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第72回コバルト・イラスト大賞発表!

コバルト・イラスト大賞では、『架空の小説のカバーイラストを描く』というテーマで作品を募集中。これまで、学園ものからあやかしもの、歴史、青春などさまざまなキーワードを盛り込んだお題で応募を募ってきました。今年9月まで募集した第72回では、青春ものながら少し不思議でSF風にも解釈可能なテーマ『君の思い出は海の香り』が設定され、多くの力作が集まりました!

応募テーマ

タイトル
『君の思い出は海の香り』
あらすじ
高校2年生の津村征彦は、毎日1時間かけて海岸沿いの道を自転車で通学している。夏休み前のある朝、消波ブロックの上で睨むように海を見つめる少女を見かけた征彦は、妙に惹かれる感覚になった自分に戸惑ってしまう。そしてその翌日、少女はクラスメイトとして征彦の学校へと転入してきた。渡山なぎさというその少女は、誰とも打ち解けないまま一週間が過ぎ、夏休みに入ってしまう。夏休みになって母親の実家へと家族で帰省した征彦は、母親のアルバムに渡山なぎさと瓜二つの人物を見つけるが、それは30年前に海で行方不明になった母の従姉妹だと言われて……?

今回の講評

第72回コバルト・イラスト大賞のテーマ作品『君の思い出は海の香り』は、海に臨む街を舞台に繰り広げられるボーイ・ミーツ・ガールものです。あらすじから「消波ブロックの上で睨むように海を見つめる少女」というインパクトのあるシーンを描いた作品が非常に多く見られました。前回も全体講評で指摘したことですが、あらすじをストレートに描く場合、どうしても画一的な表現になってしまいがちですから、細部に「自分のオリジナリティ」をアピールする工夫ができるとよいでしょう。また、今回のテーマでは「青い空と青い海」という背景を描いた作品が大半でしたが、自然物の描写も技術の差が非常に出やすい要素です。近年は背景を緻密に描写した作品が支持されるトレンドもあります。手描き風に描きこむのか、ソフトの機能を駆使して写真的なリアリティを追求するのか。キャラクターイラストのみにとどまらず、背景も含めた完成度を追求するとよいでしょう。

大賞,賞金30万円

該当者なし

入選,賞金10万円

羽瀬川さん / 神奈川県

羽瀬川さんの作品は、光への意識と、陰影をつける技量が非常に優れています。繊細、丁寧なタッチで引かれた線画に、大胆に陰影をつけていくニュアンスが絶妙でした。なぎさの表情もとてもかわいいです。カラーは、水彩風の塗りのタッチが大変美しく、なぎさのスタイルも破綻なく表現できています。一方、モノクロの征彦の体格には若干違和感がありますので、イラスト的なデッサンとはいえ骨格のリアリティは意識するとよいでしょう。

入選,賞金10万円

加藤綾華さん / 岐阜県

カラー、モノクロとも描線に絶妙な「生っぽさ」がある点が目を惹きました。デジタル描画では、ソフトの加工や素材で見た目を美しく仕上げやすくなっていますが、それに頼るほど作品は没個性的になる傾向があり、線や塗りのタッチをしっかり残して仕上げるには画力のベースが必要になります。あえて手書き風に表現した点に加藤綾華さんの意欲を感じました。カラーで、主人公の征彦をさりげなく登場させる(画面右下の足)構図の工夫も◎。

佳作

入選,賞金10万円

寝子暇子さん / 東京都

カラーイラストは、主人公のなぎさと目が合い、視線を外せなくなる力強さがあります。波打ち際で水に濡れる肌や透けるシャツ、肌に貼りつくスカートなど細部の質感が巧みに表現されており、海から砂浜へのグラデーション、泡だった波の影など背景の表現も秀逸で、技術力の高さを感じました。モノクロのなぎさの表情、あらすじに提示された「睨むように海を見つめる」だけにとどまらない微妙な切なさが表現できているのも高評価です。

入選,賞金10万円

ヤナギヨミさん / 広島県

カラーイラストは、一冊の本の表紙から裏表紙まで回り込む横長の作品になっています。応募要項では「カラーでは表紙を描く」という規定ですが、表紙のみでも構図が成立し、裏表紙まで見るとさらに世界が広がるという企みのある点が評価されました。ただし、描線や塗りなど画力にはまだまだ発展途上な部分が見受けられます。カラーの海がのっぺりした水色に見えますので、光の反射や波の動きなど、塗りの表現をさらに一考して。

  • あおいさん / 千葉県

    あらすじのシーンをストレートに描くカラーと、キャラの関係を掘り下げるモノクロ、2枚一組でしっかり物語の世界観を表現できていました。モノクロに描かれたなぎさと、アルバム写真の少女は、髪型や写真の描き方など、細かいところでさりげなく時代の差を表現できている点がよかったです。

  • morikoさん / 東京都

    「消波ブロックの上にたたずむ少女」を描く人が多かった今回のテーマで、もっとも個性的なカラーでした。カラーもモノクロも、あらすじを越えた征彦となぎさの個性、関係性を想像できる点が好印象です。モノクロは小物まで細かく描けていますが、昼間にランプが灯されているところに違和感が。外の明るさと屋内の暗さの対比まで考えて描けるとよいでしょう。

  • ほしまるさん / 愛知県

    今回佳作以上に入った方の中で、唯一のアナログ作画での応募だったほしまるさん。カラーはラメを使った仕上げ、モノクロはトーンではなくすべて手描きのカケアミで陰影をつけてあります。あえて手描きでしかできない表現にこだわった意欲がよく伝わりました。カラーは絵画的ですが、表紙イラストにしては人物がぼんやりしすぎている点は再考を。

  • chilcyさん / 京都府

    前回に続き、イキイキとしたキャラクターの表情が魅力的です。なぎさとアルバムの少女を髪の色で区別する描き分けもわかりやすい。背景の空や海のブラシ感が強くやや浮いて見えるので、自分の作品とうまくなじませる使い方を工夫してみては。手描きにチャレンジしてみるのもおすすめです。

  • mugicoさん / 兵庫県

    カラーイラストは構図と色使いに独創性が感じられ、基調色の青と光の入る白の部分のバランスが絶妙。なぎさと征彦を、高校生らしい青さ、かわいさのある表情に描いている点もよかったです。ただ、描線がやや弱く色に埋没しているところは要改善。モノクロでは、背景に舞台となる街の様子まで想起させる工夫が好印象でした。

  • 小鳩白果さん / 福岡県

    カラーの構図が秀逸! 実際に表紙にした時、文庫本から帯を取ると写真の少女が現れるという仕掛けになっています。なぎさと征彦が、高校生らしさ溢れる爽やかな表情とスタイルで描かれているのも◎。なぎさの髪飾りを貝殻やヒトデモチーフにするひと工夫がかわいらしくて好印象です。

もう一歩の方

11名

うたたねひぐまさん(埼玉県)/ハチワレさん(埼玉県)/土星さのさん(東京都)/田中舞さん(神奈川県)/鯨入鹿さん(京都府)/あずきあんこさん(大阪府)/阿部佑仁さん(大阪府)/あみずさん(大阪府)/B3さん(山口県)/苗木苗さん(山口県)/能勢ナツキさん(愛媛県)

関連サイト

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