編集F
主人公は、雪野という高校二年の女の子です。交通事故に遭ってしまい、植物状態で入院中。雪野本人にはちゃんと意識があり、耳もよく聞こえているのですが、身体は全く動かせず、瞼を開けることすらできません。何の反応も示さずただベッドに寝ているだけなので、医者も家族も、雪野に意識があるとは気づいていない。みんなが「早く目を覚まして」と願ってくれているのがわかるのに、雪野自身にはどうしようもない。そういう状況にいる主人公の気持ちが一人称で描かれている作品です。私を含めほとんどの読者は、植物状態になった経験って、まずないですよね。だから共感しようにも、想像するしかないわけですが、私はこの作品を読んで、主人公の気持ちのありようにとても納得できました。「こういう状況だと、なるほど、こういう気持ちになるのね」と思えて、すごくしっくりきた。意識のある植物状態という、「自分の体の中に閉じ込められている人」の内面が、経験したことのない読者にも、ちゃんと伝わるように描けていたと思います。私は高評価をつけました。