編集A
すごく良い夢を見させてもらった、というのが読後の感想です。作品の8割が瀬美教授の一人語りで締められているのですが、この語りがいいですよね。自分の思い出を語りつつ、目の前の子供に優しく話しかけつつ、合間にはトリビアみたいな蟬の知識が挟まれていて、それも興味深く読める。この先生の、語り口の妙に引き込まれました。とても面白かったです。
この話の主人公は、終盤で大学生になっている女の子のほうだと思うのですが、瀬美先生の一人語りの中に直接は登場してきませんよね。でも、瀬美先生の語りの中には、彼女がどんな応答をしたか、どんな反応を示したかということが合間合間にちゃんと書かれていて、それがすごくいいバランスだったと思います。瀬美先生の目の前にいる子供の存在だとか気配だとかが、文章からちゃんと伝わってきました。瀬美先生の語りは、聞いていると段々心地よくなってくる感じで、非常に好感を持って読むことができました。私はイチ推しにしています。