編集B
とにかく、この作品の世界観が素敵でした。主人公の「僕」は、あまり社交的ではなく、世間の片隅でひっそりとウェブデザイナーをして暮らしています。そういう「孤独な青年」が、学生時代に親しかった友人からの謎めいた手紙をもとに、見知らぬ地へと短い旅をするという筋立てには、心惹かれるものがありました。ひなびた地方の町で、自分しか乗客がいないバスの運転手とぼそぼそ交わす会話とか、そのバスの窓から見る海辺の町の寂しい景色とか、時が止まったような風変わりな郵便局とか、現代社会をちょっと抜け出して、静かな別世界に来たみたいですよね。人の少ないさびれた海辺の町に、郵便局らしくない郵便局があって、波に漂うようにしてたどりついた宛先のない手紙たちが眠っているという、この設定と空気感がとても好きでした。イチ推しにしています。