちんと握っている。とても魅力的な作品に仕上がっていたと思います。

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