編集G
曖昧ではっきりしない微妙な気持ちを、そっと掬い上げて描いている作品です。自分でもどう表現したらいいのかわからないような、他人に対するほんとに微妙な感情って、誰しも持つことがありますよね。そういう繊細な感情をうっすらと浮かび上がらせるような描写が、とてもうまいなと思います。読んでいて非常に共感できました。
女性である主人公の、女性である七瀬さんへの気持ちが描かれているのですが、私はこれは、恋愛感情ではないと思います。とても好ましい年上の女性に対する憧れのような気持ちであり、こういう感情を抱くことは普通にあると思う。主人公は、七瀬さんと同じように自分もピアスの穴をあけることによって、この「憧れの人」に少しでも近づけたらと思っているのだろうと思います。この主人公の感情は、私にはすごく響くものがありました。
主人公の抱いている気持ちは、「憧れ」とか「好意」なんていう言葉で言い表すことができないほどの、微妙なものかもしれませんね。こういう非常につかみにくい感情を、曖昧なまま美しく描き出せているのは、とてもよかったと思う。私はイチ推しにしています。
終盤で、「七瀬」が名字だったことが明かされていますが、この場面で、私はとてもハッとさせられました。それまで、「七瀬」は名前かと思って読んでいましたので。このクールで美しい年上の女性が、実は「るな」さんだと知ったとき、なんだか新鮮な驚きがありました。淡々とした物語なのに、時折こんなふうに読者の気持ちをトンと突く一瞬が仕込まれているのも、すごく良かったです。