かける

短編小説新人賞

選評付き 2022年度

年間最優秀賞発表!

選評

『真夏のキョウキ』陶山ロシ

  • 編集B

    これはもう、とにかく面白かったです。

  • 編集D

    主人公が、自分の頭をお盆でボコボコにするシーン、忘れられません。

  • 編集A

    モナミちゃんが、「アウトレット?」って鼻で笑うところも。

  • 編集B

    モナミちゃんは、突き抜けたキャラでしたね。お客のおばちゃんたちの会話も絶妙でした。まだ若いコックの田中くんが妙に世慣れて余裕があるのも、かっこよくて素敵だった。

  • 青木

    だからより一層、主人公の人の良さや不器用さが際立ちますよね。読者は主人公の世渡り下手や運の無さに同情しつつも、エンタメと割り切って、楽しんで読める。

  • 編集C

    展開にメリハリがあるのもよかったです。クライマックスの部分をハチャメチャなまでに盛り上げていたのも、短編にふさわしい思いきりの良さだったと思います。

  • 青木

    ラストの締めくくりは若干甘めかなという気はするのですが、このあたりは各人の好みによりけりでしょうかね。

  • 編集B

    キャラクターにもストーリーにもオリジナリティがありました。登場人物たちが動き回って、ぐいぐいと話が展開されていく。書き手のセンスの良さが光る作品に仕上がっていたと思います。受賞後第一作にも、期待したいですね。

『グレーテルの手紙』吉乃小麦子

  • 編集E

    これはもう設定の勝利というか、「有名な物語の裏にある、隠れた真相を明かします」というストーリーに、とても惹きつけられました。

  • 編集B

    手紙形式の作品にして、一人称で読者に語りかけているのが、すごく効果を上げていましたよね。語り口も終始一貫して、作品世界を上手に維持していました。

  • 青木

    今はもうおばあちゃんになった「グレーテル」の人物像に、納得感があるのもよかったです。根性を据えて人生を生き抜いてきた人間の深みが感じられましたよね。

  • 編集C

    期待を裏切らない、「残酷な真相」がちゃんと描けていたのもよかったです。

  • 編集A

    残酷であると同時に、とても切ない話でもありましたよね。魔女の娘の悲しく美しい最後は、今も忘れられないです。

  • 編集D

    欲を言えば、ラストにもうひとひねりあると、さらに良かったですね。でも、テーマがちゃんとある、一本芯の通った物語になっていました。

  • 編集B

    完成度という点では、群を抜く出来栄えだったと思います。ただ、有名なグリム童話が基礎の部分にあるというのは、魅力であると同時に、評価を迷うところでもありました。

  • 編集E

    そもそも『ヘンゼルとグレーテル』自体が、引きのある魅力的な物語ですからね。それを下敷きにしているということは、最初から一段下駄を履いているともいえる。その分、有利だったのは否めないですね。ただ、そのテーマ選びのセンスは評価に値しますし、それを差し引いても、文章力や構成力は高いなと思います。

  • 青木

    描写や文章の運びはとてもうまかったですし、筆力は十分にお持ちだなと感じました。次はぜひ、完全オリジナルの作品を読ませていただきたいですね。

『宇宙とビスケット』花園メアリー

  • 編集I

    とてもうまくまとまっている話でした。語り口が自然で、読みやすかった。

  • 青木

    「宇宙」と「ビスケット」を結びつけるという着眼点がよかったですね。要素の扱い方にはちょっと甘いところもあったのですが、ポエミーで温かい魅力的な作品世界を描き出せていました。

  • 編集A

    非常に好感度の高い作品でした。さりげなくも深い姉弟愛が描かれていて、胸にじんと来ますよね。なんでもないようなエピソードの中にも、二人が強く通じ合っていることが感じられて、とてもよかった。

  • 編集G

    ただ、ラストが狂気オチみたいになってしまっているのは残念でした。ここで急に不穏さが出て、作品の解釈に疑問の余地が生じてしまった。

  • 編集A

    うっかり筆が滑ってしまったのかなとは思いますが、せっかく、切なさとロマンが同居する物語を作れていたのに、もったいなかったです。

  • 編集C

    弟くんは実は生きていて、夢だった宇宙旅行を楽しんでいる。でもそれは、二人だけの秘密。そういう余韻のある結末でもよかったですね。

  • 青木

    さらにキュンとする話になったと思います。この姉と弟の関係性がとても素敵なので、「こんな展開にすれば」「こんなエピソードを加えたら」みたいな意見が、たくさん出ましたね。

  • 編集E

    多くの読者が、つい脳内補完をしながら読んでしまう作品でした。読み手に感情移入させる話を書けるというのは、すごいことです。新たな作品をぜひ読ませていただきたいですね。

『ユリの咲く沼』古林りゅうき

  • 編集I

    長い年月の間にこじれてしまった兄弟愛のお話です。自分より能力が高く社会的成功を収めている弟から距離を置いている兄と、幼い頃からずっと変わらずに兄を慕っている弟。この設定自体にもう、ドラマを感じます。

  • 編集E

    突然行方不明になった弟を、お兄さんは仕事以外のすべての時間を費やして探し回ります。それも何年も。本気で嫌いなわけじゃないんですよね。自分の人生が上手くいかなくて、妬んでしまっただけで。

  • 青木

    ついに弟を見つけるクライマックスシーンは、とても妖しく美しく、ゾッとさせられます。ホラー風味の作品ですが、心情面もちゃんと描けていて、すごく引き込まれて読めました。

  • 編集C

    ただ、「登山」を作品の重要な要素に据えているにも関わらず、そこの描き方が甘くて、読んでいて引っかかってしまいました。主人公と弟の奥さんとの関係性もなんだか不自然で、読者に妙な勘ぐりの余地を与えてしまう。

  • 編集E

    重要な「指輪」というアイテムに関しても、いろいろ疑問点が指摘されていましたよね。描写や細部の詰めに関しては、もう一歩だったかなと思います。

  • 編集H

    でも、とても心に残る話でした。作品そのものは、私はすごく好きです。

  • 編集I

    私もです。兄と弟、どちらの心情を想像してみても、非常に切ない。いつの間にかすれ違ってしまっただけで、この兄弟の間には、確かに情愛がありました。最後の最後まで兄を慕い続けて冥界に引き込まれていった弟と、何年も探し回ってようやく変わり果てた弟を見つけた兄の、ついに生きて通じ合うことのできなかった人生を思うと、胸が締めつけられます。

  • 編集C

    読者のハートを震わせる作品が書けているのは素晴らしかったですね。その魅力をより輝かせるためにも、細部をもう少し丁寧に整えてほしいです。下調べをしたり描写の解像度をアップさせるだけでも、作品全体の完成度は格段に高まると思います。ぜひがんばってみてほしいですね。

『宿直心中』深夏桃

  • 編集F

    人生に疲れた中年男と、彼に恋する繊細な青年という取り合わせが、なんともよかったです。淡い空気感がとても魅力的でした。

  • 編集B

    話の発想が一風変わっていましたよね。片思いしている相手から、「君も自殺願望あるの? じゃあ一緒に死ぬ?」って誘われて、(やった、心中できる!)って思って、「喜んで!」みたいな。

  • 編集F

    テンションの低い主人公なんだけど、迷わず心中できるほど、田宮さんのことが好きなんですよね。

  • 編集D

    ただ、その恋心が、あまり実感として伝わってこない。そこはもう少し、読者の胸に届く描写がほしかったです。

  • 編集A

    話が妙な方向に転がっていくのも、引っかかりました。突然、超常現象が入り込んできたり。

  • 編集B

    展開がいろいろ唐突で、ちょっと読者がついていきにくいところがありました。

  • 編集E

    結末の付け方も、かなり不明瞭でしたね。真相がどうだったのか、結局よく分からない。読み終わってもすっきりしない感じがありました。せっかくとても企みのあるストーリー展開を用意していたのに、提示の仕方がうまくいっていなかった。非常に惜しいなと思います。

  • 青木

    目のつけどころはとても良かったですのにね。限定された空間の中で進行する話になっているのは、すごく面白いなと思いました。

  • 編集F

    萌えの感じられる細かい描写があちこちに見られるのも、魅力的でした。作者の中には、「描きたいもの」が確実にあるんだなと感じられました。次回はぜひ、その秘めた情熱を、思いきって作品上に出してみてほしいですね。

『サンタの願い』櫻井ゆうじ

  • 編集B

    これはもう安定の、ガール・ミーツ・ボーイ作品。安心して楽しく読めました。

  • 編集E

    「ベタだけど、こういうのが読みたかった!」という感じですよね。ちょっと強引な展開になっているところもあるにはあるのですが、純粋なエンタメ作品ってやっぱりいいよねと、改めて思わされました。

  • 青木

    感覚が若干古いところはあって、昭和の少女マンガ的雰囲気が漂っているのですが、私はそこも好きでした。同じように感じる読者は多いのではないでしょうか。

  • 編集B

    私もその一人です。王道作品は多くの人が好きだと思いますが、でもベタならなんでもいいわけではないですから。この作品は、書き方の塩梅がかなりうまくいっていたと思います。作者は、読者の好むツボを心得ている感じですよね。

  • 編集F

    作者自身、こういう話が好きなんでしょうね。自分の萌えを素直に出せているのは、いいなと思います。

  • 青木

    キャラクターも魅力的でしたよね。中でも、主人公のお父さんのかわいらしさは秀逸でした。

  • 編集D

    ただ、ラストはかなり駆け足でした。会話の応酬のまま話が終わるところにも、書き手が力尽きてしまった感がありました。もう少し踏ん張って、この素敵な物語を小説として締めくくってほしかったです。

  • 青木

    でも、作者が心から楽しんで書いていることが伝わってきて、そこはとても良かったと思います。自分の好きな世界を素直に表現できることは大きな才能だと思いますので、今後もぜひ存分に活かしていってほしいですね。

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