編集F
雰囲気の楽しい作品でした。主人公の小泉さんは、クラスメイトのカップルを横から見る立ち位置なんですけど、その一人称の語り口が、ユーモアがあって、なんだかとても面白い。描かれているエピソードもよかったと思います。芥川君とユイちゃんカップルの恋人模様は、読んでいてとても微笑ましかったですね。芥川君は「つきあっていることは隠しておきたい」と思っていて、ユイちゃんのほうは「なんで隠すの? 恋人だってちゃんと言ってよ」と思っている。ユイちゃんは美少女で学園のアイドルなんだけど、「つきあってるって、みんなに言いたい!」のはやっぱり女の子のほうなんですよね。二人の仲を、思いがけず主人公が知るところとなったんだけど、でも芥川君は、もともと「今日、公表しよう」と決心していて、ユイちゃんに手紙まで用意していた。彼のほうでも、ユイちゃんの気持ちをちゃんと考えていたわけです。しかも方法が「手紙」というのが、またいいですよね。「芥川」だけのことはあるというか(笑)。ラストで芥川君が、「どうせ小泉にバレるんだったら、手紙なんか書くことなかったな」みたいなことを言うのに対して、主人公が「そんなことない。芥川君が自分から決心してくれたからこそ、ユイちゃんはすごく喜んでるんだよ」と応じる場面も、すごくよかった。彼らを見つめる主人公がいたからこそ、この恋人たちのエピソードがより素敵に際立ったのだろうと思います。