編集H
引っ越しをしたら、いきなりタイムループに巻き込まれてしまった少年のお話です。一人で見知らぬ土地にやって来てから、なぜか九月十日が延々と繰り返される。しかも、そのことに気づいているのは自分だけらしい。翌日には何もかもがリセットされて、また同じ出来事が起こる。何百回繰り返しても抜け出せないループに閉じ込められてしまった主人公は、気持ちがすさんで、暴れ回ります。自暴自棄になって悪行三昧の日々を送るんだけど、やがてそれにも飽きて、徐々に気持ちを前向きに変えていく。周囲に当たり散らして憂さ晴らしするより、笑顔と思いやりの中で暮らす方がよっぽど心地よいということに気づくんですね。少年の内面の変化や成長が、とても自然に描けていました。微笑ましいオチへと物語が終結していて、お話としてもまとまっていたと思います。「同じ日が毎日繰り返される」というタイムループ設定自体はそれほど斬新ではないかもしれないけど、読み終えたとき、素直な感想として、「この作品、とても好きだな」と思えました。