該当者なし
かける
今回の講評
今回は募集が春休み期間に重なっていたためか、非常に多くの作品が集まりました。とりわけ10代の方からの応募が目立ち、フレッシュな感性の作品が佳作以上にも多数ランクインしています。もう一方で目立ったのが「粗い」作品です。作品に熱意が籠もっているとしても、人物だけを描いた作品は、見る方に「描きやすいものだけを描いたのだな」ととらえられます。また、作品のテーマ性が伝わりにくいため、選考でも完成度が低いと判定されがちです。何らかの狙いがあってあえて背景を省略する場合を除き、背景や余白も含めた「紙面全体」を作り込む気持ちで制作に取り組んでみてください。「これは苦手」と今感じているポイントも、繰り返し描くことで克服に繋がることがあります。
條さん(神奈川県)
今回入選となった條さんは、前回(第63回)の投稿時「佳作・あとひと息」に入った、実力のある投稿者です。その際、編集部から「モノクロイラストの描線が粗い」という指摘 を入れましたが、今回そのウィークポイントをしっかり克服したことで入選につながりました。繊細な描線と淡い着彩が魅力のカラーと、描線は丁寧に描きながらも構図やコントラスト強めの仕上げが勢いを感じさせるモノクロで、タイプの異なる作品づくりに成功しています。カラー、モノクロとも、背景や衣装、小物の細部まで手を抜かず作り込む姿勢に評価が集まりました。
そろをさん(愛知県)
色調をモノトーンに寄せたカラーイラストは地味に見えやすいのですが、男性キャラの明るい髪の色と女の子のヘッドドレス、衣装の白、そして背景から逆光気味に入って来る光の加減が絶妙で、セピアトーンでも暗く見えないバランス感覚がお見事です。カラー、モノクロとも女の子の表情がかわいいのも好印象。注意点としては、遠近感を出そうと努力していることは伝わるのですが、遠景(カラーの部屋の外、モノクロの崖)で微妙な違和感が出ています。もう少し練習を重ねてみてください。
大豆堂さん(北海道)
非常に精力的に応募してくれる大豆堂さん。カラーで流麗な塗りの表現ができる技術の持ち主で、今回は描いている世界観と描写がマッチしていて、非常にバランスがいいですね。モノクロ背景の飾り罫も丁寧に描かれており、画面にメリハリを与えています。ただし、ところどころ、体のデッサンが崩れるので気をつけてください。
村松邑さん(北海道)
カラー、モノクロとも、人物だけでなく背景の小物にいたる細部まで非常に丁寧に描かれ、重厚感のある作品になっています。描線が美しいのも、大きな強みです。細かい部分の美しさが目を引くなか、全体を見ると、人物が触れ合う部分や細かいポーズなどに違和感があります。デッサン力の向上とリアルなポーズ描写を心がけてください。
滝川月野さん(千葉県)
アナログで佳作入賞の経験がある滝川さん、今回デジタルでの応募ですが、まだ操作に慣れていないのか以前よりやや着彩が平面的。トーン仕上げだったモノクロも白黒の塗りで仕上げられています。画力はある方と見受けられますので、デジタルもアナログ画材同様に使いこなせるよう練習を重ねてください。
とおるさん(埼玉県)
両作品とも女の子の体つきが柔らかく描けていて◎。モノクロは、人物の上に植物の陰が落ちる細やかな描写がたいへん繊細で、意欲を感じます。ただし、カラーで描いた作品をモノクロ変換したように見えるのがもったいない。モノクロはモノクロとして、トーン処理で仕上げることを意識しましょう。
サンチョス紫苑さん(新潟県)
絵柄に花があり、目が惹きつけられます。女の子の感情のこもった表情や、長い髪のツヤ感の表現なども丁寧で好感が持てます。ただし、デッサンには少し注意が必要。カラーの洋装ではあまり気になりませんが、モノクロの中華風では違和感が出ている部分があります。また、背景についてももう少し練習を重ねるとよいでしょう。
温泉ねずみさん(東京都)
子供や動物、男性……と、幅広いモチーフを描いてくれた温泉ねずみさん。表情はややオーバーにデフォルメしつつ、人体の細かいパーツをリアルに描けています。カラーの背景、描き込む部分と省略する部分でメリハリがつけられているのもいいですね。今回、他の方にも指摘していますが、モノクロをトーン処理で描く練習をおすすめします。
サトツキさん(東京都)
はやりのライトノベル風の絵柄で、線を整理しつつも描き込み不足に見えないのは、デフォルメしている点も含め男女の特徴をしっかり描けているからです。カラーの動物キャラもデフォルメとリアルの案配がよく、かわいく描けています。カラーの背景のタッチが、キャラとまったく違って浮いているのがもったいない。要注意です。
すずめさん(富山県)
少年少女から青年まで、親しみやすさを感じる表情が描けています。カラーでは5人をしっかり描き分けているところがGood。少しくすみを出した色使いも世界観にマッチしています。見る人の視線を意識して構図を組み立てられているので、次回は描きこみの強弱でも画面にメリハリをつけることに挑戦してみてください。
ヤタノミさん(静岡県)
細かく線を重ねた描写で、重厚感を出すことに成功しています。カラーはシンボリックな画面構成が◎。民族風の衣装デザインも個性的で目を引きます。これは凝った衣装を描く方にありがちなのですが、複雑な衣装の下に隠れている場合でも、体は正確に描くよう心がけましょう。モノクロの細部で線画がやや乱れる点も要注意です。
ぺれさん(愛知県)
独特のデザインで浮遊感のあるカラーは、小物使いが利いており不思議な魅力があります。一変して、モノクロはデッサン、着色とも粗い印象。モノクロは「黒白で塗る」のではなく、コミックのようにトーン処理で仕上げる練習をしてみてください。人体デッサンの練習も並行してみては。
牧乃花太さん(愛知県)
男女とも少女小説らしいキャラが描けており、表情の描写もこなれていて自然です。ただし、これまで何度か指摘を入れていることですが、描写が人物の表情に集中しすぎていて、特にモノクロでは細部が描き込み不足なのが気になります。美しい線を描ける描き手さんなので、次回はぜひ細部の作り込みに挑戦してみては。
mosさん(沖縄県)
カラーは色使いがとても華やかで、デジタルイラストの強みをしっかり出せています。1枚の絵でストーリーを感じさせる構図や小物使いもいいですね。エフェクトを効果的に使ったカラーは気になりませんが、モノクロでは背景の平板さがやや目立ちます。デッサン面も含め描写の基礎を磨くと、さらに力がつくでしょう。
もう一歩の方々 26名
一乃依潤(北海道)/ のんあいす(宮城県)/ リョウスケ(宮城県)/ 川島八枝(埼玉県)/ マツダユキ(茨城県)/ 佐々原キョウカ(神奈川県)/ 椎名葵(栃木県)/ 紅乃香菜(埼玉県)/ 安里玲沙(東京都)/ odoro(東京都)/ 鈴石和生(東京都)/ ぷにちゃん(神奈川県)/ 赤羽あさ(長野県)/ アメノモリ(静岡県)/ 戸町こま(静岡県)/ 柚麻あんな(静岡県)/ アキアカ(愛知県)/ 星城まりか(愛知県)/ 細川おうぎ(愛知県)/ 星麿(岐阜県)/ DNA(滋賀県)/ 馨月(兵庫県)/ 霧島なお(奈良県)/ コロボックル(広島県)/ seCru(愛媛県)/ おりごっと(沖縄県)