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選評付き 短編小説新人賞 選評

第222回 短編新人賞 総評

  • 編集B

    今回は、「短編の書き方」や「書く際の注意点」について話し合っていきたいと思います。

  • 編集A

    まず、この「短編新人賞」は、あくまで「独立した読み切り短編」を審査対象にしているということを、改めて確認しておきたいです。

  • 編集B

    長い物語のプロローグ的な作品を投稿される方がときどきいますが、そういったものは本賞で規定している短編とは別物なので、そこはご理解いただきたいですね。

  • 編集A

    シリーズ物の番外編のような作品も別物です。また、連作短編の中の一話のような作品も違います。この三十枚の中だけで始まって終わる話。それが、本賞が求めている「短編」です。

  • 編集C

    書いてみるとわかるかと思いますが、「三十枚の中で話を始めて、完全に終わらせる」となると、そんなに多くの要素は盛り込めないですよね。

  • 青木

    大きなネタが一つ、小さなものがいくつか。それがせいぜいだと思います。さらに、キャラクターの魅力も表現したい、楽しい掛け合いも入れたいとなったら、本筋の部分に使える枚数は、その分減ることになる。

  • 編集F

    要素の数だけでなく、ペース配分も重要だと思います。最初のうちは非常にスローペースで話が展開していき、やっと盛り上がってきたかというところで枚数が足りなくなり、大急ぎでぎゅうぎゅうに詰め込んで強引に幕引きするような作品が、けっこう目につきます。

  • 編集B

    短くまとめることべきところに必要以上にページを費やし、しっかりと描写してほしいところが駆け足になってしまっている。本当にもったいないなと思います。そこにこそ枚数を割いてほしいのに。

  • 編集C

    見切り発車で書いているのかなと感じてしまう作品は、けっこう多いですね。短編は、「計画やプロットを立てなくても書ける」ような気がしてしまいがちですが、どこにどの程度の枚数を使うかを判断できるくらいには、話の全体像をつかんでから書き始めてほしいなと思います。出発点と着地点も、あらかじめ決めておいたほうがいい。何を描こうとした話なのか、書き手自身が見失ってしまうこともありますから。

  • 編集B

    特に、冒頭は重要だと思います。読者の心を一瞬でつかむくらいの勢いが欲しい。冗長にならないようにということを、強く意識してほしいです。

  • 編集F

    本気で読者を得ようと思うなら、物語の最初の部分で読む人を引きつけるぞという気持ちは、絶対必要だと思いますね。

  • 青木

    以前、三浦しをん先生が、「短編は起承転結ではなく、序破急でやったほうがいい」とおっしゃられていて、私はその言葉がすごく心に残っています。私自身、短編に限らず長編でも、意識せずにそういう書き方をしてきたように思います。やっぱり、面白い話を書きたいし、早く話を盛り上げたいですから。

  • 編集B

    三十枚しかないならなおさら、のんびりだらだらしてる場合じゃないですよね。一刻も早く読者を引き込まないと。

  • 青木

    ただ、私はだらだら書くのも好きなので、とりあえず思いつくまま延々書き連ねることもよくありますね。そして、後から読み直してどんどん削る。あるいは、「ここぞ」というほんの少しの部分だけを抜き出して、後は捨ててしまいます。

  • 編集H

    そういえば、前回もそういうお話をされていましたね。

  • 青木

    書き始めがつい冗長になってしまいがちというのは、実は私にもあることなんです。最初の辺りは手探りで書いている場合もありますので。でも、後で読み返して、不要なら削ります。そういったことは、後からいくらでもできる。だから、まずはとりあえず書いてみる、ということでいいんじゃないかと思いますね。なんだったら、「どうせ最初の辺りは、後でざっくり削って書き直すんだから」くらいの気持ちを持っていてもいいかもしれない。

  • 編集F

    書きたいところから書き始めてもいいですよね。無理して冒頭から書く必要はないです。思いついたところや、書けそうなところから書き始めて、最終的に一つの物語にまとまればいい。

  • 編集B

    三十枚の短編なら、まずは五十枚ほど書いてみて、読み直しながら削ったり、構成を練り直したりするくらいでちょうどいいかもしれない。一発勝負で枚数ぴったりの完成された作品を書き上げようというのは、無理がありますよね。

  • 青木

    プロの作家さんにはそういう書き方をする方もいらっしゃいますが、投稿者の皆さんには、まだ難しいかなと思います。そういうやり方がその方に向いているかどうかもわからないですしね。

  • 編集C

    手探りでゆっくり書き始めて、枚数が足りなくなったので後半を無理やり詰め込み、そのまま投稿しているような作品を目にすると、やっぱり残念ですよね。書き直したり、構成を変えたり、削ったり足したり、いくらでも手を入れられたはずなのに。なるべく省エネルギーで書こうとしているのかな? 自分の作品をより良いものにしようという熱意が薄いようにも感じられて、なんだか寂しいですね。

  • 編集A

    なんだったらもう、枚数のことはいったん忘れて書いてみてほしい。

  • 青木

    そうですね。とにかくまずは、自分が書きたいものを、思う存分楽しんで書く。それがいいと思います。

  • 編集C

    一回全部書き出してしまえば、後で読み返して、「ここはいらないな」みたいなことに気づきやすいし、「三十枚に収めようとしたら、これくらいの分量しか入れられないんだ」という感覚もつかめてくると思います。

  • 青木

    私も、枚数感覚は、最初よくわからなかった。書き続けているうちにだんだんつかめるようになってきました。これに関しては、やはり経験を積むのが一番かなと思います。たくさん書いてほしいですね。そのうちに肌感覚としてわかるようになります。

  • 編集A

    やはり一回全部書いてみることですよね。で、それが工夫次第で三十枚に収まりそうなら、短編としてまとめればいい。書き方の工夫なんて、無限にあります。でも、どう考えても三十枚にするのはとても無理、という場合は、もう一度枚数制限のことは忘れて、その物語に最適と思える枚数で仕上げればいい。そして、ノベル大賞に送ってください。

  • 編集B

    まずは、頭の中のものを全部出し切って書く。そこから始まりますね。そして、それを何度も読み返し、練り直す。

  • 編集C

    一回書き上げて、「終わったー!」と思う方は多いかもしれませんが、むしろそこがスタート地点だと考えてほしいです。

  • 編集F

    我々がよく、「推敲して」「必ず見直しをして」と申し上げているのは、誤字脱字のチェックだけではありません。冒頭の立ち上がりはこれでいいのかとか、盛り上がりをここに持ってきていいのかとか、読み返しながら作品全体に手を入れ、あらゆる面でブラッシュアップしていく。それが推敲です。

  • 青木

    ただ、いつまでも延々と推敲し続けるのも良くないです。ある程度のところで手を放して、送り出してほしい。その点で、この「短編新人賞」の2ヶ月毎というペースは、割とちょうどいいのではと思います。

  • 編集B

    一つの作品にこだわりすぎないで、新しいものをどんどん書いていくのも大事ですよね。書き手が何歳であっても、今しか書けない作品はあるはずですので。

  • 青木

    あと、こういったアドバイスは積極的に試しつつも、「自分にはどういうやり方が向いているか」も模索してほしいですね。合わないやり方を無理にやることはないです。自分はどうするのかを、自分で決める。それも非常に重要だと思います。「辛いけど頑張る」必要などありません。あくまで楽しく取り組んでほしい。そこは強調しておきたいです。

  • 編集A

    それにしても、投稿者の多くが、けっこう「短編」というものにてこずっている印象を受けますよね。もしかしたら、「独立した短編作品」というものに、あまり触れたことが無いのかな。意外と読む機会がないのかもしれない。

  • 編集C

    素晴らしい短編作品はいくらでもありますので、ぜひ手に取ってみてほしいですね。もちろん楽しんで読んでほしいですが、もし自分の作品をレベルアップさせたいという思いがあるならば、その短編作品に盛り込まれたテクニック等にも目を向けてほしい。どういう構成になっているかとか、どういうアイディアの使い方をしているのかとか、どういう伏線の回収の仕方をしているのかとか。そういうところにちょっと意識を向けて読むだけでも、ずいぶん参考になると思います。

  • 編集B

    研究しながら読むというのも、また楽しいですよね。楽しみながら、たくさん読んで、たくさん書く。結局は、そこに尽きると思います。

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