第2回
「春日山城」
さて林泉寺を後にして、春日山城にやってきました。
聖地・春日山城。上杉謙信公の本拠地。
30年前はここまでたどり着くの大変でしたよ。だって東京からだと長野経由の特急とかでなんやかんや五時間くらい。来るだけで一日かかる場所ってイメージでしたけど、いま北陸新幹線に乗れば二時間以内で来れて、しかも駅から車で十分ほど。ふつうに日帰りできる距離。
この日、元担当エリーさんも来てくれたんですが、日帰りでピャッと帰られました(お忙しい中、ありがとう)。
上越新幹線でも長岡乗り換えで、なんやかんや遠かったので、北陸新幹線すさまじい! と思いながら、未来世界っぷりに打ち震えました。
しかしながら、今回はあんまりのんびりできなくてですね。
本丸までは行けませんでした。ざんねん。
しかもおみやげ屋さんに時間をとられました。なんかいっぱいグッズが!!
歴史上の人物や事物を題材にしたゲームが花盛りの今、おみやげ屋も「ここはアニ○イト!?」と思うほど、ふつうに二次元キャラたちがひょっこり。
戦国武将の皆さんもびっくり。日本の歴史って、敷居低いし、間口広い。
二次元から入って、ゆかりの土地を訪れる「聖地巡礼」。
たまに「ミラージュツアーは聖地巡礼のはしり」とのお声をいただくのですが、それはまあ『燃えよ剣』好きで新撰組の史跡を巡ったりとか、昔から普通にあったものですから、決して先駆けなんかじゃないんですけど、二次元(小説だから二次元ですらないかも)のキャラの面影を追って実際の土地をめぐる、という楽しみ方の形が、ファンの間でひとつのムーブメント的に共有されてた、という意味では、印象に残りやすかったのかもしれません。
コンテンツ・ツーリズムはいまや世間一般にも知られ、地域おこしや文化財保護のきっかけになったりしてるのをみるにつけ、その原動力(萌えとか)ってすばらしいと思う。
地元の皆さんとの交流が生まれるのも、すてき。
というか、史跡観光って、そもそも歴史という物語の聖地巡礼なんだろうな。
そんなこんなで、謙信公の銅像にご挨拶をしつつ、三郎屋敷へ。
景虎の屋敷は三の丸にあったとのことで、久しぶりに訪れたのですが、
木が!
木が、ない!!!!!
杉が見事に伐採されて、めっちゃ開けた見晴らしのいい場所になってました~。Oh!
あの杉木立に囲まれた雰囲気が好きだったので……ちょっと涙が。
とはいえ、景虎がいたときには当然、杉の木もなかったでしょうから、当時の眺めがわかるようになったのは、ありがたく。景虎の気持ちで景色を眺められました。
元担当エリーさんも「景虎はここにいたんですね……」としみじみ。
そうそう、ここにあった説明書きの立て看板。新しくなってまして。前のものには「近年、『炎のミラージュ』という小説に」(漢字じゃない)「景虎が美少年として登場して脚光を浴びている場所」的な文言があって(美少年、とは…)新看板からはさすがにその文言は削除(……)されてましたけど、説明看板に思わず取り上げてしまうくらい、たくさんの読者さんが来てたんだなあ、と。
おみやげ屋にもかつて、夜叉衆の名前を染め抜いた旗が置いてあったような……。(ミラージュグッズ? いえいえ歴史上の人物の名前を記しただけです)
いろいろ懐かしい思い出が蘇ります。
時間の関係で三の丸より上には行けなかったんですが、14年ぶりの春日山城は全体的に整備されて、きれいになってました。いつのまにかパワースポットになった井戸も。
春日山神社には、謙信公が祀られてます。ここでも環結のご報告。
なぞの動物ベンチ(クマの目が赤くてこわい)に腰掛け、北陸限定ルマンド・ミルクティー味を堪能。
木立をわたる風に吹かれながら、環結後にまたこうして訪れることができた幸せを噛みしめました。
初生の夜叉衆がかつて、幾度かはその門をくぐったであろう場所。
直江にとっては「自分が最初に死んだ場所」でもある春日山城。
そして本編の終わりを飾った場所。
小説には書かれてないけど、夜叉衆は折に触れて何度か訪れてるかもしれませんね。上杉が会津に引っ越して廃城になってしまった後、朽ちていく城跡をみて何を思っただろう。
ここはやはり、物語の原点であり、私の原点。
まだデビュー前、ノートに書いていた小説の題材を求めて訪れたのが最初だから、私の執筆スタイルの原点でもある。
すべてはここから始まった。その場所を――。
謙信公は今日も穏やかに見守り続けておられるのでした。
在りし日の屋敷の姿が目に浮かぶようです。
新しくなった説明書きの看板
三郎屋敷がここにあったことを今にとどめています
初夏の日差しの中で冷涼なたたずまいを見せる春日山神社
謙信公が静かに上越の街を見下ろしています。
他の動物ベンチはかわいかったのに、なぜか熊だけこの眼光…
みんな大好きブルボンは、新潟県柏崎市に本社があります
今も昔も木々の緑の鮮やかさは変わらないのでしょう