編集D
まず、三十枚という限られた枚数の中で、ファンタジー世界を構築している点を評価したいです。被征服民が離散していく話を、短い中でうまくまとめているなと思いました。短編として書かれたファンタジーって、物語の背景がよくわからないことがあったりするのですが、この作品世界にはちゃんと輪郭があるというか、納得感のある話にできていたと思います。アーレスの民は優秀な調薬技術を持っていたのに、征服民に地を追われ、逃げ惑い、その中でせっかくの知識や技術も失われていく。実際の歴史においても、似たようなことは起こっていたはずで、読んでいるとつい、「インディオの文明崩壊も、こんな感じだったのかな……?」などと想像が巡り、すごく楽しかった(笑)。僕はこういう話が大好きなので、とてものめり込んで読めました。イメージを補完しやすい作品ですよね。