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二十代半ばの青年、「私」が、中学二年生のときの大晦日の出来事を回想しているお話です。年が明ける真夜中、友人と初詣に来ていた主人公は、何年も前に引っ越していった幼馴染の少女、松原と出会います。彼女に誘われ、二人だけで銚子まで初日の出を見に行くことになった。実は彼女は複雑な家庭事情に悩んでいて、プチ家出中でした。多感な年頃だし、一歩間違えば自殺していたかもしれなかったのですが、主人公に付き合ってもらって初日の出を見られたことで、気持ちが持ち直したらしい。無事に家へと帰って行きました。そして主人公にとっても、それは青春時代を彩る、ほろ苦くも大切な思い出の一つになったわけです。後半では時間が現在に移り、同棲している彼女との絆がさらに一段深まったような、いい雰囲気で話が締めくくられています。前半の中学二年生の「私」と比べると、現在の「私」はちゃんと若い大人の男性へと成長を遂げている。幼馴染の女の子と夜中に電車に乗るだけで内心どぎまぎしていた、あの青臭い少年が、今やこんなに大人になって……と思うと、感慨深いですよね。