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選評付き 短編小説新人賞 選評

『ウタキ』

明野 海

  • 編集D

    イチ推しです。

  • 編集A

    面白かった!

  • 編集F

    すごく好きです。

  • 編集E

    私もです。

  • 編集A

    ただし……ですよね。読んだ方はおわかりだと思いますが、これは完成形の「短編」ではない。

  • 編集F

    壮大な物語のダイジェストですよね。

  • 編集A

    いくらなんでも、30枚では無理があります。100枚で書き直してほしい。

  • 編集D

    300枚でもいいです。とにかく、ちゃんと完成したものを読ませてほしい。こんなに面白そうな話なのに、実にもったいないです。

  • 編集F

    私、これを読んで、「シュメール人の話、キター!」と思いました(笑)。

  • 編集D

    僕もです。ほんとに読みたい。早く書いてください(笑)。

  • 編集F

    ただ、章タイトルのつけ方は、改善した方がいいと思います。

  • 編集D

    数字の後に、場面の場所をあらかじめ示しておくというのは、あまりにも安易な方法だと言わざるを得ないですね。

  • 編集A

    まあ、作品全体の情報量が半端ないですから、行数を節約するために仕方なくやったことなのかもしれないですけど、長編に書き直す際には、こういうやり方は改めてほしいです。

  • 編集B

    一行空きが一切ないのも、詰み過ぎで息苦しいですよね。これも行数削減のためなのだろうとは思いますが、もう少しゆとりを持たせてください。

  • 編集D

    ラストになぜか、性同一性障害みたいな要素が突然盛り込まれていますが、これはいらなくないですか?

  • 編集F

    ラストで、「シュメール」という言葉の意味は「混ざり合ったもの」だと出てきますよね。その例の一つとして、「男と女」とある。そこに引っかけている要素なのでは?

  • 編集A

    つまり、秋川は元々は男性だけど、今は女性として暮らしている。そして研究者の瀧上は、元々は女性だけど、男性のように振る舞っている。二人とも、まさに「男と女が混ざり合っている」わけで、そこに意味を繋げているんですよね。

  • 編集D

    えっ? この二人、性別は元々逆?

  • 編集A

    あら、違った? 終盤で、冷静さを失った秋川を静めようとして、瀧上がとっさに、「落ち着いて。貴方しか頼めない。分かって……恵一」と囁いてますよね。恵一というのは秋川の名前でしょうし、瀧上は女言葉を使っているっぽいので、元々の性別は逆なのかなと思ったのですが。

  • 編集C

    言われてみれば、そうですね。

  • 編集F

    「恵一」は確かに男性の名前なのでしょうけど、「萼(うてな)」というのは性別が分からない。「分かって」という台詞一つだけでは、瀧上が女性だということの確証にはならない気がします。

  • 編集E

    民宿に泊まるとき、二部屋予約したはずが、一部屋しか用意されていませんでしたね。これは、連絡を受けた人が名前だけで判断して、同性二名だと思いこんだということでしょうか? 実物の瀧上を見て、受付の女性が「あらっ」と声を上げてますよね。男性の格好をした瀧上を見て驚いているということは、「萼」を女性だと勘違いしていたということ……? でもそれなら、「恵一」は男性の名前なので、「同性二人」と勘違いするはずはないし……うーん、なんだかよくわからない。

  • 編集D

    やっぱり、性別うんぬんの要素はいらなかったのではないでしょうか。

  • 編集F

    読者が混乱するだけですよね。それとも、作者的には深い意味があるのかな?

  • 編集B

    枚数を使ってちゃんと描けば、その意味がはっきり分かるのかもしれないですね。現状ではちょっと汲み取れないです。

  • 編集A

    秋川の初登場シーン、「秋川、入ります」のところで、私はこの人を男性かと思ったんです。そしたら次の研究室のシーンで、「久しぶりね」って言ってるから、「あら、女性だったのね」と思い直した。そうしたら終盤ではさらに「恵一」と出てきて、また「あらっ」と思わされた。これは、作者が狙って性別をミスリードしているのだと思ったのですが。

  • 編集B

    30枚しかなくて、ただでさえたくさんの情報を詰め込んでいるのに、性別の話まで盛り込むのは無理がありましたね。結局読者は、作者の意図を読み取れていないですし。

  • 編集E

    ただ、この性別に関する要素がなかったら、単に「シュメール人」についての話、ってだけになってしまう。もしかしたら作者は、物語に厚みをつけようとして、キャラクターの性別のねじれを入れ込んだのかもしれないですね。

  • 編集C

    「シュメール人の謎」という話だけでも、すごく面白かっただろうと思いますが。

  • 編集D

    僕もそう思います。

  • 編集F

    そうかな? 私は個人的に大好きですけど、「シュメール人の話」ってだけで興味を引かれる読者って、そんなにたくさんいるのでしょうか?

  • 編集D

    これ、単に「シュメール人が……」ってだけの話じゃなくて、その謎に、イラクの諜報機関が絡んできてますよね。てことは、国際的な陰謀に繋がっているわけじゃないですか。

  • 編集B

    スパイに陰謀。いいですね。もうワクワクです。

  • 編集D

    その話をちゃんと書けるなら、性別がどうのという要素を入れなくても、充分すぎるほど面白い作品になると思います。

  • 編集C

    でもこれ、ほんとにスパイ絡みの話なんでしょうか? 私はその辺りが、さっぱりわからなかったのですが。

  • 編集D

    確かに、ナジャフがなぜ政府から追われているのかは、よくわからないですね。

  • 編集C

    「テロ組織」とか「イラク大使館」とか「正式に外交ルートでの要請」とかってワードが出てきますが、シュメール文明の謎と諜報機関やテロリストがどう絡むのか、全く読み取れなかったです。

  • 編集D

    話が回収できていないところは色々ありますね。

  • 編集C

    スパイとかテロ組織とか、本当に関係してるんでしょうか? 30枚の話として書くなら、この要素、なくてもよかったんじゃないかなと思うのですが。

  • 編集D

    でも、緊迫した手術室のシーンから始まり、謎の言葉を残して外国人が亡くなり、警視庁公安部へと場面が移る。この流れでググっと話に引き込まれますよね。この「謎と陰謀の匂い」を無くしたら、面白さが一気に下がってしまう。それに、話に「公安」を引っ張り出しておいて、何もないってことはないんじゃないでしょうか。

  • 編集A

    やっぱりナジャフは、大きな秘密を知ってしまったから命を狙われたんでしょうね。詳しいことはよく分からないですけど。

  • 編集D

    シュメールの謎を暴かれたくない誰かがいるんでしょうね。

  • 編集F

    ただ、シュメール文明って、五千年とか、それくらい遥かな昔のことですよね。そんな古代の遺物が、いくら人里離れた洞窟とはいえ、現代にまで整然と残っているとか、秋川たちが発見したその日に地震で崩れるとか、ちょっと都合のよい展開になっているのは気になります。

  • 編集C

    もしかしてこの地震は、イラクの当局とかが人工的に起こしたものだったりして。

  • 編集A

    さらにすごい陰謀論、来ちゃった(笑)

  • 編集D

    この話をオカルト方面に持っていくなら、封印が解かれてしまったので地震が起きた、ってことにしてもいいですね。

  • 編集A

    ファラオの呪いみたいなやつですね。あるいは、人も含めて、何か異物が侵入してきたら、秘密を守るために自動的に崩れるシステムが設置されていたとかってことでもいいですし。

  • 編集B

    オカルト系でも陰謀系でもいいので、とにかくうまくつじつまを合わせて話を作ってほしいですね。

  • 編集F

    この作品に盛り込まれている色々なうんちくとかは、すごく興味深かったです。でも、ツッコミどころも山ほどある感じですね。

  • 編集D

    その虚実入り混じっている感じこそが、すごく面白いんですけどね。

  • 編集A

    文章面は、なかなかしっかりしていたと思います。主人公たちの移動感みたいなものも、ちゃんと出ていますし。ただ、台詞はちょっと紋切り型に感じますから、もう少し人間味とかリアル感を持たせたほうがいいかなと思います。

  • 編集E

    キャラは立っていましたよね。私は特に瀧上さんが好きです。宿が相部屋になりかけた場面で、「僕は気にしないぞ」って言うところとか、個人的にツボでした。

  • 編集A

    やっぱり、「実は性別が……」っていう辺りは、作者は狙って仕掛けているんだと思うのですが。

  • 編集C

    その狙いも含めた上で、一度ちゃんと長編に仕上げてみてほしいですね。書き上げた後で読み直して、「やっぱり余計な要素だな」と思ったら、削って整え直せばいいわけですから。

  • 編集D

    普通に男女の話でもいいですよね。陰謀に巻き込まれて大変な目に遭う中で結びつく二人、みたいな方向にしてもいいと思う。

  • 編集F

    いいですね。その展開、すごく盛り上がりそう。それにしてもこれ、人類の歴史が変わってしまうという、壮大なお話ですよね。

  • 編集A

    だからほんとに、30枚で書くべき話ではなかったんです。300枚くらいで書き直してほしい。基本のストーリーはこのままでいいです。これ以上、あれこれ盛り込む必要はない。ただ、主役の二人がどういう性格なのかとか、どういう学生時代を送ったかみたいなところを膨らませて、回想とか過去シーンとかで入れてほしい。もちろん、スパイとか陰謀とかが真相なら、そのあたりもしっかりと描き込んでくださいね。それらをちゃんと書いたら、それだけでも200~300枚は使うことになると思います。

  • 編集D

    いや、今回の30枚の部分は、全体の物語の前編部分でしかないと思います。この後、当局から追われていたナジャフの秘密を追って、シュメールがどう世界に影響を及ぼしているかを解き明かす中編と、物語が終息に至るまでを描く後編がさらに必要になってくるはずです。

  • 編集C

    前・中・後の三部構成ですか。それだともう、300枚ではとても収まらないと思う。

  • 編集D

    600枚くらいにはなるでしょうか。枚数はどれだけかかっても構わないので、物語の枠に見合った適切な枚数で書き上げてください。

  • 編集E

    正直、話がよくわからない部分も多かったですけど、今回の候補作の中で一番面白かったです。

  • 編集A

    膨大な情報をむりやり詰め込んでいる割には、何を描いている話なのかは伝わってきた気がします。

  • 編集F

    情報整理ができてましたよね。個性のある魅力的なキャラも書けていたと思う。

  • 編集G

    確かに面白い作品でした。ただ、やっぱり説明不足だし、いろいろ散りばめた伏線がほとんど回収されていないし、短編作品としては完成していない。というか、この投稿作が完成作品に成り得ていないことを、作者は分かっているんじゃないでしょうか。小説として上手いか下手かということではなく、詰め込みすぎであまりに無理がある。枠が違い過ぎますよね。それなりに筆力がある方のようですし、ご自分でもそこはある程度わかってらっしゃるんじゃないかという気がします。もしそうなら、まだ完成していない作品で賞に応募するということ自体に、ちょっと疑問を感じます。

  • 編集B

    そうですね。ちょっとばかり枚数を見誤ったというレベルではないくらいの、枠の読み違いですよね。

  • 編集A

    期待度から言うと、今回の中では断トツのトップ評価でした。ただやはり、未完成な作品を、期待度だけで受賞させることはできないです。

  • 編集F

    でも、明らかな未完成作品なのに、こんなに「面白い」「好きです」って評価を集めるのも、すごいことですよね。

  • 編集D

    たとえダイジェスト版であっても、内容さえ面白ければ最終選考までは上がって来ることができるという好例だったと思います。ネタは本当にいいので、ぜひしっかりとした長編に書き直して、再挑戦してほしいですね。

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