第4回
「鮫ヶ尾城周辺」
ここで鮫ヶ尾城のいのししのお話。
登山道脇の斜面があちこち、いのししに掘り返された跡がある、と書きましたが、掘っていたのは山芋だそうです。なかなかのグルメのようです。子育ての季節になると、うり坊をつれているのもみかけるんだとか。登山のときは一応、鈴とか音の出るものがあるといいですね。
さて鮫ヶ尾城のふもとには、勝福寺というお寺さんがあります。
景虎公の菩提を弔っておられます。
本堂の青い屋根がちょっと可愛らしい。
勝福寺さんに伺ったのは、舞台のロケの後で、もう日も暮れてあたりは暗くなっていたのですが、到着が遅れてしまったにもかかわらず、ご住職とそのご家族の皆様が温かく迎えてくださいました。
夜のとばりがおりようとする静かな集落に、こうこうと灯る本堂の明かり。
とても良い雰囲気。
境内には、景虎公の供養碑とほっぺぷくぷくの景虎公の石像があります。五月人形みたいで、かわいい。
カンパニーの皆と一緒に本堂にあがり、ご本尊の前でお経をあげていただいて、ご住職のお話を伺いました。
ご住職もミラージュのことは知っていて、私が訪れるのも三回目。
毎年4月29日に行われる景虎公の法要には熱心な読者さんたちが訪れるとのこと。ここでもまた、景虎公ゆかりの地で、読者さんが地元の方と育まれた絆を感じることができました。
「『炎の蜃気楼』が舞台作品になるのを、きっと景虎公も喜んでおられることでしょう」
とご住職が仰ってくださったのが、とてもありがたく。
ミラージュの景虎は、あくまで歴史上の「上杉景虎」のプロフィールをお借りした登場人物であり、その「死後の生」を描くということ自体、ご本人にとってはもしかしたらとても失礼にあたるのではないかとの想いがずっとあって(たとえ創作であっても)「上杉景虎の小説を書いています」と堂々と言うのは憚られもしていたのですが、ご住職からそのような温かい言葉をいただいて、長年の胸のつかえがおりたような気がしました。
本当にありがたいな。
そして私はきっと景虎公に見守っていただいていたのだなあ、と。
お位牌の前で手を合わせ、感謝の心を伝えました。
三郎景虎との出会いは二十八年を経て、いまとても大きな大きなご縁に育って、こうして信頼できるカンパニーのみんなといっしょにお参りすることができる。
その幸せを噛みしめました。
お寺のお子さんたちは、夕飯時に大勢でやってきたかっこいいお兄さんお姉さんに驚いたと思いますが、そのお兄さんお姉さんたちと笑顔で触れあう姿も微笑ましく。
最後まで名残惜しそうに手を振ってくれていました。
日も落ちて暗くなった山を背に、本堂の明かりが黄金色に灯っている光景は美しく。
とてもいい時間だったな。
私は、あなたと出会えて、ほんとうによかったです。景虎公。
勝福寺様、ありがとうございました。
大河ドラマにもなったおかげで、地元でも知名度があがり、「景虎」という人物のことをたくさんのひとが知っていてくれるのがうれしい。
翌日、妙高市にある君の井酒造さんの酒蔵見学をしたのですが、
ガイドをしてくださった社員さん(男性)に、話の流れで私がミラージュの原作者というのが露見(……)してしまい、その時いただいた一言が。
「僕の虎ちゃんを書いてくれてありがとう!」
僕の……虎ちゃん……!!!!!
景虎様、安心してください。
あなたはしっかり地元の方々に愛されてますよ。
君の井酒造さんの酒蔵は、古くて味わい深い建て構え。試飲もできる。
お酒めっちゃおいしいです。いくらでも飲める。
ちなみに、あの有名なハッピーターンの原料の米粉も、君の井酒造さんで精米されて出荷されたものなんだとか。
ブルボンとか亀田製菓とか、おなじみのお菓子をたくさん輩出した越後。
お酒もお菓子も最高。
酒蔵は予約なしでも見学できるそうなので、ぜひ立ち寄ってくださいませ。
雄大な景色が望める鮫ヶ尾城。
散策の際は野生動物に注意!
夕闇に、山々の稜線が水墨画のように
美しく浮き上がります
新井駅からほど近い君の井酒造。
蔵見学と試飲もできます
日本酒で仕込んだ梅酒。
さらに日本酒で割ると美味!(※お酒の強い人向き)